29.近日チュウウゥゥゥゥッ!にィッ!
またいつもより長くなってしまいました…申し訳ございません。
その後いろいろあり、アリゼスは無事に拘束を解かれて解放されていた。
「ご迷惑をおかけしました…もう二度と近寄りません…」
「おう…なんかごめんね…」
「ゲヒ…どうして、そ創造主様…が、頭を下げ、下げ無ければならない…の、ですか…?」
「そりゃお前…眷属達のミスは俺のミスだからなぁ…」
「ふへ…!お前…達…の、のせいでで、創造主様が、が!が!!」
「おちつけえい」
またもやブチ切れそうになっていたシクスの首を腕でロックする昴。昴はめんどくさかったので物理的に捕まえただけなのだが、シクスは唐突な神との触れ合いによって大興奮していた。
「アヒィ…はぁ…はぁ…あっ…ふぅ…」
「よし、気を付けて帰るんだぞ~」
「はい…もう帰ります…お世話になりました…」
様子の可笑しいシクスを見てぎょっとしたアリゼスはそれ以上何も言わずにトボトボと帰宅した。昴はその様子をぼーっと見ていた。
「創造主様、それでは私は兵士の生成に戻ります」
「あ、そうだったな。頑張ってくれ」
「ハッ!」
フォースはビシッと敬礼して練兵場の方へ向かう。そしてそれを見ていたフィフスも口を開いた。
「それじゃぁ~私も戻りますぅ~ここにいるとその変態にまた殺されかけそうなのでぇ~」
「あっ…あっ…あッ…」
「お前本当に一言多いな…」
フィフスはまたさっきと同じく何もない所でドアを開くような動作をした後、どこかへ消えた。といっても恐らくゲオルガラム内部の研究室だろうと予測できるのだが。
ちなみにサードやファーストはとっくの昔に昴に一言残して戻っている。
「創造主様、これからのご予定は如何なさいますか?」
「セカンドよ、その事なんだが」
「ひぎゅ、ああぁッ~…!」
「ヒェッ…コイツ忘れてた…」
突然腕の中にいるシクスがガクガク痙攣するものだからびっくりしてロックを外す昴。ちなみに眷属は…いや、特にファーストやセカンド、シクスは息が出来ない程度どうという事は無いのだが…なぜこうなってしまったかは想像にお任せしたい。
「大丈夫…?」
「あぐぅ…こ、こ、この上ない恩賞に、ござ…ざいます…ぐふ…」
「何故シクスは首を絞められてうれしそうなんだ?」
良くも悪くも単純なセカンドはこの上なく不思議そうな顔をしていた。
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その後昴は神の間にもどってきていた。
「そういえばシクスの任務を考えないとな」
「ヘケッ…はい、拝命いた…します…!」
「まだ何も言ってないのに…しかもハム太郎じゃん…」
昴が座っている豪奢な椅子の目の前にへたり込んでいるシクス。対面に椅子があるにも関わらず昴の足元に、である。
昴は考える。正直コイツは大抵の事なら出来る性能を持っている、しかも強い。そしてあることを思い出す、そう…それはセカンドに護衛と連絡係を言い渡したときの事だ。
○○○○〇〇
「お前あれだ、えーと護衛&連絡係」
「やっ!…ん゛ん゛、拝命致しました」
〇○○〇〇〇
読者の皆様なら分かると思うが、あれは単純にセカンドは昴の護衛を言い渡された為やったー!と言いかけていたのだが、昴としてはあれは…
「お前あれだ、えーと護衛&連絡係」
「やっ!…ん゛ん゛、拝命致しました(ヤダ!!でもそんな事いえる立場じゃないしな…)」
的に受け取っていた。そして優しい昴は二つも役割押し付けて申し訳ないな…と心苦しく思って居たのだ。勘違いもいい加減にして欲しい。…そしてその結果生まれた答えはこれである。
「セカンドよ…今まで負担をかけてすまないな…今日からお前は連絡係に専念してくれ」
「承知致しました!…え?えええ、えええええええ!!!??」
「一人に二つも役割を押し付ける事が間違っていたんだ」
セカンドは思わず絶叫する。そりゃそうである。
「んで、シクスには俺の護衛を頼もうかな」
「ぐふ、フフフ…あり、ありがたき…幸せ…にございます…!」
