誓いの月夜
青く輝く星に照らされた水晶をただただ見つめ、唇を噛みしめて立ち尽くしていた。
誰一人、私に駆け寄るもの、声をかけるものはいない。
母は蔑むような目でこちらを見て、妹のメラスーンを守るように抱きしめ、睨んでくる。
お父様は何も言わずに黙って私を無表情で見下ろしている。普段なら、いつも私には笑顔でいてくれたのに、面影すらなく別人に成り果てたようだ。
妹、メラスーン。メースと呼んでこの日までたくさん遊んだというのにお母様にしがみついて顔を伏せ、こちらを見ようとすらしない。怖い、と訴えるように肩を震わせていた。
つまり、だ。
ここに私に対して、数分前のようにチヤホヤと接してくれる人はもういないということだ。
私は下級動物だから、この伯爵家には相応しくないと考えているものしかいない。
なんでこんな奴がここにいる?
釣り合わないだろう、と。
今、この瞬間をもって、私、セキナディアン・ホイノーレはその身に備わった愛情、信頼などといった全ての庇護を失ったのだ。
どうして、こんなことになってしまったのかしら…?
私は貴族の令嬢で、教養を身につけ、これから社交界デビューをしようとしていたのに。デビューどころかその場を目にする前にこうなるなんて。
今まで、真っ当に家名を傷つけないように、努力していたというのに。
この先、私の人生は何処へ向かうというのでしょう?
どうすれば、いいの?
神様、このセキナディアンをどうかお助け下さい。私は常に善き人であるようにつとめてまいりました。そして、未来永劫そうであり続けると約束します。
ですから、どうか。神様……。
そう願った時、私は気づいた。
ああ、なんだそうだったのね。
こんな簡単なことに何故今まで理解出来なかったのだろう。
きっと、神様など最初からそんなものはいなかったのですわ。いたのなら、私をこんな目に合わせようなんてひどいこと、するはずがありませんもの。
そっか、私、バカだったのですわ。
アハハ、なんで愚かなことでしょう。見えないものを信じていられたなんて。
神などいない。
いたとしても、神を象った悪魔か、類似した別物であろう。
だから………。
もう、これからは神様なんて信じない。
神は私に救いの手を伸ばすことはない。
そんなものは信じる必要がない。
心の中の奥深くに刻みこんだ。
誓った時、あれから初めてお父様が話しかけてきた。
「今より、一刻後に私の部屋に来い」
もうその口調に優しいお父様を見出すことはできなかった。




