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間違って転生したら悪役令嬢?困るんですけど!  作者: 山春ゆう
第一章 〜出会ってしまえば事件は起こる〜
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8.変なポーズで止まる人って必ずいるよね

「うぅ…ぐっ……ずびっ……わっ…わたしはっ…嬉しいんだよ…嬉し泣きだよ……」


 現在、孤児院に向かう馬車の中である。さて、誰が泣いているのでしょう。



「ダニロはっ……元々優しい子だっ……わかってたけど……こんなに嬉しそうっに!孤児院の子供たちに服を選ぶし!それに!ドロレスがあっ!うっ…うぅ……自分のものを人にっ…あげるぅ……っなんて……二人ともっ!私の自慢の子供たちだぁっ!!!」



 お父様よ。前の私はどれだけワガママだったんだ?私が想像している以上なのか?想像を超えてくるワガママだったのだろうか??

 ワクワクして昨日の夜は眠れなかったのに、お父様の顔面滝を見ていたらなんか落ち着いてきた。


「お兄様、渡す服はありましたかしら?」


「あぁ。母上や父上が日替わり人形のように毎日違うものを着せてくれてたお陰でたくさんあったよ。昨日あの後探し集めて父上に見せながら事情を説明していたら『これは初めてダニロが手を振ってくれた時に着ていたシャツ』『あぁこれはダニロが初めてフォークを使って食事をしたときのズボン』とかとんでもない記憶能力発揮し始めたから面倒になって全部持ってきた」



 親バカならぬバカ親だな。ま、子供が出来たら何をしても記念日だし何をしても記憶に残っちゃうものなんだろうな~。いいなー子供。私は結婚適齢期になりかけてたのに、年齢遡っちゃったから余計に婚期が離れていった感覚があるわ。あぁ悲しい。

 いいんだ、こっちで楽しく過ごすもん。





 公爵家から馬車で2時間ほどで教会についた。

 とても古く歴史のありそうな教会ではあるが、隅々まで手入れがされていてとても綺麗だ。小規模だけど豪華な美術館のようなつくりになっている。



 教会の中に入ると大司教様が笑顔で待っていた。

 真っ白な髪と髭を伸ばした彼は50代くらいだろうか。身長が意外と高く、優しい笑顔で私たち家族の事を見つめる。




「ジュベルラート公爵家の皆様、ようこそセントルース教会へ。いつもありがとうございます。神のご加護を」



 大司教様は微笑みながらそう言うと、大聖堂へと案内してくれた。ここで神様への挨拶とお祈りを捧げてから孤児院に行くそうだ。

 今までイヤイヤと孤児院に行かなかったため、当然教会にも行っていない。今回が初めてだった。隣のお兄様の真似をして祈りを捧げる。





 お祈りが終わり、お父様、お母様、お兄様の順に大聖堂を出たあと、私も出ようとしたら大司教様に呼び止められた。


「ドロレス様。神託がございます。お帰りの際お一人でこちらにお越しください」


「えっ、神託?私にですか?」


「左様にございます。内容まではわかりかねます。滅多にこのようなことはございませんが、先祖代々大司教を継ぐ者は神託が降りたときに、脳内に知らせが来ます」




 なんてこった!!それほぼ魔法じゃん!こんなところにも魔法が使える人がいたなんて!!転生してから初めてファンタジーな人に出会った!なんか嬉しい!




「ドロレスー、行くぞ」


 お兄様に呼ばれ、大司教様にお辞儀をして大聖堂を後にする。




 ───去りゆく子供たちを見ながら、誰にも聞こえぬ声で大司教は呟いた。


「これは今後のフェルタールに希望をもたらすものなのか、それとも混乱を起こすものなのか……。神よ、お戯れもほどほどにしてくだされ」───────







「みなさんこんにちはー!」

 大きな声で笑顔で叫ぶ。今までここに来ていなかったので、こいつ誰だよって目で見られる。うん、そうですよね、わかります。いきなり来て、いきなり大声で叫んでる貴族の娘とか、不思議な目で見られるよね。あははは。


 教会のとなりにある孤児院にやって来て、お父様とお母様が挨拶をする。次にお兄様、最後に私だった。



「あいつ誰だよ」


「初めて見る人だね」


 ヒソヒソと声が聞こえる。大丈夫ですよー、今までのドロレスのことを考えたらこんなの承知の上でしゃしゃり出たからね!