緩いシクスの表情がより緩みを帯びて嬉しそうにしているのをみて喜んでいると視覚的に理解した昴はそれで嬉しいなら適任だな!とか思って居た。
「ははは、そんなに嬉しそうにされるとなんだかヘンな感じだな」
「はひ、うれ、うれしいです…!ありがとうございま、ます…!ありが、とうござざいます…!」
「はっはっはっは」
「ありがとうございま、す、す!ありが、がとうございます…!あ、りがとうございます!ありがとうございます!ありがとうございます…!!!」
「いや怖いよ!!??」
だんだんとニコニコしていたのが、あまりにも真剣味というか、狂気的な感じが増してきたので恐怖する昴。ディスイズ怖い。
「お、お待ち下さい創造主様!!」
「なんだァ?」
恐怖で青ざめた昴の表情はセカンドを威圧するのには十分だった。
「ッ…その…護衛…を解任されると、創造主様の傍に控えるのは…禁止でしょうか?」
「え?連絡係だしいいんじゃね?てかそもそも俺の近くに来るななんて言ってないし」
「アッ、はい…そうでしたね…」
セカンドはこの件を他の眷属には共有しないようにしようと誓った。さもないと恐らくすべての眷属が昴の傍から離れなくなると思ったからである。
とりあえず護衛の任を解かれて今すぐ神の間を出て行かなければいけない…なんてことにならなくて安心するセカンドであった。
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~数日後の夜~
この日はあらかじめ予定していた定期報告会と言う名の食事会が開かれる日だった。食材を集めたのはフォースの兵士達とファーストで、それを調理したのは兵士達やフィフスとサードだ。鹿頭の男が血の滴る包丁を持っているとそれだけで怖いと感じるのは私だけだろうか?
「よぉ~し、それじゃ。皆準備はイイかぁ!」
ゲオルガラム内部にある巨大食堂の一際豪華な席にいる昴は大きな声で確認する。すると眷属含めフォースの生成した兵士達も一斉に声を上げた。眷属6人にその他眷属が生み出した者達総勢約300人…マジでにぎやかになった物である。
立食パーティーのようになっており、その中でも昴は最奥の大きなテーブルに腰かけている。勿論何十人かの兵士がスタッフになっており順次食事は追加されていく。ちなみに一応神様が食べる物という事で兵士たちは死ぬほど料理の特訓を積んでいたりする。
「それじゃあ~!パーティ開始ィ~!」
PON!PON!PON!
昴のデュエル開始ィ~!的な発音の掛け声に合わせてクラッカーが鳴らされてパーティが始まった。ちなみにクラッカーの事を聞かされてなかった昴は心臓が飛び出しそうになっていた。そしてビックリしていた昴の様子を見たシクスがクラッカー係にブチ切れそうになったりしたが昴がなんとかした。
ちなみに皆この立食パーティーの為にドレスやタキシードを着こんでいる。ファーストはシャキッと黒いタキシードを着ており大変イケメンだ、セカンドは黒い露出の少ないドレスを着ており、兵士達は初めてセカンドの肌を見るのでそのあまりの色白さに女性兵士達にどうやってその白さを維持しているのかと問い詰められていた。
サードはやはりというか黒いパリッとしたタキシードを着ており、またいつもの黒スーツとは違い異世界魔王幹部感が凄い、フォースもしっかりと黒いタキシードを着こんでいる、しかしいつも被っている軍帽を外しているためそのエメラルド色の少しもしゃっとした髪が少し可愛らしい仕上がりになっている、フィフスは紫色を基調としたドレスを着ている、なんでもお手製なのだとか…ちなみに既に異世界産のワインを浴びるほど呑んでおり雲行きが怪しい。
ゲオルガラムもパーティ仕様に装飾されており心なしかいつもより穏やかな魔力で溢れている、シクスはいつものだらしない恰好とは似ても似つかない…とまではいかないがしっかりと紺色のドレスを着ておりちゃんと人前に出しても恥ずかしくない程度にはおしゃれしている様子だ。
しかし昴は私服であった!
