思い出補正
掲載日:2026/09/05
前髪が揺れる君の背中をただ
追うことだけで精一杯だった
だから一歩一歩踵を踏んで跡が残った距離を
最後まで測ることなく終わってしまった
君と呼んでいたあの子が結局誰のことだったのか
今となっては思い出せない
思い違いをしている可能性すらある
そんな中唯一君について
覚えていたのは空がすうーっと置き換わる空の模様替えに
心奪われていたことだけだった
今日がまた終わって
日が沈む瞬間を望むところができる場所へ
辿り着くころには
夕飯の支度と一日の最後に添える日記に書くべき言葉を
頭で背比べさせてしまっていた
一息に駆け上がると汗がいっきに噴き出して
吹き付けてくる風の強さが増したと感じてしまう
見渡すともうすぐ今日という日の後半に突入するところだった
空は青黒いガーゼを被り点が光りだす
真ん丸くあろうとする月に翼が生まれたかのように薄雲が後ろに張り付く
思考停止に陥ったのか鳥は下へ落ちていき
そこで空は端から端まで全部模様替えを終えてしまった
無事287回目の空を見届けたと使命感に満ちた胸で
来た道をひたすらまっすぐに進んで急ぐ
君というあの子に抱いていた気持ちの名前を口ずさみながら
いつかのあの日もこんな風に一歩一歩進むごとに
後ろに跡が残っていくことに心弾ませていたのかなと嬉しく懐かしく思う




