第11話 最終周。勇者はついに対峙する。そして未来へ。
最終話になります。
〇??周目〇
-女神ジュライヌ視点-
ピンポーン
あら?何の呼び出しかしら?
これって下界にある天導山の神殿からの呼び出しだわ。
下界で知られた女神でないと呼び出されないはずだけど、私ってそんなに有名になったかしら?
神Tubeって下界でも見れるのかしらね?
ピンポーン
ピンポーン
もう、うるさいわねえ。
わたくしは高位の神じゃないから、分身とかを顕現させられないから、自分自身で降臨しないといけないの!
準備があるんだから待って!
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!
わかったわよ!出るわよ!
つまらない用事だったら呪うわよ!
そこに居たのはフードを目深にかぶった人間。
「もう!うるさいわね!それで何の用?!」
「女神ジュライヌだな」
「何?呼び捨てって不遜よ!不敬よ!神への冒涜よ!」
「神か、ふふっ」
何笑っているのよ!
「確かに、感謝はしている。おかげで、私はこれまで生き延びてこられた」
「何のことかしら?でも感謝するなら貢物でも持って来なさいよ!」
「わかった、くれてやる!」
私の顔の前を一条の光が抜けた。
「あ…ああ…」
今、私は死んだわ。
神じゃなかったら、完全に死んでた。
ここでは神は簡単には死なない。
でも、最低でも1度、私は殺された。
願い事をしないで神を倒す力試しをする人間がいるって聞いたことあるけど、私みたいな弱い神をどうして倒しに来るわけ?
「返してもらう」
「何をよっ!」
「ケンタロー王子様をっ!」
フードを外したそいつは…勇者メルちゃんだった。
どうしてっ?!
-勇者メル視点-
こいつが!
こいつがケンタロー王子様をずっと苦しめてきた女神ジュライヌ!
「小さいときから、ケンタロー王子様のおかげで何度も救われてきた」
ざしゅっ!
女神を切り裂くが、女神はまた復活する。
「最初は嬉しかった。そして会いたいと思った」
どしゅっ!
剣を突き刺したままにしても、その横に移動して復活する。
「でもっ!そのうちわかった!あなたが会わせないでおこうとしていることに!」
げしっ!
足で蹴り飛ばす。
「そして戦いの高位女神ジュライネから真相を聞いた。貴様は自分の欲望のために私とケンタロー王子様を利用した」
ばしっ!
さらに殴り飛ばす。
「すぐケンタロー王子様をここに呼んで。そして、二度と私たちに関わらないで。もし拒むなら」
私は異次元箱から漆黒の武器を取り出す。
「これでとどめを刺すわ」
-女神ジュライヌ視点-
あれは神をも殺す剣『ラグナロクブレード』!
どうして勇者がそんなものを持っているのよ!
今の管理者ってたしか…戦いの高位女神ジュライネ?
「あいつ、そんなものまで貸したの?!」
「戦って勝ち取ったのよ」
あの目は嘘をついている目じゃないわ。
そして、本気で私を殺そうとしている。
くっ!
まさかこんなことになるなんて!
しかし甘いわ。
私がここに降臨するのにどうして時間をかけたと思うの?
保険をかけておいたからよ!
「どうした!早くしてよ!」
バチィッ!
踏み出そうとしたメルの足元で火花が散る。
「何っ?」
バチィッ!
バリバリバリッ!
ゴゴゴゴゴゴッ!
火花と稲妻と魔力の嵐。
もう動くこともできないわね。
この神殿はそもそも神域。
神はここでその力を圧倒的に増すことができるのよ!
ただし、違法な方法でリミッター解除をすればね。
これこそチート女神よ!
「そらっ!」
私はただの蹴りでメルを吹き飛ばす。
「さっきは痛かったわよ!」
げしっ!ばきっ!どかっ!
天界の規則では違法だけど、それを咎める罰則はないの。
神だもの。
何でも自由にできるのよ。
「せっかく私の動画のヒロインにしてあげたのに。もういいわ、死になさい」
「くっ!」
私は手のひらにメルを消滅させるに足るだけの魔力を集めましたわ。
「待てっ!」
声がして振り向くと、そこには宙を飛んでくるケンタローの姿があった。
まさか、『ケンタロー自動射出装置』が?!
それに、どうして一緒に女の子が?
-主人公ケンタロー視点-
リカから、メルが女神ジュライヌと戦うと聞いた。
さっき戦ったのと同じ場所だから合図があれば、指定したものを釣り上げてほしいと言われていた。
だけど、待っている間に、俺とリカは天界を経由して、その神殿に出現させられていた。
見ると、メルが女神に蹴り飛ばされ、殴り飛ばされている。
そして、女神の手のひらに何かの力が集まっているのを感じた。
「待てっ!」
俺は叫んで、女神の注意を引き付けた。
「ケンタロー!あんたももう用済みよ!」
女神はその力を俺に向けて放った。
しかし、俺の能力『下降回避』で軽くかわせる。
「そうくると思っていたわっ!馬鹿の一つ覚えねっ!」
すでに俺の目の前には黒い穴が開いていた。
コースを読まれていた?!