「…(やっべぇ…俺もおしゃれするべきだったのか…!!だってただの飯会だと思ったんだもん…!!許して…!!)」
「イヒィ…創ぞ造主様、おき、お機嫌…悪い、でですか…?」
「あ、いんや。問題ないね」
二次会があれば着替えようと思って居る昴であった。いうまでも無くシクスはべったりと昴の隣に控えている。
「創造主様、この度は素晴らしいパーティにお招きいただきありがとうございます」
「お、ファースト!調子どうだ?」
昴は内心「いや普通招くだろ」とか思って居たが空気を読んで言わないでおいた。
「はい。創造主様のアドバイスを参考に冒険者活動に勤しんでいたところ特級冒険者に昇格致しました。そしてパーティーメンバーもできました」
「すげぇ!?やるねぇ!」
「お褒め頂きこの上ない幸せにございます。シクスも御変わりありませんか?」
「グヒ、ヒヒ…私は、創造主さ様の…為、ひ日々、進化し、してる…わ」
「それは素晴らしいですね。…おっと他にも創造主様にお話のある方がいらっしゃるようですので私はここで」
「おう、またな」
ファーストは昴とシクスに一礼すると去って行った。何というか色々しっかりしているイケメンである。
そうこうしているうちに次はセカンドが女性兵士をかき分けてやってくる。
「創造主様!」
「あ、セカンド」
「こ、この度はパーティにお呼びいただき!ありがとうございます」
「うわすっげぇぎこちない!?」
実はこういう時どうすれば良いかわからなかったセカンドはファーストに相談しており、そして先にファーストが行くのでそれを真似する様にと言われていたのであった。それ故のぎこちなさである。
「えっと、えええと…いつも通り!変わりありません!!」
「え、そりゃ連絡係だしな…?」
「デヘ…へ、きき緊張…しすぎ…ね?」
シクス、お前はそれを指摘できる立場にあるのか?そう思った貴方、シクスはこれがデフォルトなのです、だから緊張している訳では無いのですよ!
「そ、それではぁ!失礼いたします!」
「見事にカチコチだったなぁ」
そんなセカンドを気にせず食事をする昴、ここ最近は見たことの無い食材ばかりだったが段々と見覚えのある食材に変わってきており警戒はしていなかったのだがパーティで出てくる料理はマジで珍しいものを使っている様でゲテモノ好きの昴でも少し警戒しながら食べていた。
「そおオオオオうぞうッ主さッ!まッ!…ご機嫌麗しゅうございますでしょうか」
「うお!!??」
「ギ、し鹿、頭ァ…!」
びっくぅ!?としている昴の代わりにキレるシクス。
「シイィィィィィックスッ!そんッなにッ!怒りィ!狂ッッていてはアアァァ!!…せっかくのパーティが台無しですよ、創造主様の御顔に泥を塗るおつもりですか?」
「チッ…お前、た、ただでさえ、煩い…だか、から、もう少し、し、気を、つかえ…!」
「まぁまぁ、二人とも落ち着け、俺はマジで慣れてるから(めっちゃびっくりしたけどね!)」
シクスが普通に舌打ちするものだから普通に空気が悪くなる前に二人を落ち着かせる昴。薄々気づいているがシクスは眷属達の中でもそこそこ浮いている、というか一部の眷属には苦手とされていたり若干敵対心をもたれていたりする。…そう考えるとすべての眷属達に平等に真摯なファーストすごい。
ちなみにサードがシクスに少し強く出たのはこの後フィフスが創造主に会いに来た時、シクスがブチぎれる可能性を少しでも抑える為である。常識的な者としてはこれくらいの事はやってのけるのである。
「でえええはッ!!報ッ告!致しィィィッまッ!すッ!つい先日ゥ!!フォースの探ッ索ッ隊ッ!があああ!!!…魔族の国を発見した様なのです」
「なあああああにいいいいい!!!…それで?」
「アヒィ…ヒィ…猛々しい、い、お声…!」
サードの真似をして大声を出して、サードと同じ罪を被ろうと思った昴はシクスから思ってたのと違う反応が来て戸惑うが、まぁいいかと諦めた。
「近日チュウウゥゥゥゥッ!にィッ!!魔王ッとォ!!!対ァァァァ談ッ!!して!頂き!たくッゥ!存じマスッッ!!…あとお気遣いいただきありがとうございます」
「なあああああああああるほどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!…おけまるだ」
「おヒ、ヒヒ…耳が、が、しし幸せ…です」
おけまるとは言ったものの、それからしばらく昴は胃がイタイイタイなのであった。
「そおおおおれではッッッッッ!!…失礼致します」
