パピエ・マシェ、あるいは神の声を聞く貴族令嬢 その6~奇跡の水の秘密をつきとめる?~
マチルデはレオポルトの礼儀や身なりが裕福な青年貴族のそれであることを確認してから、
「そうね、長くなるからカフェでコーヒーを飲みながらお話ししましょう。」
屋外にあるカフェのテーブル席についたエレナとマチルデ、フランツとレオポルトはコーヒーとザッハトルテ(チョコレートケーキ)や シュトルーデル(薄く伸ばした生地でリンゴやレーズンを包んで焼いた菓子)を食べながら、マチルデがエレナと出会った経緯や『奇跡の水』を作りだすきっかけを聞いた。
レオポルトが眉根を寄せたままマチルデに
「あなたが頭の中で疑問に思えば、その答えを『神の声』が答えてくれるんですね?」
まるで医者に深刻な診断を受けたときのように、マチルデが神妙な顔つきでうなずいた。
レオポルトは眉を上げて好奇心を抑えられないといった興奮した口調で
「ではあなたは過去や未来にわたるすべての知識を、即座に得ることが可能なんですね!
なんて羨ましい!」
驚嘆の声を上げた。
フランツが目を輝かせて
「僕も聞きたいことがある!
エレナが普通の水をかき混ぜるだけで、なぜ『奇跡の水』になるんだい?」
マチルデは馬鹿馬鹿しい!という風に肩をすくめ
「ああ。それはエレナが嘘をついてるだけよ!
だってその作り方はまるっきりデタラメだものっ!
かき混ぜるだけで『奇跡の水』が作れるなんて、私がテキトーに思いついただけ、エレナにいやがらせをするためだけの口から出まかせ!嘘の作り方だもの!
それを効果がある!って騒ぐなんて、『水』を使った人たちもとんだ大嘘つきねっ!
詐欺師の片棒を担ぐなんて!」
レオポルトの目がキラッと光り
「もう一度『神の声』に聞いてみてください。
こんな風に聞いてくれますか?
『水の中に細かい泡が入ることに何か利点があるか?
その水で洗うことで肌の不調を抑えたり、飲むことで体調にいい影響があるか?』
と。」
マチルデが半分目を閉じ、黙って考え込む時間が少しあり、突然、パチッ!と目を見開き
「はぁ?!えぇっっ??!!そうなのっ!
信じられないっ!!
ええっと、『声』が言うには
『細かい泡、特に毛穴よりも小さいウルトラファインバブルは、小さすぎて浮力が小さく、水中に長くとどまるので、肌の不調を抑える助けになる可能性があります。
高い洗浄力があり、泡が毛穴の奥まで入り込み、皮脂や古い角質、メイク汚れなどを吸着して浮かせます。
ゴシゴシ擦らなくて済むため、摩擦による肌荒れを防ぐことができます。
保湿・保温効果があり、細かい泡が肌に刺激を与えることで血流が良くなったり、肌の水分量が保たれやすくなると報告されています。
乾燥肌による痒みを抑える一助になるかもしれません。
注意点は、 汚れが落ちすぎることで、逆に乾燥を感じる人もいます。
また、皮膚疾患を直接「治す」ものではありません。
飲むことによる体調改善については、現時点では慎重に判断する必要があります。』
ですって!
へぇ~~~~!
じゃエレナが三日もかけて水に空気を混ぜてたのは無駄じゃなかったのねっ!」
感心したように呟いた。
それを聞いたフランツは呆気にとられてポカンと口を開け、
「水をかき混ぜる作業を三日間っ??!!
人間技じゃないねっ!」
レオポルトは苦々しい表情で
「チッ!
こう言っちゃなんだが、考えようによっては迷惑なことだ!
エレナのように人並外れた努力ができる人間がいるから、僕のような人間は問答無用に『怠け者』だとみなされるんだ。」
エレナは戸惑ったような表情で
「あの・・・・すいません。
私、コツコツと単調な作業をするのが好きなんです。
作業に没頭すると嫌なことを忘れられるし、成果が出ると楽しいので・・・。」
マチルデはエレナに対する僻みと嫉妬で憎しみが倍増したのか、殺意を含んだ目でジロッ!と睨みつけ
「何よっ!あんたなんて『聖女』じゃないっ!!
何の能力もない凡人よっ!凡人っ!
泥臭い根性論でたまたまうまくいっただけでしょっ!
『神の声』を聞ける私だけが!今度こそ奇跡の泉を掘り当てて、人々を助けるのよっ!!
そうすれば私がチヤホヤされるんだからっ!!
そうなったらあんたはお払い箱よっ!」
ん?と疑問がわいたフランツは
「ルルドやラ・サレットやノルデナウにあるという奇跡の泉は、ナノバブルのように実際に効果がある水なのかな?」
マチルデが少し間を取り、口を開く
「『神の声』が言うには
『「微細なものが含まれている」という共通点がありますが、その正体や期待される根拠は少し異なります。
結論から言うと、奇跡の泉は「活性水素」や「ミネラル」、そして「信仰・心理的効果」の側面が強いのが特徴です。』
だそうよ。
何にしても効果があるなら、奇跡の泉を探し当てて掘り出せば、民衆から崇拝される聖女になれるわっ!」
マチルデは野望に燃えて目をギラギラ光らせていた。
フランツが
「じゃあ、このあたりの湿地で探すのかい?
目星をつけ範囲を狭めないと、広大すぎて無理なんじゃないかな?
それに泉を掘り当てたからって有効成分を含むとは限らないでしょ?!
苦労がそれこそ『水の泡』になるよっ?!」
下手な洒落に眉をひそめたレオポルトは、すぐに気を取り直し不敵な笑みを浮かべると
「じゃ、とにかく山際まで行くことは必須だな。
ルルド、ラ・サレット、ノルデナウの共通点といえば、『奇跡の泉』が山中または山際にあること。
つまり、水が山の地下を通ることで有効成分が水中に加わると考えられるからね。」
それを聞いたマチルデはテーブルの上に身をのりだしてレオポルトの手をギュッ!と握りしめ、小首を傾げ
「まぁ!
いい考えね。
その際は、ぜひともご一緒してくださいな」
妖艶に誘うような、遠慮がちに懇願するような、でも『Nein!』と言わせない迫力で見つめた。
『マチルデの飼い犬』へのお誘いを丁重に断り、エレナとマチルデと別れ、レオポルトはフランツと帰路についた。
旧市街の下宿へと帰る道すがら、フランツが思い出したようにポツリと
「マチルデが『ウィーンの聖女』になれないように、『パピエ・マシェ』はどうあがいても本物の『漆器』にはなれないんだなと、実感したよ。」
レオポルトは肩をすくめ
「だからどうした。
どっちだっていいさ!
どちらも一級の芸術品だと言ったのは、君じゃないか。」
穏やかな春風が、草原に咲く小さな花を揺らして吹き抜けた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
『神の声』はグーグルAIの言葉を手直ししたものです。
現在では知識が即座に無料で手に入ることの凄さを実感しつつ、利用する人の倫理観や理解度が問われるなぁと思いこんな作品を書いてみました。
『知識』という『チート』がすべての人に平等に解放された現在、その中で何が『面白い』とされて生き残るのか?
予想できないだけに、楽しみでもあります。




