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間違って転生したら悪役令嬢?困るんですけど!  作者: 山春ゆう
第一章 〜出会ってしまえば事件は起こる〜
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51.お小遣いは計画的に

 3月も終わる晴れた日。


「みんな、掃除道具は持った?」


「オッケー!」


「大丈夫だよ!」


 今日は孤児院の子供たちを、ロレンツの新しく開く店に連れてきていた。


「あらあら、こんなにも可愛くて元気な子供たちが掃除をしてくれるのね!私、お昼ご飯頑張るわよ」


 横ではロレンツの妻、ハンナが張り切っている。


 なぜ連れてきたかと言うと、店内の掃除をさせるためだ。もちろんお駄賃つき。外装などは専門の人にやってもらい、店内の掃除は子供たちにやらせて良いかロレンツに確認すると、二つ返事で返してくれた。特にハンナが喜んだ。


「ドロレス様、アンとサマンサの就職先を見つけてくれてありがとうな。孤児ってだけで働き先が見つからないのは何となくわかってたからさ」


 ウォルターが雑巾を手に持ちながら話しかけてきた。


「いいえ。やる気のあるものを雇うのは当然よ。勉強の調子はどう?ちゃんとやってる?」

「もちろん。3位以内を目指してるし、入れなかったらそれはそれで洒落にならない……」


「あらあなた、とっても男前じゃないの。あなたも孤児院出るならうちで雇ってあげるわよ?」


 横からハンナが会話に入ってきた。確かにウォルターは顔立ちがとても綺麗である。看板娘ならぬ看板息子になりそうだ。


「か、考えておきます……」


 ハキハキとしたハンナの圧に負けてる。それじゃいつまでも孤児院を守れないわね、ふふふ。





「みんな、ちゃんと働けばお小遣いあげるからね!遊んでいるのが見つかったらチェックしてどんどん減らします!少なくていい人は遊んでもいいわよ?では始めてください」


「絶対遊ばないもん!」


「俺ここめっちゃ綺麗にするから」


 もちろん満額あげるけどね。『ふざけると減る』というマイナス要素がないと遊んでしまう可能性も十分あるので、一応口にはしてみた。彼らにとって、働いてお金をもらうことを知るには良い経験になるだろう。

 アンとサマンサは無事に引っ越し、一緒に手伝っている。ダニエルは孤児院で勉強を頑張り、身の回りのことを一人でやるように努力していた。少し大人になったな、ダニエル。



「子供が出来なくてずっと諦めていた光景を目にすることが出来て本当に嬉しい。アンやサマンサもとっっても良い子だし、もうすぐあそこにいる元気な男の子も来てくれるんでしょ?嬉しすぎて洋服たくさん縫ったわよ。ドロレス様、私にこんな機会をくださり、本当にありがとうございました」


