15.時間の価値は皆同じとは限りませんから
「はぁ…全く…なんで私が新人の相手なんてしなければならないのかしら…」
金級冒険者であるアーナイムは運悪くこの街に立ち寄ってしまったが為ギルド職員につかまってしまった。勿論ファーストとかいう大型新人の試験官として働かされる運命だ。
ちなみに冒険者の格は銅級<銀級<金級となっており、金級冒険者であるアーナイムはこの世界において最上級の戦闘力を有している。
余談だがアーナイムは染めた茶髪に赤い瞳を持つ美人だ。彼女の所属している小規模パーティー『グランブレイド』のリーダーを務めている。
「まぁまぁ、いいじゃにゃえか!」
同じく金級冒険者であるラキロンもグランブレイドの一員だ。ラキロンの黒い髪にはひょっこりと猫耳が生えており、猫の民であることが分かる。ちなみにラキロンが言葉の節々に割り込ませている怪しげな猫っぽい言葉は猫の民共通の喋り方ではなく単にラキロンが勝手に言っているだけである。
「…金は払うって話だし悪くは無いだろう」
またまた同じ金級冒険者であるグリアもグランブレイドの一員だ。彼女は金髪に青い瞳が良く映える美人だが、そこら辺の男性冒険者よりはるかにバキバキに割れている腹筋が原因であまりモテなかったりする。ちなみに一部の男性からは非常に評判が良い。腹筋フェチ大歓喜である。
「私は一刻も早く強くならなきゃいけないの!」
「言うて模擬戦にゃし練習にはなるんじゃにぇえの?」
そんな話をしていると訓練場にどたどたと騒がしい音が聞こえてくる。
「ほらもう来たぞ、実力をみてきてやれ」
「…もう!わかったわよ。新人に悪意はないもの、さっさとやるべきことをしてくるわ」
「それにゃあアタシ達は向こうで待ってるからまた後でな~!」
そういうとアーナイムを除くグランブレイドの面々は訓練場の隣にある冒険者の建物へと向かう。そしてその二人とすれ違うようにアルマイクが訓練場にやってくる。
「アーナイムさあああん!!新人さんお呼びしましたああ!!試験をお願いしますううう!!」
「ちょっとアルマイクさんどうしたの!?そんなに慌てて!?」
「げほっ!ごほげほげほ!!はぁはぁ!お気になさらず!!」
明らかに様子のおかしいアルマイクの背中をさすりながらアーナイムは考える。この街にはあまり寄らないがアルマイクという人物とは短くない付き合いがある、そしてアルマイクの性格もある程度知っているつもりだ。だからこそあのアルマイクをここまで青ざめさせる存在がどんな人物なのかを。
「ここが会場ですか」
そこに良く通る声が唐突に響く。
「ふぁ、ファーストさん…!こちらが試験官のアーナイムさんです…!」
「つまり彼が…新人という事でいいのかしら」
そしてファーストの後ろから現れる昴とセカンド。ちなみにドアマンはセカンドが務めている。ドア…マンでは無くガールなのだが。
「早々に始めましょう。時間の価値が皆同じとは限らないのですから」
ファーストは直剣を生成してその切っ先をアーナイムに向けた。