「じゃあねー。ケンタローはメルのあとで片づけてあげるわ」
穴に吸い込まれながら俺は釣糸を振るった。
「なっ?!いやああああっ!」
目の前にいるなら服だけでなく神すら釣れるのだ。
-女神ジュライヌ視点-
ちょっと!何するのよ!
女神を釣るとか冗談じゃないわ!
釣る?
まさか今までの全裸騒動はケンタローのせいなのね!
しまった!
つい興奮して、穴を閉じるのが間に合わないっ!
ここは…ケンタローをいつも待機させておく空間ね。
そして釣糸が手繰り寄せられていく。
もうケンタローが目の前にいるわ。
でも、これだけ近ければ私の攻撃も外さないわ!
…あれ?か、体が動かない?!
いつの間にか釣り糸が体中に絡みついてる?!
「愚者のチート能力は極めると神すら封じるんだな」
なによそれ!
そんな話知らないわよ!
「ねえ、ケンタローさん。この女神どうします?」
「とりあえずここから出たいけど、おい女神。俺たちを元の所に出せるか?いや、神殿の外に出せ」
神殿の外に出したら、わたしは弱い女神に戻るわ。
さっきの神殿内に戻して、チート女神の力で釣り糸を切るのよ!
「わかった、戻すわ」
開け!
「ふうん、ふんふん。へえ」
「ちょっと、何言ってるの?」
「なあに、ちょっと俺のヘルプさんとね」
ヘルプさんってなに?
「女神って、それぞれ象徴となるものを身に着けていないと、人間と変わらなくなるんだな」
「なっ?!どうしてそれを?!」
「あんたの象徴は、その翼の髪飾りだな」
どうしてわかるのっ?!
「ケンタローさん!この先に穴が!向こうに神殿の中が見える!」
「やっぱりだましたな!」
-主人公ケンタロー視点-
神殿に戻される前に、翼の髪飾りを奪う!
「えいっ!」
「ああっ!」
女神の体から何だか神々しさが失われた気がする。
それたちはそのまま神殿に戻り、ついに
どすんっ!
俺は久しぶりに地面に触れることができた。
「せめてもう少し格好良く着地したかったな」
「でも、ケンタローさんがかばってくれたから、リカは無事です」
「私が減速させたんですけど」
「メル。ありがとう」
「ああん、ケンタロー王子様っ!」
「王子様は恥ずかしいから、ケンタローでいいよ」
「はいっ!ケンタロー様!」
神殿に横たわる女神は不時着でピクピクしている。
傲慢な女神のあっけない最後だった。
-女神ジュライヌ視点-
…
…
はっ?
ここはどこ?
「目が覚めたみたいね。ここは天導山の中腹。モンスターのあふれるエリアの安全地帯よ」
目の前でメルがそう言ってるわ。
どういうこと?
私は神殿から連れ出されたってこと?!
「神を神殿から連れ出して、ただで済むと思ってるの?!」
「神じゃないから連れ出せたんだよ」
ケイトが私に見せたのは、私の神としての象徴の翼の髪飾り。
それが真っ二つにされていた。
「そんな…もう神に戻れない」
「ここであなたを外に放り出せばどうなるかしら?」
ここって…ここでって…モンスターの中に?!
「いやっ!神なのにっ!モンスターに喰われて死ぬなんて絶対に嫌っ!」
「私は、私たちはあなたに殺されたのよ」
「私たち?」
-最初のトラック事故-
女神ジュライヌはトラックにひかれそうな少女をケンタローに助けさせるため、神の力でクラクションを鳴らさせた。
プップー!
その音で振り向くケンタロー。
トラックの目の前にはひかれそうな少女。
駆け出すケンタロー。
キキーッ!
『危ないっ!』
少女を突き飛ばすケンタロー。
『ああっ!』
運転手は慌ててハンドルを切る。
『きゃああ!』
叫ぶ少女。
しかし間に合わずにケンタローは跳ね飛ばされ、
『わおーん!』
本来ひかれないはずの歩道にいる犬まで、飼い主もろともひかれてしまった。
無事だったのは、ひかれるはずだった少女だけ。
しかし、運命は彼女を死ぬものと決めていた。
だから、彼女は後続車にはねられて死んだ。
ケンタローは異世界へ飛んだ。
飼い犬と飼い主は死んで異世界に転生した。
メルとリカとして。
そして少女は…なぜか魂がケンタローの中にとどまり、ヘルプさんになった。
-勇者メル視点-
神殿で女神ジュライヌに殺されかけて前世がフラッシュバックしたわ。
これって、思い出さないほうが良かった気がするわよ!
何よ、前世が犬って!
リカが飼い主なの?!
しかも巻き添え死?!
もう何もかも完全に女神のせいよ!
「うぷ、メルって私の飼い犬だったんだ。ぷくく」
ああ、結魂で全部わかったのね。
でも、この世界での関係は違うわよ!
私たちは親友でしょ!
