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SEVEN STARS  作者: イモホテップ
TREND「3」 【志庵】
12/12

#2 ゴージャス




 ケツが良かった。

 

 ( "アンドロイドの男娼" について、とある好色の述懐)









 やれクルージングを楽しんでいるだの、ブルーサワー片手に避暑地を満喫しているだの、そういった類の『オフ』の過ごし方は、どうにもあの仕事仲間には似合わない。陽が落ちるまで肉を貪り、部屋の灯りはカナビスの火。そうして街が明るくなる頃、裸のままで、泥のように眠り耽る。


 闇稼業ドライバー、ノエルのよく知る『仕事人ドナ』とは、詰まるところそういう女であった。


 「はっ、はははハロー」


 「そこで止まって」


 マンションの扉を開けた途端、玄関の天井に据えられた監視カメラがこちらを向く。数秒の沈黙の後、虎の小便の如き勢いで、側面の壁の穴から噴き出す消毒液。ぺっぺと口に入ったそれを吐き出すと、ノエルはカメラへと濡れそぼった中指を立てる。


 「だ、だだからオマエにああ会うのは嫌なんだよ、こここのブス」


 「じゃあ帰れば。アンタの "飼い主" が許さないだろうけど」


 「そ、そそうだよ。ドナは?」


 様々な機材に埋め尽くされた廊下を窮屈そうに進み、ケーブルの類を跨いでリビングを覗くノエル。どうやら今回の会合は、随分と大掛かりらしい。目張りしたカーテンの所為で、昼間にも関わらず薄暗い室内。相変わらずパソコンに張り付き、こちらを一瞥すらもしようとしないこの部屋の主。ソファに背を預け、器用にもごつい爪先でテレビゲームに勤しむ隻腕の大男。どいつもこいつも『仕事人』との付き合いが縁で見知った仲だが、しかし気に入らないメンツが揃ったものだ、と、ノエルは歯の欠けた口元をへの字にする。


 「が、が雁首揃えて随分にっにに賑やかだね」


 「らしいわよ、ロビン。ノエルが文句付けてるけど」


 「は、はぁっ? ロ、ロロロロビンって、まっ……まさか!」


 ビジネスという一点で結ばれた各々の関係。故に、この一室に集う人間は、人間性の欠陥こそ抱えていれども玄人(プロ)には違いない。室内にも関わらず、原発作業員を彷彿とさせる防護服に身を包み、しかし後頭部からはちょこんと三つ編みを覗かせた、ナード風の痩せこけた女性。『アイビーリーグ創設以来の癌』だの、『秘匿警備員(インコグニート)の鑑』だの、数え切れない異名と超頭脳を併せ持つ薬師丸まきなのビジネスパートナーが一人。素性知れずの白人腐女子、リサ・オーヴァードライバーズは、ガスマスク越しに視線を動かして奥の部屋を指した。


 「何を驚いているのかしら。貴方の大好きなドナには違いないじゃない」


 「少なくとも中身はね」、と付け加えるリサを余所に、鼻の頭をひくつかせ、弾き出されたかのように隣の一室を覗くノエル。パチン、パチンと足先の爪を切る乾いた音。そして粘つくような視線の主、部屋の薄闇に浮かぶ紫の瞳。


 そこに居たのは、彼のよく知る『仕事人ドナ』ではなく、新宿2丁目界隈で知らぬ好色はいない。白髪の男娼こと、ロビン少年であった。


 「遅いよ、この唐変木(トーヘンボク)


 「ドッ、ドドドドナがあああ。うっう、あんまりだ。ああああんまりだこんなのヤダあああ」


 アンドロイドの少女、薬師丸まきな改め、更に改め仕事人ドナ。もう一つ改め2丁目の男娼、ロビン少年。一体この女(今は少年の見てくれだが)は、幾つの名前と容姿を持っているのやら。この、男同士がもつれ合う奇異な情事を嗜好とする腐女子の隠れ家で会合が行われるという時点で、嫌な予感はしていた。してはこそいたが、嗚呼。あの小柄でセクシーで、尚且つ痺れる程に辛辣な愛すべきドナに、よもや『男性』を強要するなど。フローリングに突っ伏したまま、頭を抱えて呻くノエル。