「こちらこそ、色々とロレンツに迷惑ばかりかけてしまったわ。そのかわり、試食が沢山お腹に入ったと思うので許してちょうだい?」


「ええ、とても美味しい試食を頂いたわ。おかげで少し太っちゃったわよ」


 そういうと、ハンナはお腹を手のひらでポンっと叩いた。素敵な人だわ。おおらかで優しそうで。ここならアンもサマンサもダニエルも上手くやっていけそう。



 私は住居スペースの方で、ハンナとロレンツとアンの4人で料理をしていた。


「これを、溶かす?」


「そうよ」


 ロレンツの手のひらには、茶色いものがある。


「これは【味噌】といって、汁物を作るときに溶かすのよ。平民のみんなはお米を食べるんでしょ?間違いなく合うから」


「へぇー……んー……わかりました」


 あぁこれ全然信じてないやつ。


 鰹節での出汁の取り方も教えた。あの香りに『懐かしい香りがする』と3人は言っていたけど、それ多分この世界を作った人が日本人だからよ。潜在的な何かだから。


 野菜と肉をたくさん煮込んだ鍋に味噌を溶き、味を見る。この間おばあさんの店で買った醤油、酒、ごま油も少量加えてさらに煮たら完成だ。



「出来ました!【豚汁】です!」

「これが……おいしいのかな?」


 美味しいに決まってるじゃない!味噌汁でも良いかと思ったけど、野菜と肉をたっぷり入れればおかずとしても充分成り立つのよ。



「んーーーこの香り!この味!味噌最高」


「おぉ!このごま油で香ばしさが追加されて美味しい。豚肉の旨味も出ているし、野菜がたくさん入ってるから普通のスープに比べて満腹になりそうだ」


「これは確かに、お米と豚汁だけでも食事になるわ。しょっぱさも仕事中の人たちには良いエネルギーになるわね。まだ寒いこの時期には最高よ」


 好評だわ。豚汁定食として出せる。栄養バランスも最高だし、野菜を薄く小さめに切れば具が少ないなんて感じないだろう。

「大量に作れるので、注文を受けても鍋からすくうだけでいいわ。手間も少ないしね」


「確かに。これは早速1種類目に入れよう」


「賛成!」


 あっという間に豚汁定食が完成だ。今日の昼食はこの豚汁だけしかなかったものの子供たちは美味しいと大喜びで、人参が食べられない子も普通に口にしていた。よしよし。


「アンは何か要望はある?」


「子供が喜びそうなものってないですか?」


「……お子様ランチか。良いアイデアだわ」


「「おこさまらんち?」」


 ファミレスのような、たくさんメニューを乗せるのはまだ無理だとしても……白ご飯にハンバーグ、フライドポテトに目玉焼きくらいなら出来る。それにあの小さな旗を作ってご飯の上に!あ、それならハンバーグは大人のも作って、ご飯の上にハンバーグ、目玉焼きを乗せてロコモコ丼出来るじゃん!あらかじめ焼いておいて、注文が入ったら温めて……。


「ドロレス様?聞こえてますかー?」


 はっ!理想がどんどん溢れ出てきて意識が飛んでた……。



「ご、ごめんなさい、ついいろんなアイデアが浮かんでしまって周りが見えなくなっていたわ……」


「ドロレス様のアイデアが失敗したことは今まで一度もないので大丈夫ですよ。それよりその頭の中にあるものを私たちに教えてください」


「ええ。紙に書くわ」


 こうして次から次へと浮かぶアイデアが止まらず、ロレンツ夫婦もアンもかなり引いていた。私、大丈夫かな。





「【ランチタイム】はまず5種類。汁物は豚汁定食。肉系はロコモコ丼、しょうが焼き定食、ハンバーグ定食。軽めの人のためにサンドイッチセットね。それとお子様セット」


「ロコモコ丼もしょうが焼きもよくわからないけど、まぁドロレス様が言ってるから大丈夫でしょう。レシピも貰ったし」


「話を聞く限り、お子様セットが楽しみです」



 これでランチは決まりだ。あとは仕入れや材料確保のルートを確保してもらってひたすら練習あるのみ。


「【カフェタイム】は、うちで作っていたプリン・ロールケーキ・フレンチトーストだけで良いと思うわ。その代わり飲み物の種類を増やせばまた次も別の種類を飲みに来てくれると思う」


「メレンゲクッキーはサービスで出して、帰りの会計の前のところに持ち帰り用として販売しても良いし」


「それはいい。サービスで出されて気に入ったら買う。コストがかかるお菓子ではないから採算が取れるな」


「この料理を早くしてみたいです!開店まで待てないですー!」


「うふふ、わたしもとーーっても楽しみなの」


 なんたって日本でよく作って食べていたからね!私も待ちきれないわよ!試食のときには呼んでもらおう!……あれ?これってお父様と同じじゃない?







 孤児院の子供たちは思っていた以上に真面目に掃除をし、あっという間に綺麗になった。


「みんなありがとうね!すごく綺麗になったよ!ほら、お礼にお菓子を持って帰りな」


 そう言ってハンナは、紙に包んだクッキーを子供たちに渡した。


「金もお菓子ももらえてラッキー!」


「言い方!」


 子供たちってほんと……素直よね。





 まだ太陽が頭の上にある時間だったので、帰りはみんなで街を散策した。

 孤児院でもパンが数個買える程度のお小遣いを渡したことはあるみたいだけど、今回子供たちにしては少し大きな金額だ。喜んでいる子もいれば、持っていることが不安な子もいる。


「これであの店のパン何個買える?」


 一人の男の子が店の前に並ぶパンを指差す。


「んーと、80個くらいかな」


「じゃあ80個買う!」


「やめなさい」




 ……これは金銭感覚の勉強もしないとダメだ。


 最終的に、半分貯めて半分を使うと決め、各々好きな食べ物や安いアクセサリーを買っていた。お小遣いをもらって、それを考えながら使う子供たちの様子を見て、ほんわかした気持ちになりながら孤児院に送り届け、帰宅した。






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