「あ、うん。パーティー楽しめよ」
サードはお辞儀すると去って行った。
そして次に昴は果実水を飲む。本当なら酒でも飲んでやろうかと思っていた昴だが、何となく悪い気がして飲めなかったのだ、小心物と笑いたければ笑うと良い!ちなみにこの異世界では16で成人なのだとか…なので酒はオッケーの筈だが…昴はとりあえず飲まない事にしていた。
「創造主様、フォースです。お時間よろしいでしょうか?」
「お、きたか。勿論いいぞ」
昴が酒の誘惑と闘っているとフォースがやってきた。それと同時に兵士たちがチラチラとこちらを見ているのが分かる。
「私の生成した兵士達は如何でしょうか?」
「ああ、最高だね」
昴がそう言った直後会場に大歓声が響く。
「オイ!聞いたか!?」
「あたりまえじゃない!」
「フゥー!!創造主様バンザーーーイ!!!」
「彼らは創造主様の為に命を捨てる覚悟がある者達です、今後ともこき使ってやってください」
「そ、そうだな…作るなら、なるべく…人道的な兵器を頼むわ…」
ちなみに兵士達は皆見た目が高校生程度なので本当に心苦しくさせられる昴であった。なんとなくそのくらいの年齢に見える兵士達がタキシードやドレスを着ているのを見ると違和感があるが、気にしない昴であった。
そしてこれは最近昴が気が付いた事だが、どうやら兵士達にもそれぞれ考え方や性格の違いがあるらしい、それは兵科に強く出てきている様で…フィフスの作った重火器を使う科もあれば異世界らしく魔術を得意とする科、剣や槍など近接武器を扱う事に長けた科…そして神への信仰心で仲間を癒したり敵を滅したりするシスターっぽい科?なんかもあったりする。やっぱりというか神とは昴の事らしく、昴自身も信仰の対象になっているせいで最近マジで神性を得てきた。異世界とは不思議なものである…しかし昴の元居た世界にもそういう事はあった。
これは昴と真理がやっていたことだが…道端に花やお菓子を毎日備える、勿論そこで誰かが亡くなった訳では無い、しかしその供え物をみた通行人はそこに追加で供え物を置いたり冥福を祈ったり、気味悪がったりした、その結果だれも亡くなっていない筈のそこには夜な夜な死んだ老人の霊が徘徊するという噂が流れていた。それが人の祈りの力…もしくは思い込みの力とでもいうのだろうか?そんなことがあるのだろうか、という疑問ももちろんある、しかしその存在しない筈の死んだ老人は、魂の無い…亡霊ですらない何かはそこに生まれてしまったのだ。
「…」
「ヒ、ヒヒ…創造主さ様、どうか、ななさいましたか…?」
「いんや、何でもない」
「?それでは創造主様、私はそろそろ戻りますね」
「おう!楽しんで来い」
真理との思い出を振り返りすこしノスタルジックな気分に浸っていた昴はある眷属の存在を忘れていた。
ドン!!
「うわびっくしした」
「創造主様ぁ~~!酒呑んでますかぁ~~!?」
「うっっっわ…お前かよ…てかお前大丈夫か…?」
「ギギ…!お前、し失礼が、す、過ぎる…ぞ!」
酒の匂いを纏いながら現れたるは地獄のアイスフィールドクリエイターフィフス!!今の今まで兵士達が昴の元にたどり着かせまいと大酒呑みバトルを連続で仕掛けていたが、フィフスはなんと10戦10勝のバケモンであった。
「そんなカタイ事言わないでくださいよぉ~~!ぐへへぇ~~!ほらほらぁ~~!呑みましょうよぉ~~!おいしぃ~~ですよぉ~~!」
「くっ酔っ払った親戚の爺ちゃんみたいになりやがって…!」
「ギギギギィ…!創造主様を、を!困らせ、るな…!」
べろんべろんに酔ってクネクネしているフィフスはそのままの勢いでシクスに抱き着く。誰がどう見ても悪手である。
「わぁ~~、シクスいい匂いするぅ~~!あはは!!あはははははは!!!」
「ヒィ…抱き、だき、着くな…!酒臭い、のよ…!」
「助けてあげたいけど百合の間には挟まるなってじいちゃんが…」
英才教育を受けていた昴であった。
「創造主サマぁ~~、お酒呑めないなんてぇ~~!おこちゃま、ですよぉ~~!でもそんな創造主様も、ありかもぉ~~あははははははは!!!」
「う、うぜぇ…」
「ギギギギギギギギ…ふんッ!」
「ぐえぇ!?」
シクスに抱き着いていたフィフスの腹に素晴らしい膝蹴りが突き刺さった。あまりにも見事な膝蹴りに誰もが言葉を失う。
「ギ、ジギ…わ私、魔術よ、り、近接せ戦闘の、方が…得意、なの…!」
「あ、やばいですぅ~~…吐きますぅ~…」
「おいバカやめろ!!!??」
波乱万丈パーティなのであった。




