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「それで最近霧島と一緒にいることが多かったのか。てっきりやっと付き合い始めたのかと思ってたんだがなぁ」
「行きも帰りも大概一緒だもんな。すっげー羨ましい。オレも渚ちゃんみたいな彼女ほしー!」
「言っておくが、渚を守る為だからな」
「とか言って、本当は一緒にいる口実ができて嬉しいんだろ。森山は自覚してないかもしれないが、霧島を見る時、よーく見たら砂糖吐きそうになるくらい甘い目してるぞ」
確信をつく唐崎の言葉にぐうの音も出ない。
卑怯だとは自覚しているが、ストーカー対策という名目で渚と一緒にいることが格段に増えた。
特に買い物などは一人で行く派の渚だが、最近は一緒に買い物に行ったり映画を観に行ったりしている。
正直、彼氏かってくらい束縛しているこの状況を楽しんでしまっている。
「とにかく、そういう訳だからまたシフトのことで言うと思うから頼むな、林田」
「了解。オレで代われる分は代わるから、その代わり課題手伝ってくれよな!」
「手伝うから、一回は家でプリント開けよ」
こういう時、バイト先が同じということが本当に助かる。
とはいえ、いつまでも代わってもらってばかりでいるわけにもいかない。
渚のバイト先に迎えに行くようになってから、何度か見られている気配はしていたが結局ストーカーの姿は一度も見つけれていない。
最近では気配すら感じなくなったものの、完全に渚から手を引いた確証がない以上早くストーカーをどうにかしないとな。
「森山くーん!」
そろそろ渚を迎えに行こうかと腰を上げた所で、大声で呼ばれた。
聞き覚えのあるその声に嫌な予感がしながらも顔を上げると、寺下が俺に向かって手を振っていた。
そして、教室に残っていた皆の視線が集中する中堂々と中に入ってくる寺下に、隣にいた唐崎も驚いた顔をしている。
「ねぇ、森山くん。今日、大学の近くに新しくできたカフェを見つけたの。一緒にいこ」
「俺は渚と帰るから無理だ。他に当たってくれ」
「霧島さんならもういないわよ」
「……なに?」
声のトーンが低くなるのを自覚したが、寺下は驚くこともなくにこりと笑う。
「本当よ? さっき山城さん達と一緒に出て行くのを見たんだもの」
寺下の言うことが本当か確かめるべく渚にどこにいるかLINEを送ると、「美嘉とデートしてる」と山城とクレープを一緒に食べている写真付きで返信が返ってきた。
山城とデートという言葉に引っかかるものはあったが、とにかく渚は一人ではないらしい。そのことに少しほっとする。
「ね? 本当だったでしょ。だから、一緒にカフェに行こ!」
「『だから』の意味がわからん。渚がいないなら、俺は普通に帰るだけだ」
鞄を肩にかけ歩き出す。
が、寺下に腕を掴まれ動けなくなった。
「どうして⁉︎ 絵梨花が誘ってるのに! 絵梨花、森山くんが好きなのに!」
「離せ」
「いや! 離したくない!」
「……離せって言ってんだろ」
「……っ‼︎」
耐え切れずドスの効いた声で言うと、寺下の体がびくりと震え腕に掴まる力が弱まる。
まだ腕に触れていた寺下の手を振り払うと、涙目になった寺下と目が合った。
「どうして……」
「俺は寺下を好きじゃない。それに、鬱陶しいからベタベタ触るな」
「ひ、ヒドい‼︎ 森山くんのばかーー!」
わっと声を上げると、寺下はバタバタと教室から出て行った。
「なんつーか、森山ってホント霧島以外には容赦ないよな」
「優のあの冷たい目見たか? 傍にいたオレまで凍りそうになったってーの! オレは女の子相手にあんなに冷たくできねー。どんだけウザくても結局優しくしちゃうもん」
「好きでもない女になんで優しくしなきゃいけないんだ?」
俺の発言で、何故か二人はがくりと肩を落とした。
「これがモテる男なのか……! くっ、カッコ良すぎる!」
「いや、森山は本当に霧島しか見てないだけだから。ここまでくると尊敬してくる」
「おい、何二人でブツブツ言ってるんだ」
「だー! なんでもいいから優に勝ちたい! てことで、今からゲーセンいこーぜ!」
「唐突だな。でも、その話乗った。最近体動かすこと少なくなってたしな。森山も行くだろ?」
ゲーセンか。前は渚と行ったりしてたが、最近行ってないな。
「優も今日はバイトないし、渚ちゃんに振られちゃってるしヒマだろー」
「……どうやら余程ボコボコにされたいらしいな林田」
「へっへーん。そのセリフ後で後悔すんなよ? オレ結構そーいうの得意だからな! よし、早く行こーぜ!」
はしゃぐ林田に背中を押され教室を出る。
その時ふと渚の顔が浮かんだが、すぐに振り払った。
渚が一人じゃないと確認したし、普段一緒にいる山城なら事情も知っているはず。
なら、そんなに心配することない……よな?