 「ヤダ、ヤダ。ドド、ドナがいない。も、もももう帰る」


 「ふざけてんの? ボクは此処に居るでしょ?」


 「うう、うっううう」


 「ワカったよ、ノエル。なら―― "その気" にさせてアゲル」


 大きく溜め息を吐き出し、ソファに掛けたまま左足を差し出すまきな。


 「この部屋の主が電灯点けるの嫌がる所為で、爪を切るのも一苦労なの。ホラ、爪先なんて血だらけ。舌使って綺麗にして頂戴、ダーリン」


 闇に映える白い脚に、爪先に浮かんだ赤の点々模様。自らを呼ぶソプラノの声色に顔を上げれば、扇情的な唇に目を奪われ、次いでその目線に殺される。姿形こそ変われど――やはり、あの艶やかなドナは此処に居たのである。目尻から流れ落ちる塩水もそのままに、感激のままに舌を出し、その痛々しい爪先へと近付けるノエル。


 「あっあっあ、ああ。ド、ドナ。ドドドドナああああ」


 「イイ子ね、このクソ蛆虫ッ」


 舌が爪先に触れるよりも速く、人工の頭蓋を叩き割る灰皿の硝子。激痛で再び頭を抱えるノエルの金髪を引っ掴み、次いで灰皿の中身を欠けた歯の合間へと流し込み、ウイスキーのボトルで蓋をする。口の端から泡を噴いて悶絶するビジネスパートナーに目もくれず、まきなはリビングのソファへと腰掛ける。


 「流石。プロの仕事ね、ロビン」


 「ヒトに男装を強要する人間が言うと、まるで重みが違うワネ。涙が出そう」


 「涙? 塩水の間違いでしょ」


 「あら、ごもっとも。アンタの使う機会のない所為で閉経したアソコから、 "かつて" 出たであろう潮と同じ成分かもね」


 「今も出るわよ。試しに貴女、そこでゲームしてる金田と絡んでみて」


 「勘弁して頂戴」


 向かいに腰掛ける大男にコントローラーを投げ渡されると、それを手に取り漫然と操作を始めるまきな。対戦画面の灯りとSE、そして抑揚のないタイピング音と、煙草の灰をげえげえと吐き出す呻き声。三度目のリザルト画面が表示された辺りで、薬師丸まきなの、三人目のビジネスパートナーたる中国系の大男。金田が、ふと口を開いた。


 「で、仕事(ヤマ)は」


 「今やゴキブリ並みにウヨウヨしてる屑吏(クズリ) (ジュン)の傘下の一つよ。ROOSTERS(ルースターズ)ってグループの幹部4人」


 火を点けたカナビスをくわえ、再びコントローラーを握るまきな。大男の足がぴたりと一瞬止まった後、何事もなかったかのように、やはり器用な爪先がキャラクターを選択する。


 「アンタが造型師辞めて "理想のアウトロー" サンの所でヤンチャしてた頃にも、何度か聞いた名前だと思うケド」


 「その "理想のアウトロー" 傘下の組織ン中でも、異例のデカさだろ。ROOSTERSは」


 「話が早くて助かるワ」


 「手に追えんのか」


 「組織人員、着手する業種数、 "シノギ" の規模。典型的なチェーン展開だケド、ギャンググループにしてはありとあらゆる点で異例ね」


 「そんだけ馬鹿デケェ組織の割に、幹部連中は地元に固執しているときた。迷惑な話だよホント」


 「結構な話じゃない。地域密着型の大型チェーンなんて今時珍しくもないわよ。大手として拡がりつつ、恭しく有力者に取り繕う。SHINJUKUで肩代わりする犯罪の依頼に関しては30%OFFだとか、そんな "地元特権" でも付けてるんじゃないの。もしくは専用のポイント制でも作ってたりとか……」


