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19.オエッ…吐きそ


「はぁ~あ食い過ぎてキレそう…」



 朝食を何とか完食した昴は余りの満腹感に凄まじい苛立ちを感じていた。ご飯を食べておいて機嫌が悪くなるなんてクズだ!と思うかもしれないが、その通りクズである。でもどうか許してあげて欲しい、体調が悪くなっているせいでイラ立っているだけであり、食事のせいではないのだ。



「創造主様、一つご相談があります」


「なんやねん」



 ファーストは昴の目の前に跪く。


 ちなみに道端である。



「冒険者ギルドが用意した宿は監視されているやもしれません」


「ほう。拠点を用意したほうがいいって事か」



 段々と眷属達が何を言いたいかわかってきた昴は説明をすっとばして結論を言い当てる。眷属達はこの時予知能力でもあるのかと勘違いしていた。



「はい、流石創造主様にございます」


「俺もそれはちょっと思ってたし、何より一つ試したいことがあるんだ」



 そういうと昴は眷属達についてくるようジェスチャーし、歩き始めた。



/////////////////////////////



「よし、ここら辺ならいいだろ」



 昴は元々暗黒森林があった場所に訪れていた。勿論街を出るときに門番と一回もめて居るが、今回は省略する。



「確かにここでしたら地面も平ですが…」


「街から見えてしまうので創造主様のお力が見られてしまうのでは?」



 眷属達の懸念はもっともである。確かに能力を見極められてしまえば対応はしやすくなるだろう、だが昴という男はそもそも生死観が独特な男である。



「まぁ最悪ばれて殺されても死ぬだけだし良いだろ!(笑)」


「良い訳がありません!!!」


「ご自愛下さい!!」



 昴の死に対する感覚のガバガバ差に驚きを隠せない眷属達は必死に説得しようとするがもう遅い。昴は基本的に目上の人には敬意を払うし友達や対等な相手の意見はよく聞く男である、だが今回は主人と眷属という関係なので聞く耳を持っていなかった。



「オラアアアアアアアアアアアァァァァァンンンン!!!」


「ぐっ…!凄まじい魔力…!!」


「これほどまでとは…!」



 昴達の目の前にナニかが形成されていく、それはまるで大きな協会のようなナニかである。


 そして完全に昴達の目の前に姿を現した建物は異様な雰囲気を放っていた。



「オエッ…吐きそ…これが"重眷属生成"か」


「これは…」


「…」



 その建物は城のようであり、また協会のようであった。美しいステンドグラスで描かれている神々しい存在達の中心には一層神々しいどこか昴に似ている人物が居る。だがその美しい協会とは裏腹に、その周りには重厚な城壁が築かれており、そこに連なる6つの塔はまるで一つ一つが城かと見紛ってしまう程堅牢な見た目をしている。



「創造主様、大丈夫ですか?ひとまず中に入りましょう」


「お疲れ様です創造主様」



 昴を抱き上げたファーストが重眷属の正門に近寄ると、ひとりでにその大きすぎる扉は開く。内装は礼拝堂のようになっているようで、奥の方を見ると他にも部屋がいくつもあるようだった。



「あれは…創造主様と…私達だろうか?」


「そのようですね。なかなか趣深い装飾です」



 眷属達と昴はステンドグラスを眺める。昴を中心に11人の眷属が跪いている。だが、一人だけは昴の陰に隠れるように、また縋り付くように跪いている。ちなみに11人中9人はフードをかぶっており、表情は見えない。顔が見えるのは若干美化された昴とファースト、セカンドである。



「俺美化されすぎじゃね?…ってなんこれぇ~…ヤダー…」


「おおッ…!素晴らしい像ですね…!」


「本物の方が美しいな」



 昴の顔がお預けを食らっているパグのようにしわしわになっている。その原因は礼拝堂の最奥に設置されている等身大昴像のせいである。この時昴は「建物でも眷属だとそういう感じになんのかよ」と恐れおののいていた。



「突然だけど、この建物は生きているので名前を付けよう」


「魔力を発していたのでまさかとは思いましたが…やはりそうなのですね」


「仲良くやっていけるといいな」



 案外フレンドリーなセカンドを無視して昴は名前を考える。



「俺の好きなゲームでこんなやつ居たんだよなぁ…なんだっけ名前…」



 え?サードじゃないの?と思った方、貴方思考回路が昴化していますよ!重眷属は眷属と違って、制限のあるものの、大変強力な存在だ。ちなみに昴は重眷属と眷属の違いを曖昧ながら察しているので、眷属達に連なる名前を避けていた。もし新しい眷属を生成するのなら次は間違いなくサードとなるだろう。



「思い出した。今日からお前はゲオルガラムだ」


「素晴らしい名ですね」


「褒めるなら俺じゃなくてLov3の開発陣にだな…いやわからんか」



 昴は既に終わり(サ終)を迎えたゲームに思いを馳せて心の中で一人涙した。


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