17.うわめっちゃ他人事じゃんお前
「さて朝食を取りに向かいましょう。昨日小耳にはさんだ話なのですが海王亭が朝食には持ってこい、らしいですよ」
「あれ?結果は聞いていかないのか?」
ファーストは難しそうな顔をする。まさにうーんといった感じである。そして瓦礫の方向をみて口を開いた。
「あれだとしばらくかかりそうですので」
「うわめっちゃ他人事じゃんお前。まぁ…いいや、じゃあ飯行くか」
昴が朝食を取るために歩き始めようとすると、とっさにセカンドが昴を止める。
「貴様、何の用だ」
「ああん?お前には関係ねぇよ、そこの金髪だャ」
猫耳の女性、ラキロンだった。…勿論昴一行は彼女を全く知らないのだが。要人護衛中の彼らからすると明らかにブチ切れ状態の不審者がどかどかと近寄ってくれば警戒するのは当たり前である。
「金髪…私の事ですかね。何の用でしょうか」
「てめぇ良くもウチのリーダーをやってくれたなぁ!」
ラキロンの額に青筋が浮かび上がるのと同時に黒髪が猫耳ごと真っ赤に発光する。別段猫の民にこのようなスーパーサイヤ人的な強化要素があるわけではなく、ラキロンが長い修行の末手に入れた彼女だけの力である。
「まぁ試験でしたので」
「あぁん!?試験だったら何やっても許されるってのかぁ!?」
「…どの世界にもヤンキーはいるんだなぁ…(ボソッ」
昴がヤンキーじゃないか!とおもってしまう程に凄まじい形相でファーストにメンチを切っているラキロン。そしてそれを無表情で見つめるファースト。異様である。
「許す許さないの問題ではありませんよ。そもそも貴方達に許されなかったとして何か問題でも?」
「あ、あぁん?そりゃ問題あるだろうが、スジが通らねぇ」
「なぜスジを通す必要があるのですか?スジを通さなければ何かあるんですか?」
スーパー屁理屈である。もはや小学生のような言い草であるが、実際その通りである。化け物に人間の常識を当てはめようとしているのが間違っている。…ラキロンからはまだファーストが人間に見えていた。
「そりゃお前実力行使しかないわなャ?」
「貴方達如きが私に勝てるとでも?」
実力で劣る者が実力を行使しようとするとこうなる。ラキロンからすれば大真面目なのだが、他者からするとやめとけやめとけ!である。弓を持った者が核弾頭を保有する者に脅しを掛けている様な状況だ。
「……俺たちがギルドに告げ口すればお前は不合格にできるだろうよ」
「どうぞ、そもそも私は勧誘された側ですので。それでは私はこれからこのお方と最高のひと時を過ごす予定ですので、さようなら」
ラキロンの赤く発光していた髪は元に戻る。若干猫耳もたれ気味だ。…金級冒険者になるには実力以外にもその人物の性格が優れているかどうかという審査基準がある。つまりはある程度賢くて、しかも根がいいヤツしか金級冒険者にはなれないのである。つまりラキロンも根はいいヤツなのだ、だからいきなり攻撃することも無ければ、これ以上引き留める事も出来なかった。
「さぁ行きましょう創造主様」
「お、おう…すっげぇ睨まれてんなぁ…」
「殺しますか?」
「殺しません!」
昴一行は他愛のない話をしながら例の朝食にぴったりなお店に向かった。勿論ボロカスになった冒険者ギルドなんて無視である。




