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10.ギョアアアア!!アッチイッテアッチイッテ!!



「で、どうすんの?」



 俺たちは一旦保留という事で1日だけ時間を貰った。ちなみに泊まる場所が無い事をそれとなくほのめかしたらこの街で一番高い宿の部屋を取ってくれた。勿論金はギルド持ちだそうだ。よかったね。



「断ろうと思います」


「まぁそういうと思ったよ。ちなみになんで?」



 特に良く考えているような様子も無くあっさりと答えを出した。というかさっき一考の価値がありますねぇ!みたいなこと言ってたじゃん。本当に一考しかしなかったのかコイツ。



「創造主様のお傍に控えられなくなってしまうからです。もし私の居ない間に何かあればと考えると…それだけで冷や汗が出てきてしまいます…」


「説得力はんぱないなぁ」



 実際にキラリと額に汗を一筋流すファーストはやはりイケメン…じゃなくって、本当に不安そうな顔をしているので説得力がすんごいの。…でもなぁ…不労収入…魅力的すぎるんだなぁこれが。



「それなら、眷属を増やせば問題なくないか?」


「ふ、増やせるのですか!?それは素晴らしいです!流石創造主様にございます!」



 …ちょっとまってくれ、その反応何?まさかあれか、眷属は一人につき一体みたいな制限があるのか?まてまて、知らない知らないそんな事知らなかったぞおおおお!?今更無理とか恥ずかしすぎるんだけど!?



「う、うむ…もしかしたら出来ないかもしれないが…うむ。試してみる価値は…あるよねっ!」


「せ、世界の理すら超えようとなさるその精神!私は感服致しました!!」



 こえぇ…失敗がこえぇよ…何がヤバイって…絶対気まずくなるじゃん…多分ファーストは無理やり慰めようとしてくれるだろうけど…情けないよなぁそんなの。


 …あれ、失敗しなけりゃいいだけじゃね?そうじゃねぇか!!失敗をしなければいいだけなんだよ!!いける!!ぜったいいけるわこれぇぇぇぇ!!うわああああだめだあああ無理やりテンション上げても不安やべえええ!!



「取り合えず…人気のない路地裏で試してみようか…」


「はい!承知致しました!!」



///////////////////////////////////



~人気のない(ファーストが無理やり人払いをした)路地裏~



「よし…それじゃあためしてガッテム…」


「新たに創造主様に仕える仲間が増えるのはうれしいですね…」



 ファーストの期待が重しになっている昴はそれはもうドキドキしながら眷属生成の権限を行使する。…ちなみにこの権限を行使する際に魔力を調整することによって生成した眷属の能力値に変化があるのだが…勿論そんな事を昴が知っているはずも無く、緊張によりファースト同様膨大な魔力を消費しての眷属生成してしまった。そう、してしまったのだ。



「…うわ、めっちゃ眩暈がする」


「創造主様!?」



 ファーストはとっさに昴を抱きかかえる。お姫様抱っこである。そして当たりに影が差す。



「ありがとうファースト。ところでこの陰なに?」



 太陽は出ているにも関わらず周辺に影が差している。…ちなみにファーストの周辺には光が差しているのでファーストからしてみれば若干分かりにくい状態である。



「魔力を感じます。ですが私と同じく創造主様の魔力が若干混ざっている気配がありますので恐らく…"新しい仲間"かと」


「え、成功したんだ」



 あたりに広がっていた影が一か所に凝縮されていき、そこには一人の人間?が立っていた。



「私を作り出して下さりありがとうございます。創造主様に全てを捧げる事をここに誓います」



 そう誓った人物は長い灰色の髪が地面に着くのを気にする様子も無く傅いた。


 その容姿はあからさまに闇属性ですと言っているような見た目をしている。黒く禍々しい鎧は一切の肌を露出させておらず肌色すらわからない。それだけであれば顔を見れば判断できそうなものの、なんと顔面にはフェイスアーマーが装着されており表情すら読み取れない。長い髪とその声が唯一この人物が女性であると主張している。



「お、おう…よろしく頼む…あとファーストもう降ろしていいよ…」


「はい。お足元にご注意下さい」



 そういえばさっきからずっと抱っこされていたのを思い出して恥ずかしくなった昴は早々に地面に舞い戻った。それを確認したファーストは傅いている新しい仲間のとなりで同じように傅く。



「えっと、お前の隣にいる奴はファーストだ、これからは仲間だから仲良くやってくれ」


「ご紹介に与りましたファーストです。これからよろしくお願いしますね」


「ああ。創造主様に仕える仲間として粉骨砕身の覚悟で努力するつもりだ、よろしく頼む」



 さっそく若干堅苦しいイメージをもった昴だが、口には出さなかった。とりあえずはいきなり喧嘩とか始めなくて良かったと思っていたので、そんな野暮な事をいって気まずくなったら怠いからである。



「うんうん、とりあえずは仲良くやれそうだな!………ん?」



 そして、昴はあることに気が付いた。



「なにこれ」



 なんということでしょう。まっくろくろすけ(昴が5秒で考えた仮名)の足元にあった草花が見る見るうちに枯れているではありませんか!これには眷属の匠もびっくりです!



