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間違って転生したら悪役令嬢?困るんですけど!  作者: 山春ゆう
第一章 〜出会ってしまえば事件は起こる〜
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9.孤児院へプレゼント

 その後は、私とお兄様のプレゼントを渡した。私のプレゼントは女の子たちに大好評で、普段子供たちの面倒を見ている1番年上の女の子のアンが一目散にリボンを選び、下の子からブーブー文句を言われてたな。だって年上とはいえまだ10歳だもんね。日本じゃまだまだ子供だもん。

 みんなそれぞれ納得した好みのリボンでわいわいしていた。うんかわいい。子供たちは天使。


 さらにそのあと、5着のドレス……とはいっても前のドロレスのゴテゴテデザインなんだけど、それを見せたらもうそりゃあね、好きなアイドルが目の前に来た並の奇声で「きゃーーー!お姫様だぁーーー!」と喜んでくれた。

 小さい子達はアンやサマンサにお願いしてドレスを持って孤児院に入り、試着会をやり始めた。



 そんなドレスに興味のない男の子たちには、お兄様から服の贈呈がされた。案の定「こんな高そうなのもらってもいつ着るんだよ」なんて言っていたが、予定通りお兄様が

「はい、じゃあ切ります」

 と言っていきなりズボンの裾をザクザク切り始めたもんだから男の子達はギョッとして目を見開いていたものの、自分達もやりたくなったのか、ハサミで好きな形に切りはじめた。


「見て!俺のはギザギザにしたの!」


「僕はおしりのところ丸く切ったの!」


「おまえそれ尻が丸見えだぞ」


「はっ………!」


 というやりとりしてる。かわいいなー。見てるだけで目の保養になるってこういうことか!


 お兄様は50着ほど持ってきていたので1人2着ずつ配り、残りはまた成長に合わせて渡すらしい。

 そしてお兄様がね、ホクホク顔なんですよ。子供達に質問されて照れながらも答えてる姿がもう素敵。転生した時は愕然としたけど、こんなにも子供たちに囲まれて過ごせるなら私はとても幸せーー!!




「ねぇ、私と同じ歳って聞いたんだけど、あなたの名前教えて」


 一人でズボンやシャツを眺めていた男の子に声をかける。


「……ウォルター」


「ウォルター……じゃあウォルトね!私と同じ歳の子はウォルトだけみたいだから、仲良くしましょう!あなたは切らなくていいの?」


「このままの長さでちょうどいいから大丈夫」


 素っ気ない態度だが、一気に2着も服を貰うことなんてなかったんだろう。まじまじと服を見ている。ざっくばらんに切られた真っ黒な髪は、前は目にかかるようにのび、後ろは肩に垂れるようにのびている。深めの紫色の瞳は日本人には慣れ親しんだ黒髪との違和感を感じさせるも、幼さが消え始め、整いだした顔立ちにより美しさを感じさせる。


「着ていた服をあげるなんてずいぶん余裕な生活なんだな、貴族様は」


 おっと。これは皮肉かな?私を怒らせたいのかな??ふっふーん、残念!私はもう中身が大人なのよー。そんなのにいちいち反応しないのよ。

 まぁ確かに、公爵家は寄付をしているけどそこまで贅沢な寄付はしていない。必要最低限の寄付にして、自らが孤児院を出て稼ぐ意思を持たせる目的がある。


「そうね、余った服は沢山あるわ。アクセサリーだって食事だってある。それが人の上に立つ貴族ってものよ」


「ふん、俺らの生活なんて平民にすら敵わないしな。俺が小さい頃は盗賊に入られて、手足を縛られて金品を奪われたことだってあるんだぞ。殺されるかと思った。お前達はそんな時でも優雅にお菓子でも食べてたんだろうな」


 お父様から被害は聞いていた。私がもっと小さい頃、たまたま大人達が孤児院と教会を離れた一瞬のスキに盗賊に入られ、恐怖のせいで動けなくなった子供達を縛り、寄付されたお金や食べ物などを持っていかれた。もちろん、その後は公爵家が盗賊を見つけ捕まえている。そんなことはきっとウォルターは知らないのだろう。


「その場で守ってくれる人なんていないんだよ。だから、俺はこの孤児院を守るんだ」


 私の事を敵対していたウォルターは、この言葉を発するときだけは、私の目を射抜くような強い視線を向ける。



「どうやって守るの?」


「強くなるんだよ。決まってるだろ」


「何を強くするの?」


「力をつけて盗賊に勝つんだ」


「具体的には?」


「……剣とかだよ!」


「あなた、剣持ったことあるの?」


「……木刀で練習している」



 うーん。強くなりたい気持ちはわかるけど、所詮子供は子供だ。意思自体はきっと揺るがないものだろうけど、それに対しての対策を意地で何とかしようとしている。どうしたものか。


「ウォルトは木刀で本当に勝てると思っているの?」


「……っ!いずれは!剣を持って退治するんだよ!決まってんだろ」


「剣を持つっていうことは、その盗賊達を【殺す】ってことよ?人を殺すのよ?恐怖を与えられたあなたが、今度はあの盗賊に【殺される】という恐怖を与えるの。剣を刺したら血が出るわ。盗賊達は痛みで叫び続ける。その状況になるのがわかってて、あなたはそれでも人を殺せるの?」