 まきなの冗談にへらっとした苦笑を浮かべ、空いた片手でハイライトに火を灯す金田。最中、リビングの奥からの物音に対し、ソファーの背後を振り返る。消毒液を吸って変色したハットに、暑苦しいコートという装いの中年。会合の最後の来訪者、仲介屋エイメンは、眉間に皺を寄せながらキッチンの卓に腰掛けた。


 「相変わらず最高のもてなしをどうも、ミス・オーヴァードライバーズ。お陰で新調したばかりのコートが素敵な色合いになったよ」


 「アンタ、よくワタシの前にぬけぬけと出てこれたワネ。タマの筋ちょん切って、それで首でも絞めてやろうかしら」


 「今回の件に飛び付いてきたのはお前だろう、ジュディ。いや、今はロビンだったか。ROOSTERSの幹部4名の抹殺依頼、信用を取り戻すには十分な案件(ヤマ)だと思うが」


 「リサ、いざという時の為にマンションの爆破準備しといた方がいいわよ。コイツが自警団に追われてないとも限らないから。ていうか寧ろスパイなんじゃないの」


 「あのな、そもそもお前が俺の持ってきた仕事に飛び付いてきたんだろうがって。確かに金銭感覚のない人殺しのクズでも半年は豪遊出来る程報酬は堅いが、一体何が気に入らない?」


 「アンタの全てよ、ミスター嵌頓包茎」


 「そりゃ嬉しい限りだ。お前に好かれた日には、どんな奈落も緩いって程に堕落しきったって意味だろうからな」


 「その辺にしとかないと本気でぶつわよ」


 「そぉーら、舌で敵わないとくれば暴力だ。なぁジュディ。ウチの嫁さんと同じだよ、お前は」


 「お二方、仲睦まじいのは結構だけど、そろそろ始めてよろしいかしら」


 先程から勤しんでいたFPSゲームの画面を切り、ガスマスクの奥で溜め息を漏らすリサ。キャスター付きの椅子に座ったまま床を蹴り、行儀悪くリビングの広い卓に移動し、タブレットを展開させる彼女に続き、プロフェッショナルの各々が会議用のそれへと移動する。


 「ミスター・エイメンの持ってきた案件(ヤマ)。組織規模A+、2年前の "クズリ" の件とも密接に関わっていたギャンググループ、ROOSTERSの実質的な無力化依頼。大元は単純(シンプル)よ。実行犯たる仕事人(アサシン)が動き、私達はその補佐に回る。ま、いつも通りね」


 「る、るるるるROOSTERSってめめメチャクチャでかいぐぐグループじゃん。ま、ままマジで言ってんの?」


 タブレットから展開される街の立体図の光が、薄暗い室内にて忙しく動き回る。歌舞伎町の地図(マップ)を中心とし、SHINJUKU一帯に無数に広がる赤い警告ランプ。大規模に浮かぶその色は、ROOSTERSの傘下となっている各種経営店、改め系列店を示している。ジャムをべったり塗ったかの如く、赤に染まるその図表は、まさしく組織の規模を誇示する警戒色か。大元は4名、されど陥落は楽ではない。ウイスキーをショットグラスに注ぎつつ、『造型師』こと金田が口を開く。


 「4人集まったところを叩くにせよ、組織の規模からして変則的な立ち回りが必要になるな。男の機体(ボディ)どころじゃねえ。必要なら犬でも猫でも猿でもキジでも、あらゆる機体(ボディ)を用意出来るぜ。ドナ」


 「無論、工具の図面に関してもな」と続け、空になったグラスを置く金田。次いで卓に身を乗り出し、ホログラムの立体を指でなぞる『運転手(ドライバー)』、ノエル。


 「う、うう裏路地、そそそんでスクランブルのこここ交差点。ししSHINJUKUは目隠ししてもうう運転出来るよ、どっどどドナ」


 常日頃からタクシー運転手として表の活動を続けている彼にとって、TOKYOの街など庭にも等しい。加えてその身に宿した運転技術(ドラテク)、並びにそれに特化した『職業病(ファンクション)』。『造型師』による手口の創造、『運転手(ドライバー)』による後腐れのなき離脱。玄人(プロ)による玄人(プロ)への補佐――薬師丸まきなのビジネスパートナー達は、彼女へとその技術を売る、いわば善良とは言い難い提供者である。仲介屋から依頼を斡旋され、リサ・オーヴァードライバーズという立案者(プランナー)を通し、実行犯たる仕事人が、補佐役たる彼らの協力のもと、慎ましやかな殺しを実行する。単独で当たるのが難しい案件(ヤマ)ならば、それに見合った人材を集めるのが実行の基本というのは、何処の世界でも通説である。