 孤児院は12歳までいるという話だったけど、最年長の12歳の子は仕事先が決まったらしく出ていったそうだ。なので現在は10歳から1歳までいる。

 お母様とお父様は、まだ話せなかったり歩くのがおぼつかない年齢の子を担当し、私とお兄様が3歳以上の子供たちを担当することになった。


 あぁ~~~~なんて素敵な光景!!元気な子供たち!これぞまさに天国!子供たちに囲まれて幸せぇぇえぇえぇえーー!


 おっと、正気になれ私。



「こんにちは、はじめまして。私はドロレス・ジュベルラートです。みんな『ドリーお姉さん』って呼んでね!今日はみんなに、新しい遊びを教えに来ました!」


「なに!あたらしいあそび!」


「おもしろいの?!ドリーお姉ちゃん!」


 小さい子達のキラキラな眼が私を見つめる。

 あーー顔が緩む!みんな可愛いなぁー。さっきまであんなに私の子と怪しんでいたのに、コロッと態度変えちゃって~!んーかわいい!




「今日みんなと遊ふのは、【だるまさんがころんだ】です!」


「だる…ん?」


「なにそれー?」


 次々に疑問の声が上がる。やっぱり存在してなかったか。

 私より年上のアンとサマンサという女の子がいるので、その子達を呼び、先に大まかな説明をする。


「アンに魔物役をやってもらいます」


 鬼は通じなかったので、魔物の設定にした。



「魔物役には壁の側に立ってもらいます。みんなは少し離れたところにいてね!魔物役は壁側に向かって大きな声で『だるまさんがころんだ』と言ってください。言い終わったら魔物役はみんなの方を向いてください!」


 アンが言われたように真似をする。飲み込みが早い。ちゃんと同じことができる。



「じゃあみんなは『だるまさんがころんだ』って言って魔物役が壁を向いている間、ゆっくり魔物役に近づいていこう!でも、魔物役が言い終わってこっちを向いたときには動いちゃダメ!動いたら魔物に見つかっちゃうからね!見つかると、魔物に捕まっちゃいまーす」



「なんだよかんたんじゃん!」


「わたしもできるよ!」


 子供たちがわいわいと騒ぎ出す。そうそう、最初はみんなこう言うの。そういうところ子供ってかわいい。



「それじゃみんな、私が魔物役をやるから捕まらないように頑張ってね!」


「「「はーーい!!」」」




 みんなが配置につく。なんとお兄様も混じっている。あのお兄様が、だるまさんがころんだやるの?!お兄様可愛い。




「だるまさんがころん、だ!」


 壁側からみんなの方に首を動かす。みんながピタッと止まる。しかし一人がぐらぐらして倒れかける。


「はい、ダニエル見っけー!」


 私は名前がまだわからないので、アンに横にいてサポートをしてもらう。


「なーんでだよー!俺耐えたじゃーん!」


「どう見ても動いたでしょ!」


「ほんと落ち着きないんだから~」


 周りの笑い声が聞こえる。



「ちなみに、捕まった人を助けたいなら、捕まってない人の誰かが魔物に触らないと助けられませ~ん。全員捕まっちゃったら魔物の勝ちでーす!じゃ、いくよー!『だるまさんがーーーころんだっ!』」


「─────うは!」


「はい、ジョン見っけ~!」


「くっ、いけると思ったのに」


「そして被害を受けたお兄様も動いたので見っけ~!」


「僕もか……」


 いるんだよねー、止まった瞬間に変な体勢にする子!そして回りを巻き添えにする子!

 幼稚園でやってたときもみんなそれぞれ個性的な動きをしてて楽しかったな。


 ………みんな元気かな。

 私のこと、忘れちゃったかな。



 いや、やめよう。どんなに嘆いてももう戻れない。これから先の事を考えよう。








 こうして、私たちは2時間近くだるまさんがころんだ地獄を味わった。












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