「お手」
「わん!(ぱしっ)」
「…」
「…」
「メル、冗談だから!お茶目な冗談よっ!」
「リカ、今度やったら、あんたをこのモンスターの中に放り出すわ」
-主人公ケンタロー視点-
『なあ、ケンタロー』
「何?」
『わたしのこと、助けてくれたんやな』
「そうみたいだけど、ごめんな。結局死なせて」
『ううん。でもな、ちょっとうれしかったんや。死ぬ直前に、それこそ、あっ、わたしの王子様やって思えて、幸せなまま死ねたんや』
「そう…」
『でもな、これからはずっと一緒やで』
「そうだな」
『だから、女神をちょっと強く抱きしめてくれんか?』
「は?」
-女神ジュライヌ視点-
いや、いやよ!死にたくないの!
喰い殺されるなんて最低なの!
ぎゅっ
え?ケンタロー?
私を抱きしめて、もしかしてかばってくれるの?
もしかして、私に惚れた?
くふふふ
『そんなわけあらへんで』
何?何の声?!
『わたしがヘルプさんや。あのとき車にひかれて死んだ少女や』
「え?あの時?あの時って、どうなったか知らないわよ」
『あんなことしておいて結果も見とらんのか。まあええわ。ほな、やるで』
「え?何を?」
『たくさんチート能力未設定分のポイントが余ってから、それをケイトの中にいるわたしも使えるんや。それで、こんなことができるようになるんやで』
しゅる
しゅる
しゅるるる
な?何?
私の中に何か入ってくる?!
ケンタローが私から離れたわ。
『どうや?わかるか?』
「私の心の中で声が?!ケンタローから移動したの?!」
『それだけやない。そろそろ視界もおかしくなって来ないか?』
「え?え?…あれ?あれどうして視界がすごく広がって…』
「どうや?心の声になった気分は?」
どういう意味?
『何のことよ』
「今、この体の主導権はわたしや。お前はわたしの心の声になったんや」
『なんですって?!』
-主人公ケンタロー視点-
「君はヘルプさんなのか?」
「うん。心の中にうるさいのがおるけど、まあ気にせんとくわ」
「ねえ、メル。ヘルプさんだったら、連れて帰ってもいいわよね」
「もちろんよ。そのうちその心の中の元女神の消し方を見つけてあげるわよ」
「ありがとうな、メルちゃん」
「ところで、ヘルプさんの名前は何?」
ヘルプさんは首をかしげる。
「思い出せんわ」
「私も犬の時の名前とか出てこないわ」
「私も。転生するとそういうのは思い出せないのかも」
「とりあえず、名前を考えようか」
うーん。
ヘルだと地獄だし、ルプ?
ルプルプ…プル?
「プルとか、どうかな?」
「ええなそれ!よし、わたしはプルや!」
「ところでなんで関西弁?」
「生まれはそっちや。あの時は引っ越してきたばかりで、道に慣れてなくてうっかり車道に出てまったんや」
「この世界では珍しい話し方みたいだから直したら?」
「え?可愛いのに」
「メルのセンスはさすがワンコ並みね」
「リカ…」
「親友です!メルは大好きな親友だから!」
-エピローグ-
-勇者メル視点-
私は本当の勇者になった。
そして、ケンタローとリカとプルとパーティを組んで、魔王を倒すために戦った。
回復役のプルが魔王の『精神崩壊』をくらってもうだめかと思ったら、全然平気でそれから私たちは逆転して、魔王を倒した。
「あれ以来、心の中の元女神が静かなのよね」
「魔王の『精神崩壊』のせいかな?」
「うーん。たぶん、無事だと思う」
「どうして?」
プルはケンタロー様の手を取ると自分の胸に押し当てた。
「揉んで」
「えっ?でも」
「いいから!」
もみもみ
『いやああっ!私の体にそんなことしないでっ!』
「やっぱり出てきた」
やっぱりじゃないわよ!
どういう試し方よ!
「ねえ、プル。私も試していい?」
「え?」
もみっ!
「きゃっ!」
ケンタロー様を横取りなんてさせないわ!
「『結魂』!」
「ああああっ!」
これで私とリカとプルの魂がつながったわ!
「これで3人は一心同体よ」
「いや、俺たちはもう付き合っているわけだろ?」
「だめ!もうケンタロー様には一瞬でも離れてほしくないの!だからこれからケンタロー様の恋人になる人は全部『結魂』でつなげるから!それなら誰と何をしていても、私に伝わってくるから!」
「独占欲の強いワンちゃんですねえ」
「リカっ!」
その時4人は知らなかった。
『結魂』で結び付けられたのは、元女神ジュライヌもそうだったことに。
『(いつか思い知らせてあげるわ!そのために、こうやって少しずつポイントをためているのだから!)』
元女神ジュライヌの隠した心の声は誰にも聞こえなかったが、その目的が果たされるのはいつになるのかわからないほど遠い未来の話。
-ある神の視点-
「おおっ!面白い動画があるじゃないか!『人間を地面に落とさないで転移させ続ける』って?」
古い動画だけど、こんなことで当時はすごく再生数取れたんだな。
俺もやろうかな?
おっ!丁度あそこに、居眠り運転のトラックと少女と、お人よしそうな少年が!
今までお読みいただきありがとうございました!




