似たもの姉妹
のんびり投稿
土屋氷は悩んでいた。
放課後誰もいなくなった教室で一人机に座り、ぼけーっと黒板を眺めている。
――鈴木君ともっと仲良くなりたい。でもどうすれば?
自分を助けてくれた恩人。
もっと彼のことを知りたいし、一緒に楽しめることを増やしたい。
そのため彼の好きなゲームにも挑戦し、動物園や食事にも行った。
「氷ちゃんどうしたのー?」
氷の姉である火富が机の下からひょこりと顔を見せる。
学年が違うのに我が物顔でクラスにいることへのツッコミはない。
「鈴木君のこと考えてた」
「氷ちゃんも好きだねえ」
「姉さんも鈴木君のこと好きでしょ?」
「にゃんですと?」
火富の顔が一瞬で赤くなる。
わかりやすいと氷は内心ため息をついた。
彼と一緒にいたいと言う理由でアイドルの立場を捨てる選択したのだ、その好意に気づかない方がおかし--いや、気づかなかったら仕方がない。
「にゃ、にゃんのことかな?」
「その状態で取り繕っても説得力ないよ」
「私のことはさておき!」
「ごまかした」
顔を真っ赤にしたままぷるぷる震えている姿を見て、これ以上はかわいそうだと押し黙る。
どうして素直になれないのだろうか、そうすれば彼も気づいてくれるだろうに。
氷は内心で再びため息をついた。
「鈴木君ともっと仲良くなるためにはどうすればいいのかなって考えていたの」
「なるほど、氷ちゃんは鈴木竜一と恋人になりたいんだね」
「こいびっ⁉」
今度は氷の顔が赤くなる番だった。
火富がにやにやと笑みを浮かべる。
「恋人になりたくてアピールを繰り返しているけど、彼が気づいていてくれなくて悩んでいるってところかな?」
「むー……」
図星を突かれたことが気に入らないのか、氷が抗議するように頬を膨らませる。
――またまた恋する乙女力がアップしてる。
火富はけらけらと笑った。
彼の事となると表情豊かで可愛らしい。
「何かきっかけがあればいいかもしれないね。例えば夜の街で二人きりになるとか――」
――彼と夜の街で二人きり?
夜の静かな公園。
街灯で照らされたベンチに氷と竜一が座っている。
見つめ合う二人。
自然と胸の鼓動が早まる。
竜一の手が氷の髪を優しく撫でる。
心地良さで目を細めた。
「氷、好きだよ」
「鈴木君……」
そして彼の顔が目の前に「おーい氷ちゃん?」――っ⁉
はっと氷は我に返った。
目の前にあるのは理想の彼ではなく見慣れた姉の顔。
どうやら自分の世界に入り込んでいたらしい。
恥ずかしくなって俯いてしまった。
「やれやれ、思った以上にこれは重傷だ」
――私も人のことは言えないけどね。
火富が自嘲するかのように苦笑する。
「二人ともまだいたんだ?」
「「にゃい⁉」」
忘れ物を取りに教室に戻ってきた竜一に対する反応は姉妹そっくりだった。
ぼちぼち長編も書いていきたいです