魂時の儀
これから僕が少し前提を話させてもらおう。
ここは、魔法が存ずる場所。
世界の名を総じてグラーテンと言われている。
グラーテンには不思議な信仰がある。
信仰?
いや、半分はそうとは言えない気もするが、仮にそうとしておこう。
魂時の儀。中成人の式と呼ぶものもいる。
どちらも、成人の五年前、13歳で受ける儀式のことを指している。
特に、ウッドミラの国はその信仰が強く、国民は必ず義務として行われるものだ。
法律にすら記されている程。
儀式の内容は単純。
13歳の青き月が満ちる夜、水晶に手をかざすというもの。しかし、人によっては単純とは言い切れない。
水晶に手をかざすと一つ前の己、つまり前世が見える。
その内容を親族に伝えなければならないからだ。
前世で貴族やそれに並ぶ聖職者、魔法で怪我を治すことのできる癒し手は歓迎され、大切にされ、今世でも高位をもらえる。
癒し手は、力を失っていても重宝される。
もちろんその逆もあり、家格の高い人から村人や商人が出ると厄介なことになる。
それは、その家にとってはずべきことであり、そんな魂を持つものが敷地内にいることすら疎ましくなる。
そうなればどうなるか。
決まっている。家を追い出されて存在すら無かったことにされるか、一生家から出されず日陰で生きるかの二択だ。
だから、内容がシンプルでも大切なものなのだ。
今世での生き方が変わってしまうから。
とある時代には、偽りの前世を述べる人が数多くいたらしい。前世が高職者であったのだ、と。
だが、嘘はいつか必ず暴かれる。
異常に、希少な高職者が増え人々は疑問に思い、原因を見つけた。
そして、再び不正ができないように、魔道具を作り上げた。
嘘発見器。
この魔道具により、本当に前世からの逃げ道は消え失せた。
どれほど生まれ変わろうとも、その立場は永久に変えられない。
努力をしたところで、変わらない。
後に、この儀式でとある少女を巻き込んで物語の幕が開く。
前世はね、必ずしも一つだけとは限らないのだよ。