「これは…貴方の力ですか?」


「そうだ。これが創造主様から授かった力の一端だ」


「君たちのんきに話してるとこ悪いけど…なんか様子おかしくね?」


 クネクネ…


 そう…枯れたはずの草花がクネクネと蠢いているではありませんか!そしてそれを茫然と見ていた昴は小さな悲鳴を上げた。



「ヒェッ!」



 クネクネしていた草花の葉っぱ一つ一つに小さな目のや牙のような物が生え始めていた。さすがの昴もこれには恐怖。そしてついに…



「kiiiiiiiiiiiii…」


「シャベッタァァァァァ!!!」


「syaaaaaaaa…」


「マタシャベッタァァァァ!!!!」



 無数の口のような器官が生成され、気味の悪いうめき声をあげたのだ。あまりの気持ち悪さに昴の様子までおかしくなってしまっている。そしてそれらのお化け草(昴命名)達は皆一様に昴の足に頬擦りし始めた。まるで愛しい父親に甘える子供のように…



「ギョアアアア!!アッチイッテアッチイッテ!!」


「お前達!創造主様に馴れ馴れしく触れるなァッ!!」



 まっくろくろすけがまるで陰で作ったかの様な半透明の黒い剣を一閃するとそれらのお化け草たちは一斉に消滅した。やっとこきもい草から解放された昴はぜえぜえと肩で息をしている。



「ふぅ…キモかったぜ」


「創造主様にご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません。如何なる罰も受ける所存にございます。どうか私を罰して下さい」


「創造主様、どうか彼女の罰を私にも背負わせて頂けないでしょうか。きっと偉大なる創造主様に生み出されて気持ちが高ぶってしまっただけなのです…なので何卒私にも罰を…」


「そ、そんな、ファーストは悪くありません!悪いのは私です!どうか私だけに罰を!!」


「うわうっさこいつら」



 昴はげんなりした。それもそのはず、さっきまで自分で仲間とか言っていたのに今度は罰がどうのこうの言っているのだ。昴からしてみれば仲間ならそれぞれのミスを互いにカバーすることはあれど、仲間内で罰するなんてことはあり得ないからである。でもファーストがまっくろくろすけを庇おうとしている様子はとてもほっこりしていた。



「あのなぁ…まず第一にこんな事で罰したりしない!悪い事をしたと思ったなら、次からは同じ事をしない様に気を付ければいいだけだろ?」


「創造主様…」



 眷属両名は感動した。それもそのはずである、自らを生み出した神たる存在に無礼を働いてしまったのにもかかわらず、殺される訳でもなく…また罰される訳でもなく、ただ赦して頂けたのだ。彼らの感覚では不要であれば息をするように消される事が当たり前…といった感じなのだ、だからなんの罰も無いという事は……昴の意思に反して余計に忠誠心を加速させてしまうという結果になるのだ。



「なんて慈悲深いお方なんだ…それに比べて私は…せっかく生み出して頂いたにも関わらずこんな素晴らしいお方をご不快にさせてしまうなんて…」


「ああ~!めんどくさいよう~(泣)とにかくその能力は今後必要な時以外自重してくれればそれでいいから!!オッケーか!?よし、オッケー!終わり!!」


「こんな素晴らしいお方に仕える事が出来るなんて幸せですね……えっと…」



 ファーストは言葉を詰まらせる。まっくろくろすけの名前が分からないからである。そして似たような事をつい最近何回か経験した昴は速攻で名前を考える。脳みそフル回転だ。



「そういえば名前決めてないね。どうしようか…まっくろくろすけ…」


「今日からまっくろくろすけと名乗らせて頂きます。お名前を頂きありがとうございます」


「いや!まって、冗談だよ!ああ~!冗談通じね~!知ってたけど~!」



 そして昴の脳内にある電球が光る。そうだ、二番目だからセカンドにしよう。…恐ろしいネーミングセンスである。勿論ヒドイという意味で。



「セカンドでいい?」


「ありがとうございます。これからはセカンドとして創造主様にお役に立てるよう努力致します」


「良かったですねセカンド!…それにしても良い名前ですね!」



 すごい心の底からそう思ってそうな笑顔でそういう事を言ったファーストを見ればそれはもういいネーミングセンスをしてると勘違いしてしまうのが人間である。そして、その勘違いが招く事態はこうだ。



「(なんか喜んでるし異世界だとこんなもんなんだな!よ~し!次のヤツはサードにしよ!)」



 クソネーム地獄である。



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