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2話 部屋

付き添う使用人もおらず、一人とぼとぼ戻ってきた自分の部屋はいつもよりも広く見える。


あの後はしばらく呆けてしまっていて、約束の時間は迫っている。もう、これからのおおよその結末は分かるというもの。

あの儀式は貴族にとっては人生の分岐点。

真にその者は貴族にふさわしいのか否か。見極め方は前世の身分。

貴族や王族なら歓迎される。

町人なら疎まれて家督や財産は受け継げない。

そして、例えば奴隷なら……、相応の扱い方を受けることになる。


私は水晶の中に暗い場所を見た。

酷く汚れた、血や何かの腐る匂いが漂い、光など欠片もない。

手には内側に刃のついた枷が付けられ、身動きが取れない。怖い……

あの時点ではそれが普通だった。けど今の自分は生まれてからチヤホヤと育てられ忍耐力に欠ける。

果たして耐えることができるのか……。


震える手に気付いたが両腕を抱きしめ叱咤し、机の引き出しを開けた。

万年筆、金箔の散りばめられた白い紙、煌びやかな珠のついた装飾品、一点物の化粧品。中にあるのはどれも国で最高と呼ばれる品質の極上物。

だけど、私が手に取り首にかけたのは一番質素で平民ですら持っていそうなネックレス。翠の雫を象られ、少しの金細工を施されたガラス玉。

これは大切なのだ、私にとって。

なぜなら────


「セキナディアン様。そろそろ時間でございます」


呼びかけに答え、ネックレスを服の中に隠した。

振り返った部屋はいつも通り私を待っているようだ。

多分私はここには戻れないわ。さよなら。

 

別れを告げそうして、もう前だけを向いてお父様の部屋まで、今度は使用人と歩いた。

きっと私が逃げないようにするため。


私は今から私でなくなりに行く。

幸せを失いに行く。

でも、尊厳まで踏みにじられてなるものか。できる限り弱い姿なんて見せてやらないのだから!!




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