 ――しかし、今回の案件(ヤマ)はそれだけに留まらない。


 「心強い限りだけど、問題は同業者の存在なのよね」


 書き換えられたタブレットの立体図に触れ、その一部を拡大するリサ。圧倒的な情報量を含有するそれに描かれているのは、彼女が侵入(ハッキング)の技術により仕入れた個人情報の数々である。ワタシの情報は消しておきなさいよね、とゾッとしない様子で呟くまきなだが、その拡大された犯罪者の名前を一瞥し、目を見開く。


 「連続殺人犯(シリアルキラー)、ストレンジ・ユキ。どうも今回の案件(ヤマ)では、こいつが絡んでくる可能性があるわ」


 「同業者とかいうふざけた物言いには目を瞑ってあげるケド、何? どうしてまたこのイカレ野郎が絡んでくるワケ?」


 不機嫌な様子で吐き捨てるまきなに対し、溜め息で以て返すリサ。


 「どうしてって、貴女との因縁に決まってるでしょ。2年前に討ち漏らした時から、ずっと仕事人を狙ってるって話よ」


 「それが今になって、よりによってこの大きな案件(ヤマ)に絡んでくる、と。最高ネェ。なんなら実行の前に個人的に殺しておこうかしら」


 「無理無理。ストレンジ・ユキの能力は貴女がよく知っているでしょ。能動的に捜しても無駄よ」


 「はぁ。無能な仲介屋の斡旋らしいクソの案件(ヤマ)だワネ」


 「無能は余計だ、アバズレ」


 連続殺人犯(シリアルキラー)、ストレンジ・ユキ。かつてはSHINJUKUエリアを恐怖に陥れた存在だが、よもやこの案件(ヤマ)に関わっているとは。人の事をとやかく言えない程度にはキナ臭いな、と仕事人を睨みつつ、煙草に火を灯すエイメン。互いの素性は知る由もないものの、脛に傷を持つのはお互い様である。


 「ハイハイ、とにもかくにも予想だにしない障害が発生するってワケね。最近あのイカレ野郎の事が恋しくなってきたから嬉しい限りよ」


 「これはお前の個人的な事情だろう。それが原因になって仕事が滞る可能性があるなら、パートナー達に謝罪すべきだろうなジュディ」


 「アンタは何調子こいてくっちゃべってるワケ? 永遠にその口閉じられたいの?」


 「別に俺に突っ掛かるのは構わんが、玄人(プロ)としてそういう不貞腐れた態度ではなぁ」


 「うるっさいワネェ、ダニの分際でワタシに文句つける気? こんな案件(ヤマ)、どうって事ないわよ。アンタらの協力だって要らないし。解散よ解散。あぁ、馬鹿馬鹿しい」


 ウイスキーの瓶を叩き割り、凄まじく憤りながらずかずかと部屋を後にしようとするまきな。呆然とするパートナー達だが、彼女の傍らに立ったリサに肩を叩かれ、その足がぴたりと止まる。


 「ドナ。ごめんなさいは?」


 ……そう。如何に強力な存在とて、個人の力では限界があるのが、このTOKYO CITYに於ける営みの内情である。判ってはいる。判ってはいるのだが、どうにも自身の気質からか、素直になりきれないのが薬師丸まきなの性質(さが)


 妖艶に纏おうが、気高く在ろうが、『隙』の隠せない女は、不意にその弱さを垣間見せる。立案者(プランナー)にして、数少ない彼女の友人たるリサ・オーヴァードライバーズは、それも踏まえて尚、仕事人のパートナーであった。


