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それでも君が好き  作者: 東雲 優
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 渚の家と実は隣同士だったということが判明してからは、お互いの家に遊びに行くようになり、僕と渚はすぐに幼馴染という言葉がぴったり合うくらい仲良くなった。

 その関係は小学校に入学してからも変わらず、毎日一緒に登下校していた。


 クラスで渚はそこそこな立ち位置にいた。

 所謂特別整った顔をしているわけではないが普通に可愛い顔をしているのに、髪型はショートヘア。そして、男子で流行っているアクションゲームやアニメが好きで運動もできるので、男子と普通に遊んだりする。

 抜けてる所が多くドジだがしっかりしてる所はあり、悪戯好きでどこか飄々とした雰囲気のためか女子の友達も多かった。


 対して僕は元々の体質とゲームのし過ぎで眼鏡っ子になり、あまり積極性がないためクラスの中でも地味な立ち位置。


 そんな僕らが毎日一緒に登下校しているため、中学年くらいになってくると冷やかしてくる奴らも出てきた。

 その時すでに渚に対する恋心を自覚していた僕はものすごく恥ずかしかったが、渚本人は何処吹く風。

 むしろこちらが落ち込むくらい気にすることなく、仲の良い関係は続いていた。



 4年生になり、先輩達に憧れてミニバスケットボールを始めた。

 同じ理由で始めた人も多く最初は男子だけでも30人以上入部したが、筋トレや地味な練習ばかりでどんどん辞めていった。

 そして、半年経つ頃には同学年では男女合わせて10人しか残らなかった。


 残ったメンバーは着々と上手くなっていく中、僕はなかなか上手くならなかった。

 特にレインアップは同学年では自分だけできなかったので、焦りだけが募っていき逆に楽しいと思う気持ちはどんどんなくなっていった。



 ガシャンッと音が鳴り響き、跳ね上がったボールが転がっていく。

 今日で何回目かわからないくらいの同じ光景にボールを取りに行く気も起きず、地面に座り込んだ。


 日が少し傾いてきた校庭では、ドッチボールをしてはしゃぐ子やブランコで遊ぶ子の声が聞こえてくる。

 対して校庭の隅っこにある錆びたバスケットゴールには自分以外誰も居なく、とても静かだ。


 ミニバスがない日は、ほぼ毎日ここでレインアップの練習をしていた。

 それでも習得する兆しが全く見えずにいた。

 ゴールに入ることがあっても、みんなの様に吸い込まれる様に入っていくものではなく、レインアップと呼べる様なものではないと自覚していた。



「ミニバス……辞めようかな…」

「なんで?」

「……⁉︎ なんだ、いたの渚」


 渚はボールを拾い上げ近付いてくる。


「毎日頑張って練習してるじゃない。今辞めるの勿体無いと思うけどな」

「見てたのならわかるだろ。いくら練習してもレインアップすらできないんだ。僕はバスケには向いてないんだよ」

「そうかなぁ…」


 渚はのんびりした口調でバスケットゴールをぼんやり眺める。

 そして、トントンとボールを突き始めたと思ったら、一気に駆け出した。


 流れるようにステップを踏み、渚の手から放られたボールは吸い込まれるようにゴールに入っていった。


「どうして……⁉︎ 渚、ミニバスに入ってないよね⁉︎」

「一回体験入部したことあるよ。まぁ、これはその時やってたコーチと、あとずっと優を見ててできるようになったんだけど」


 バウンドするボールを掴み、渚はくるりと振り返る。

 その姿はとてもさまになっており、僕よりずっとバスケが似合う渚に悔しい気持ちになった。


「ミニバスやってない渚ができるのに、部員の僕ができないんだ。やっぱり僕にはバスケの才能ないんだ」

「違うよ。優は入れようと必死になってて足下ぐちゃぐちゃになってるだけ。ステップさえコツを掴めばすぐにできるようになるよ」

「でも……」

「じゃあ、賭けをしよ! もし今日中に優がレインアップできるようになったら、明日の給食のデザートあげる。その代わり、できなかったらデザート貰うからね」

「そ、そんなぁ……」

「嫌なら練習! ほら、教えるから早くやろ?」


 半ば強制的に練習をすることになったが、感覚派な渚なのに意外と粘り強く教えてくれた。

 何度も何度も手本のレインアップをやって見せ、僕が失敗すると何が違うのか一緒に考える。

 そんなことを繰り返していく内に、気付けば下校時間を知らせる曲が鳴り始めていた。


「これが最後だね。デザート掛かってるんだから、絶対成功させないとね!」

「う、うん……!」



 すーはーと深呼吸し、バスケットゴールを見つめる。

 何回かボールを突いた後、覚悟を決め駆け出した。

 バスケットゴールがどんどん近付いてくる。


「(入る角度は斜めから。ステップを踏み始める場所はゴールより三歩少し前。ステップは右、左でジャンプ……!)」


 何度も見せて貰った渚の動きになぞるように足を踏み出す。

 ステップを踏んだ後に放たれたボールは、今までと比べ物にならないくらい自然にゴールへと吸い込まれていった。


「入った……」

「やったー‼︎」


 初めての感覚に固まっていると、横から渚が勢いよく抱き着いてきた。

 あまりの勢いに放心状態だった僕は受け止めきれず、2人揃って近くの砂場にダイブしてしまった。


「やったね優! 入ったよ‼︎ 誰が何と言おうと入ったよ‼︎」

「うん、うん、ありがとう渚。渚のお陰だ」


 それからしばらく2人で喜び合い、見回りをしていた先生に見つかった時にはすっかり日も暮れていた。

 学校から追い出され家に帰る間も、渚は「よかったね、よかったね」と自分の事のように喜んでいた。


 そんな渚の笑顔に、また渚のことが好きな気持ちが大きくなったのだった。



 その後、砂まみれになって帰った僕達はお互い母親にみっちり怒られたが、まあ仕方ないだろう。


 次の日、給食のデザートがプリンだと知った渚が断腸の思いのような表情でプリンを渡してきたので、丁重に断っておいた。




 その後もバレンタインデーに告白したが友達としてしか見てないと盛大にフラれ、しかもそのことをクラス中に広められものすごく恥ずかしい思いをしたり、眼鏡をしているという理由で生徒会長にさせられたりしたが、渚を好きな気持ちは変わることはなかった。

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