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16.やってんねぇ!?おまえ!



「貴方が例の…いいわ、相手になってあげる」


「それでは行きますので後からナシというのは止めてくださいね」



 アーナイムが腰に携えていた剣の柄だけの見るからに攻撃力の無さそうな物を手に取る。何故剣の柄だけなのか?それは彼女が取り出した武器に刀身が無ければ鞘も無い為である。だがもちろんそれだけではない、彼女が剣の柄に魔力を流し込むと緑に輝く刀身が現れる。


 ちなみにこの剣は金級冒険者パーティー『グランブレイド』の名前の元ネタである。アーナイムが持つ剣、【月光】は彼女がソロで冒険者をやっていた時代に手に入れた物だ。振れば海をどっかの神話のごとく切り裂き、突けば山に大穴を穿つ文句の付け所の無い素晴らしい剣だ。



「私模擬剣なんてもってないしコレで行かせてもらうわよ」


「お任せします」



 アーナイムとファーストは睨みあう。アーナイムはは腰を低くして構えを取るがファーストは棒立ちだ。アーナイムは警戒していた、アルマイクの様子が異常だった事から恐らく本当にヤバイ奴である可能性が高いと見たのだ。もし下手に動けばあっさりこちらが負けかねないからだ、もしそんなことが起こってしまえば金級冒険者の実力が疑われかねない。もし金級冒険者の実力を疑われると銀級に降格される恐れがある、それだけは避けなければならないのだ。



「ほら…来なさいよ。これじゃいつまでたっても終わらないわよ」


「それもそうですね」



 直後アーナイムは全力で横に飛ぶ。



「ッはあぁっ!……はぁはぁ…なんてスピード」


「殺さないよう加減したのですが…やりますね」



 アーナイムは血を吐く。ファーストの一撃を貰ったからでは無く、身体の限界を超えた動きで強引にファーストの攻撃を回避したからだ。アーナイムはこの回避をあと3回も使えないだろう。それほどに奥の手だったのだ。



「ふふ…!ヤバイわね…ここまで強い奴は初めてだわ…!」


「そうですか。それは重畳ですね」



 ファーストは戦闘狂ではない。もし自分より強いものが居ないのならそれが一番なのである、だから内心ほっとしていた。4人目のように規格外の存在がゴロゴロいては昴を守る難易度が上がってしまう。



「ファースト~!お腹すいたから早めに頼む~!」


「はい!すぐに終わらせます!」



 そういえば朝から何も食べてない昴であった。昴に声をかけてもらいご機嫌になりニッコニコになったファーストはもう模擬戦とか正直どうでも良くなっていた。



「…随分と彼を慕っているのね」


「それは勿論!あのお方こそ私の存在意義なのです…!ところで用事が出来ましたので早々に終わらせましょう」


「!?」



 ファーストがそう言った瞬間アーナイムはぶっ飛ばされ冒険者ギルドの壁を突き破り、瓦礫に埋もれた。



「まぁ…死んではいないでしょう。試験はこれで終わりですね?」


「あ、アーナイムさん!!!」



 アルマイクは悲鳴を上げて冒険者ギルドへ走る。何年来の友人が目の前から一瞬で視界から消えるほどの勢いで吹き飛んだのだ、心配するなという方が難しいだろう。とにかく必死に走る。


///////////////////////////////////



 時を遡る事ほんの少し。グランブレイドのパーティーメンバー、ラキロンとグリアは冒険者ギルドと提携している食品ギルドで朝食を取っていた。冒険者ギルドの建物内に食堂があるのでクエスト終わりの冒険者達は良く使っている。


 アーナイムが帰ってくるまで朝食を待って居ようという優しい心が無いわけでもないが、別にそれぐらいでアーナイムは怒らないと知っているからこその行動である。



「それにィしてもここの飯はどこで食っても同じ味だよなぁ!」


「それが売りだからな」



 基本的にどこの冒険者ギルドにも提携している食品ギルドの食堂があるのだが、どこで食べても同じ味付けを徹底している為当たり外れが無い。



「…大丈夫かなャ新人クンよぉ」


「まぁ…さすがのアーナイムでも手加減くらいは出来るだろう」



 この時点では自分たちのリーダーが負けるなんて全く思って居ない二名であった。



「そうだといいィけど…あーむ。うんうんこの味この


DOGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!!!


「なんだャぁぁぁぁあああああ!?!?!?」



 冒険者ギルドの壁が吹き飛んだ。訓練場方面からは何個か部屋を挟んでいるので確実に何枚もの壁をぶち抜いている。あと朝食のエッグトーストに大量のごみが入ってしまった。



「おいおいィ!!新人クンぶっ飛ばされたのかああ!?」


「…おい嘘だろう。ラキロン!手伝え!ぶっ飛ばされたのはアーナイムだ!!」


「はああああ!?!?嘘だゃろ!!?」



 ラキロンが山盛りになった瓦礫を見るとそこからアーナイムの両足が見えた。それに全く関係の無い冒険者や職員まで生き埋めになっている様子だった。


 そこに一人のあわただしい足音が聞こえてくる。ラキロンがそちらの方を見ると見覚えのある女性だった。



「アーナイムさああああん!!!」


「ってことは本当にィ…アーナイムがやられたって事かよ」



 とっくに救助を始めているグリアを尻目にラキロンは訓練場へと向かい始める。理由は勿論敵討ちの為だった。


//////////////////////



「う、うっわぁ…やってんねぇ!?おまえ!」


「試験がどうなったのかだけ先に教えて欲しいものですね」



 昴は穴の開いた冒険者ギルドを見る。すると何枚か壁をぶち抜いた先に瓦礫が見える、そしてその瓦礫からはさっきまでそこにいた女の足が飛び出ていた。



「なぁファースト。ああいうのなんていうか知ってる?」


「申し訳ございません…どうか浅知恵なる私にご教授下さい」



 昴は驚きと罪悪感から若干半笑いになりながら答える。



「スケキヨ」



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