 「大事でしょ、お仕事。此処で投げ出したら駄目だよね。貴女が一人で抱え込める事でもない。ほら、きちんとごめんなさいしようね」


 ズボンの裾をぎゅっと握り、俯いたままその肩は震え、しかしようやく、固く結ばれていた唇が開く。


 「……あの。ワタシが悪かった、です。……ごめんなさい。その、……今回の仕事も、協力よろしくお願いします……」


 嗚呼、これが人の生き死にを取り扱う案件(ヤマ)でなければ、そこそこ和やかに映ったのかもしれない。しかし此処は狂気の魔都、TOKYO CITY。上澄んだムードの底では、凶悪な水流が渦巻いているのが常なのだ。


 かくしてまきながヒステリーを起こし、それをリサが宥めるという『いつも通り』のやり取りをパートナー一行が適当に流したところで、不意に立案者(プランナー)が親指で上方向を指す。


 「屋上へ行こうぜ。久し振りにキレちまったよ」


 どうやら、計画の下準備があるらしい。









 「流石に消毒液で濡れた身には、夏の風も冷えるな。何をするつもりだ?」


 くしゃみをしつつ縮こまるエイメンとノエルを余所に、マンションの屋上に据えられた倉庫から小型の機材を重たそうに取り出すリサ。


 「何て事はない、無人航空機(ドローン)の類よ。これを使ってノエルに下準備して貰うわ」


 「なな、なんで僕が? おおおお前がじ自分でやればいいだろ」


 「私、FPS以外のリモートコントロールに関しては専門外なの。それに貴方が動かした方が色々と面白いでしょう。名前とか」


 「は、はぁ?」


 「とっととやりなさいよ、どうでもいいから」


 「ドド、ドナがやれっていうならやややるよ」


 四脚の付いた簡素な機体に、反重力物質の備わった航空機構。タブレットでの操作にも対応しているらしく、簡単な操作でドローンは澱んだ街の空を駆ける。


 「わ、わは、わははは。こここれ結構楽しいうへへうへ」


 「こちとら歯っ欠けのラジコン遊びに付き合ってる暇はないのよ。で、リサ。これをどうするワケ?」


 「迷彩機能が備わった小型探査機。これ程視察にうってつけな代物は存在しないわ。ノエルの操作だけじゃ心配だから、ドナ。貴女も "飛ぶ" 準備しといて」


 成る程、と溜め息を吐き、金田の掌に載せられた燕型の機体(ボディ)を一瞥するまきな。


 「(ジェンダー)に関しては緩いつもりだケド、流石に動物に変身するのはいつ以来かしらね。牧場で雄牛を襲った時以来か、ドラッグパーティでハイになった時以来か……」


 「貴女の節操のなさ、本当草生えるわ」


 「(……草?)」


 秘匿警備員(インコグニート)共のスラングは相変わらず理解し難い。それは置いといて、こめかみに指を当て、目を瞑り、精神を研ぎ澄ませるまきな。アンドロイドという特異の中の特異、様々な改良(アップデート)を施された彼女の機体は、その鉄を愛人とする『職業病(ファンクション)』に加え、特定の材質で造られた機体ならば、ある程度の乗り換えが利き、自身の肉体と為す事が可能である。『造型師』たる金田によって造られた燕型の機体、既にヒトしての体を為してはいないものの、これもまた然り。


 「 "職業病(ファンクション) メタモルフォーゼ" 。準備完了よ、ボウヤ達」


 脳内に据えられたインプットメモリがスパークすると同時に、がくり、と膝を折り白目を剥くロビン少年の機体。そして代わり、瞳に紫の光を宿し、快晴の都会を飛び回る――一羽の燕と一機のドローン。


 「まずは計画の下準備よ。ドナ、ノエル。抜かりなくね」


 大掛かりな段階を踏む、玄人(プロフェッショナル)数名による殺しの密談。停滞した都心にて巻き起こる流動、連続殺人犯(シリアルキラー)との因縁、そして仕事人をつけ狙う(ブラザーフッド)の影。抜けるような晴れ間に反し、未だ不純物多き計画内容が如何にして転ぶのか。それは、神のみぞ知るところである。


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