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第二部 エピローグ 知りたい事と知らなくていい事

※エロはないけど裸率高めなのでご注意ください。

私にとっては初めて尽くしの夜が明けて、私は抱き寄せられたままで目を覚ました。


「ぁ…」


素肌が重なり合う感覚っていうのを味わったのは人生初だけれど、こんなに落ち着くものなんだね。私はなんとなく今の空気を壊したくなくて。彰人さんの胸元に額を押し付けて目を閉じてみた。


このまま二度寝したい気分なのに、思い出してしまうのは情熱的すぎた夜のことで。…嬉しいような恥ずかしいような、どっちつかずの気分で落ち着かなくなってしまう。


だけど、後悔なんて全くない。他の女の子が何歳くらいで処女喪失っていうのを経験するのか分からないけれど、私にとっては今の年齢が相応しかったんだって思えるくらいだ。


「瞳、もう少しお休み…」


いつの間に起きたんだろう。まだ眠そうな彰人さんがぐっと深く抱き寄せながら言ってくれるけれど、眠れそうにない。でも、混じりあった体温はひどく心地よくて意味もなく瞼を閉じてみる。


こうしていると嘘みたいだけど、瞼から見えた目は鮮やかな紫色のままで、人間じゃないことを分かりやすく表してる。…悪魔、なんだ。嘘なんかじゃない。分かっていても怖いと思ったことは一度もないから不思議だ。


そういえば、彰人さんの屋敷で一緒に暮らすようになってからも、何かと忙しくしてたような気がする。やらなくてもいい家事をやったり、お菓子作りに挑戦したりして…


幸せでいなきゃって自分を戒めていたような… じゃあ、今は? 後戻りできない関係になったけれど、後悔するわけない。今までにないくらい、最高に幸せだって言える。


お礼くらい言うべきなのかもしれないけど、それも違う気がする。私にできることで行動するっていうのはきっと大事なことだよね。


…そんなことを考えながら私は10代の頃以来の二度寝をしてしまった。誰かの体温を気持ちよく感じるなんて、考えられないことだったのに。



もう一度目を覚ましても私は彰人さんに抱き締められたままで。


「やあ、ようやく起きてくれたね。君の寝顔を久しぶりに眺めていた所だよ」


となんだかカッコいいようなキザなようなことを言う彰人さんはひどく楽しそうで。


「起きてたんなら起こしてくれてもいいのに…」


ひどく恥ずかしくなって、思わず彼の胸に顔を寄せるけど、全く気にもしないで頭を撫でてくれた。そのまま髪を梳いてくれるけど、素肌を一緒に撫でていく。なんだかやらしい雰囲気になっていくのは気のせいじゃないんだよね。


昨夜で処女喪失しちゃったんだから、きっと大丈夫だとは思うけど…


「あの… 彰人さん? 起きなくていいの?」


「本当はこのままなだれ込みたいところなんだけれど、無粋な時計の針は止まっちゃくれないからね。シャワーでも一緒に浴びようか」


そう言うと腹筋の力だけで上半身を起こして、私を起こしてくれる。


遠慮なく両腕で抱きついた私を片腕であっさり持ち上げてくれたけど、軽いわけないと思うのに… これも悪魔だから? 本当に筋トレやってる所を見たことないのに。


私にバスローブを着せつけながら、ふと真面目な顔になった彰人さんは、


「俺にとっては親と同居しているようなものだから大丈夫だと思ったんだけれど、瞳にとっては他人なんだ。今更だけれど、そのことを考えていたよ」


と芸術的すぎて淫らに見えない裸にバスローブを羽織りつつ語り始めた。それからバスルームにエスコートしつつ、


「家政婦達にさ。マンションをプレゼントしよう。あの離れで、君と二人で暮らしていこう。そう考えているよ」


と少し寂しそうな顔で言った。どうしてそんなに寂しいのかとか、色々と考えたけれど、私に例えてみると親離れなのかな? だとすると…


「遅すぎる親離れだってば! 彰人さんったら。あははっ、私がいるんだから寂しくないでしょう? 私に指輪を買ってくれるんだから」


「君の笑う所を初めて見たよ。そうか… 俺は遅すぎるのか。ごく平凡ほどつまらないものはないと思っていたからね。実の親でさえ俺を恐れて遠ざけるんだから」


「でも、私は怖いと思ったことないわ。それは事実だもの」


笑みを漏らしながら言うと、私の目元にキスして重ねるだけのキスを交わす。


「時間が取れたら君の田舎を案内してほしいな。瞳」


「いいけど、冬はいやよ。雪ばかりで何もない所だから。でも、春は素敵なの。リンゴ畑で花が沢山咲いてね」


シャワーを浴びながら二人でそんなことを話す。悪魔はどれだけ生きるのか? 訊きたいことは数えれば幾つもある。けれど、今すぐでなくていい。少しずつ知っていけばいい。時間は沢山あるんだものね。


…隆志に何をしたのか? どんな恐ろしいことをしたら、隆志は精神科送りになるのか?


隆志のご両親がせん妄がひどすぎて話にならない。私に、何か知らないかと親から電話が来たんだ。当然、私は何も知らない。その通りに言うしかなかったんだけれど。


この優しすぎる悪魔の彰人さんが何かしたんだというのは想像できる。


どんなことをしたの? 知りたくないと言えば嘘になる。でも、知らなくていい事だと思う。


だって、私は隆志と縁を切っていたいと願っていた。私に養われて、私の少ない金で浮気し放題だった彼と縁を切りたい。別れて、幸せになりたいって……


だったら、私にできることは彰人さんをきちんと見上げて、幸せでいることだから。隆志を思い出すことじゃない。


「離れに帰ったら二人で今日を祝おうか。瞳」


「そうね。今日を記念日にしたいわ」


幾度目かのキスの後、フラワーバスでそんなことを語り合う。朝日の中、なんだかセクシーな空気のままで語り合う。今日も明日も明後日も、こんな風に過ごしていきたい。そうすれば、彰人さんもこれまで以上に幸せでいてくれる。そう思うから。

お待たせいたしました。これにて第二部終了しました。第三部(-ω-;)あるのかな。分かりませんが、描きたい所もまだまだあるので、ラブ分高めで行きたいですね。その時はお付き合いくだされば幸いです。

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