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それでも君が好き  作者: 東雲 優
3/10

3


 お受験をしなかった僕達は揃って地元の中学に上がった。

 中学生になると男女の差というものが出てき、例に漏れず僕も女性特有の丸みを帯びてきた渚のセーラー服姿にドキドキしていたが、渚は相変わらず態度を変えることもなく接してきていた。

 ただ、僕はバスケ部、渚はバドミントン部に入部したので一緒に帰ることはほとんどなくなった。


 それでも休日になると、渚は僕の家に来てゲームをしたり漫画を読んだり、時には泣きついてくる渚に見兼ねて宿題を一緒にしたりしていたので、友達からは恋人と勘違いされるくらい仲が良かった。

 言われる度に渚は恋人じゃないとばっさり言うので、その度にグサッと胸に突き刺さるものがあったが、今の関係を壊したくなくてそのまま話を流すことにしていた。


 そんな僕を見て、友達の健太は時折憐れむような視線を向けてくるが気にしない。

 渚のことをいいなと思っている男子がちらほらいると知っていたので、そばにいておかないと落ち着かなかった。



 そんなある日、朝練の時から調子が悪いとは思っていたが、4限目が終わる頃には顔を上げるのが億劫になるくらいしんどくなっていた。

 僕が風邪だと最初に気付いたのは渚だった。

 その後、健太と2人掛かりで保健室に連れられ、ベッドに寝かされた。


「38.7度。ずいぶん高いわね」

「家帰った方がいいんじゃねぇのか?」

「でも、優のお母さんは夜まで帰ってこないから今帰っても意味ないよ。先生、もう少しここで寝かしてもらえないですか?」

「それは構わないけれど、いつかは帰らないといけないわよ?」

「それまでになんとかします」


 渚達の声が遠くから聞こえてきていたが、横になれた脱力感からか額にひんやりしたものが触れるのを感じると深い眠りに落ちていった。



ーーーーー


 寝苦しさを覚え重たい瞼を開けると、見慣れない点々模様の白い天井が見えた。

 顔だけ横に向けると、窓からは夕陽が差し込み校庭からホイッスルの音や掛け声などが聞こえてくる。


「(そうか……風邪ひいて保健室で寝てたんだっけ)」


 ゆっくり起き上がり痛む頭を押さえつつ置いてあった眼鏡をかける。

 そこで丁度保健の先生と目が合った。


「あら、森山君起きていたの。体の具合はどうかしら?」

「まだ治ってないみたいです。……でも、ギリギリ歩けそうなので帰ります」

「そう、気をつけて帰りなさいね」



 先生に手伝ってもらいなんとか身支度を済ませ、ふらふらしながら校門へと向かう。


 いつもだと片道10分くらいの距離だが、この状態だとどれくらいかかるのか。

 少し考えただけでげんなりしながら校門を潜ると、急に後ろから腕を引っ張られた。

 不意打ち+ふらふらな状態なこともあり崩れ落ちそうになったが、ぎゅっと支えるように抱き締められなんとか倒れずに済んだ。


「びっくりした。急に倒れてくるなんて思ってなかった」

「急に腕引っ張る渚が悪い」


 急な体勢で冷や汗をかいたが、それよりも背中に当たっている柔らかいモノに全身が熱くなりアタマがくらくらしてきた。

 表面上ではなんとか平静を装いつつ急いで離れると、ある物が目に入った。


「……自転車?」

「歩いて帰るのしんどいかなーって思って急いで取って戻ってきたの。我ながらナイスアイデアでしょ?」


 そう言って意気揚々と自転車に跨る渚。

 つまりアレか。後ろに乗れってことか?


「普通逆だろ」

「病人が何言ってるの。ほら、早く乗った乗った!」


 早くしろとばかりにベルを鳴らす渚。

 数秒葛藤はあったが、家までの距離を歩いて帰る自信はなく仕方なく後ろに跨った。



 僕が乗ったことを確認すると、自転車は大きく揺れることもなく走り出した。

 とはいえ何かに掴まってないとふらふらするので、いつも渚がやっているみたいに目の前の渚の腰に手を回す。

 が、あまりの腰の細さに体がギクリと強張った。


「(何だこれ……柔らかいのは渚がよく抱き着いてくるから知ってたけど、女子ってこんなに細いのか⁉︎)」


 思いかけず渚の女の部分を知ってしまい正直容量オーバーになってしまっていた。

 しかし降りるわけにもいかず、家に着く頃には体力精神共に尽き果てなんとかリビングのソファーまでは辿り着いた僕は気絶するように眠ったのだった。




 1日休んだ次の日、一部始終を見ていた健太からは散々からかわれた。


「お前ら、側から見たらカップルにしか見えなかったぞ。これで付き合ってないんだから不思議だよな」

「全く、こっちは心臓に悪いよ。渚はもっと性別を自覚するべきだ」

「とか言って、目の前で無防備にされても手を出せないのがお前だろ」

「………」

「わーかった。悪かったから睨むな。お前、実は顔がそれなりなんだから睨むと迫力あるんだよ」

「それなりって、そんなわけ…」

「あ、唐揚げだ! もーらいっ!」


 箸を伸ばした先にあった唐揚げがひょいと持ち上がる。

 そのままパクリと頬張った渚は、悪戯っぽい笑みを向けると逃げるように友達グループの所に戻っていった。


「たまに昨日みたいに優しい時もあるのに、普段はあんなんなんだよな。これが所謂ギャップ萌えってやつか。これを天然でやってのける辺り、霧島って大物だよな」

「だからこそ僕以外にも男女関係なくやっているんだよな。……はぁ、頭が痛くなってくる」

「まぁ、なんだ。ガンバレとしか言いようがないな」


 健太にポンと肩を叩かれ、思わずため息を吐いてしまった。




 その後も悪戯をされたり、行きたい場所があると連れ回されたりしたが、彼女の笑顔が見たくて結局付き合ったりしているうちに中学生活は終わった。

 卒業の日、第二ボタンを手に告白したが「恋愛的な好きがない」とばっさりフラれた。

 それでも渚を好きな気持ちは変わることはなかった。

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