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それでも君が好き  作者: 東雲 優
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6


「ねぇねぇ森山くん、森山くんは休みの日何してるの?」

「……ゲームとか」

「森山くんのしているゲーム、絵梨花もやってみた〜い!」

「私も〜! ねぇ、今度家で一緒にやろうよ!」

「断る」

「や〜んつめたーい。でも、そんな所もカッコいい〜!」

「(何でそうなるんだよ…)」


 結局合コンに連れていかれたものの、開始早々両側から女子に挟まれて質問攻め+過度なボディタッチをされ、すぐにでも帰りたい気分になっていた。

 しかし、席を立とうとしても女子達がそれを許そうとせず、味方だと思っていた男共も生暖かく見守るだけで誰も助けようとしない。

 少しでも気を紛らわそうとジョッキを仰ぐ内に、気付けばいつもの倍の量を飲んでいた。



 苦痛の2時間を何とか乗り切り、二次会の流れが来る前に唐崎にだけ声をかけて抜けて来た。


「(流石に飲み過ぎたか…)」


 誕生日で解禁された酒は、いつもは付き合い程度しか飲まずせいぜい3杯くらいだが、今日は何杯飲んだだろう。

 意外と飲めるものだとはわかったが、流石にここまで飲むと足下がふわふわする。


 早く家に帰って寝ようと考えながら歩いていると、誰かが腕に抱きついてきた。

 驚いて見下ろすと、見覚えのあるまつ毛が盛り盛りの女が上目遣いで俺を見つめていた。


「お前、寺下? 何でここに」

「絵梨花って呼んでって言ったのに〜。絵梨花もこっちに住んでるの。すごい偶然だね?」


 一人暮らしする所なんて、大学が一緒なら似たり寄ったりだからすごいことはない気がする。

 というか、帰る方向が同じだったとしても腕にしがみつく必要はないよな。


「離せ、歩きにくい」

「やーだ。森山くんともっと一緒にいたいもーん」


 なんだこのウザい女は、と思った俺は酷い奴なのだろうか。

 こういう女と碌に関わった事がないので、どう対処していいかわからない。

 しかも、「離せ」「やだ」の押し問答を繰り返している内に、気付けば家の近くまで来てしまっていた。

 これは早く追い返さないとマズいと思い、近くのコンビニで足を止める。


「寺下、いい加減帰れ」

「やーだ。絵梨花、森山くんの家に行きたいもーん」

「お前、さっきからそれ言ってるが……こんな夜遅くに男の家に来たいなんて、何考えてるんだ」

「もちろん、決まってるじゃない」



 その言葉と共に、頰に生温い感触が伝わり背筋がぞわりと震えた。

 キスをされたと理解した瞬間、全身に嫌悪感が走り寺下を突き飛ばしそうになったが、一応女相手なのでぐっとこらえて体から引き剥がした。


「あーあ、残念。本当は唇にしたかったんだけどなー」

「お前……っ!」

「これでわかってくれた? 絵梨花、森山くんと色んなことしたいの。森山くん、彼女いないんだしいいでしょ?」

「誰がお前と……!」


 言い返そうとした時、後ろからガサリとビニール袋の音が鳴った。

 嫌な予感がして振り返ると、音を鳴らした主の渚と目が合った。


 なんでこんな時間にと思ったが、同じアパートに住んでるのだから近くのコンビニに来ててもおかしくないか。

 それより、さっきのヤツ見られたか? 見てたら絶対誤解される……!


「え、えっと……お邪魔しました!」

「ま、待て渚! 誤解だ話を聞け!」


 咄嗟に引き止めようとしたが、さすが元バドミントン部。スタートダッシュで一気に差をつけられ、あっという間に見えなくなってしまった。

 予想通りすぎる渚の反応に頭が痛くなる。



「……最悪だ」

「なぁに今の子。森山くんの知り合い?」

「寺下、離れろ」


 キツめの口調で言うと、今度はやっと離れる寺下。


「しょうがない。今日はここまでにしておくわ。またね、森山くん」


 またという言葉にげんなりする気持ちと、渚に誤解されたままでややこしくなりそうな不安感で、俺は深いため息を吐くのだった。


 

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