「………それでも!俺はここを守りたいんだよ!」


「剣術も知らない、体力もつけていない、練習する相手がいないただの木刀を振るあなたに負ける人間が存在すると思っているの?」


「じゃあどうすればいいんだよ?!それしか方法がないだろ!」



「あなた私と同じ歳よね?だったら、14歳になる年に学園にはいりなさい」


「は?学園?そんなもの必要ないだろ。第一、孤児院の俺には別世界の話だ」


「いいえ、平民に向けた前試験で成績が優秀な者は入れるわ。毎年数十人が応募してる。実際入れるのは5人いるかいないかよ」


「だから、なんで行かなきゃならないんだ?」


「あなたはまず、意思が強い。そこは認めるし私は尊敬するわ。だからこそ学園でこの国の常識、マナー、貴族との会話、そして剣術を学びなさい」


 学園に行けば、嫌というほど様々な人に会うだろう。自分の家の権力を振りかざす者、強かに状況を判断して裏切る者、本気で信頼できる者。その人々を見極める目を育ててほしい。


「騎士になる道もある。騎士にならなくても、学園では基本的な剣術から実践形式の対人戦も出来る。あなたは悪い奴から孤児院を守りたいのよね?」



 いくら木刀を振り続けていても、真剣の重さでの動きや、いざ、人が来たときに切りかかる覚悟と経験がなければ退治なんてできない。



「でも、学費なんて俺には……」


「あなたがもし上位3位以内で入学出来るのなら、公爵家から出しますわ。お父様に話してみるけど、成績が優秀なら納得するはずよ。お金持ちを見くびらないでちょうだい」



 あとは、ウォルター自身がどう結論付けるか。すべては孤児院のため。それが彼の目的だ。ならなおさら、ここで剣を振っているだけと、様々な経験でより高みを目指して強くなれる学園のどちらを取るのか。お金の問題さえないのなら、道は一つしかない。




「俺みたいなのが……学園に行ってもいいのか?俺は孤児だぞ?」


「ウォルト。あなたは【孤児院を守りたい】という強い意思があるのよね?なら大丈夫よ!学園なんて、目的も何にもなくただ入れって言われた貴族の子供が沢山いるのよ?そんな子達よりあなたの方がよっぽど素晴らしいわ!だからちゃんと勉強をしておきなさい。そして、今は体力をつけるために毎日走り込んでおくといいわ!あと筋トレね!」


「お前……どの立場から言ってるんだよ……まだ学園にも行ってない子供だろうが」



 そうだった、私まだ7歳だったわ。ウォルターは苦笑いのような顔をするが、最初の頃の敵意むき出しな目付きはなくなった。


「ウォルトは孤児院を守りたいのよね?じゃああなたはその場で直接的に孤児院を守ってあげなさい。盗賊からも、悪い奴らからも目の前の敵に立ち向かいなさい。私は未来ある子供たちを権力とお金で外から守ってあげるわ。私自身にはまだ力がない。だから学園で沢山の事を学ぶのよ。そして、間接的だったり裏から何かしようとする奴らからここを守って見せるわ。私とあなたは同じ意思を持つ同志よ!」


「同志……お前も学園に行くのか?」


「私の名前はドロレス、呼び捨てでいいわ。ここは立場もなにも気にしない場所だもの。子供の戯言だと思って。そしてあなたは学園の入学前試験で1位を取りなさい!学園で待っててあげるわ!」


「えっ…さっき3位以内って……」


「頑張るのよ!」




 パッ。

 右手を差し出した。これからは同志よ。家のしがらみなんて関係ない。何の罪もない子供を守るのが大人の使命よ!いや私今大人じゃないけど!大人だけど大人じゃないの!でもお金と力はある。だったらその力を自分自身で使えるようになったら、正しい使い方をするだけよ。



 

「よろしく!」


「……よろしく」


 バシッ!

 がっつりと握手を交わした。











 ん?








 握手をしたウォルターの体の周りにうっすらとした金色の縁が見える。縁っていうか何これ?オーラみたいな?



「なにこれ?!」


「えっ、俺の手が金色……?」


 思わず手を離す。光は消えた。


 他の子供達は洋服を切るのが終わっていて、離れたところで遊んでいる。誰も見ていなかった。



 もう一度握手をする。



「やっぱり、うっすらと見えるよな……なんだろこれ」


 こんなの、ゲーム内にあったっけ?こんな魔法みたいなこと、魔法のなくなった世界で私が使えるとか









 …………………………まずくない????





 えっ、これもしかして【魔法が使える子が再来した!国の脅威になる!】とかいって王宮に連れられて監視下に置かれて一生を過ごすとかそんなやつ?まずくない??ねぇ、これバレたらやばいやつだよね??



「ねぇウォルト。私たち同志よね?これ、誰にも言わないでくれる?もし他の人に知れ渡ったら、私は外に出られなくなって孤児院を守れなくなるわ。そうならないよう、絶対に秘密よ?」


「二人だけの秘密……。わかった、誰にも言わない」



 ウォルターが初めて微笑んだ。見慣れた黒髪と違和感のあった紫の瞳はもう私の中ですっかり馴染んでいる。なんだ笑うとかわいいなぁ。誰にも言えない秘密ってワクワクするよね。というか本当に言わないでね、私の命がかかってるかもしれないからね!




 だがしかし、どこかで見たことある顔なんだけど……黒髪だから懐かしいだけかな?





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