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間違って転生したら悪役令嬢?困るんですけど!  作者: 山春ゆう
第一章 〜出会ってしまえば事件は起こる〜
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49.今後の料理店開発に向けて

「ダニエル?」


 私たちが話す部屋のドアが開き、私より2つ年下のダニエルがこちらを見ていた。


「アン姉ちゃん、なんで出ていくの?」


「私はもう12歳だから出ていかなきゃいけないのよ。それに仕事先が見つかったの。とても嬉しいわ」


「………………やだ」


「ダニエル?わがまま言わないで」


「やだ!アン姉ちゃん出てくの嫌だ!」


 ダニエルがそう叫ぶと、ロレンツの方に向かって走ってきた。そしてロレンツの服に掴みかかる。しかしロレンツはびくともしない。


「ダニエルやめなさい!この人は私のことを雇ってくれるのよ!」


「なんでだよ!なんでアン姉ちゃんを連れていくんだよ!」


 アンが何度止めてもダニエルはロレンツから手を離さない。

 アンはこの孤児院で母親のような存在だった。時には誉め、時には怒り、そして慰める。親のいない子供たちにとっては、アンはかけがえのない人だ。


 アンもそれをわかっているからこそ、強く叱れない。いたたまれなくなっているのになかなか言葉が出ない。




 だれも何も言えない状況で、あっさりとした答えが出た。



「じゃあお前もうちで働くか?」


「えっ?」



 思いがけない言葉を発したのは、ロレンツだった。


「えーと、ダニエルだっけ?お前はアン姉ちゃんといたい。俺は男手がほしい。ダニエル、お前がちゃんと働くなら、うちで雇ってやっても───」


「行く!行く!俺も行く!」


 ロレンツが言い終わるのも待たずにダニエルは返事をした。


「ただし。計算の勉強を必ずやれ。それが出来ないなら雇わない」


「やる!やるから!だから行く!」


 まぁ!私があれだけ言ってもそこそこにしかやる気が出なかったのに、数秒でダニエルを落としたロレンツ。凄すぎる。

 しかし、子供相手だとロレンツも見た目通りの男らしさが出るわね。自分のこと【俺】になってる。




「ロレンツ、平気?一気に3人も……奥さんにも許可を取らなくて大丈夫?」


 いきなり三人に物事を教えるのは大変だ。しかも相手は子供。相当時間がかかるのでは?


「うちは子供がいないんですよ。欲しかったんだけどどうしても出来なくて。妻は元々大家族を夢見ていたから、一気に3人来たらむしろ大喜びです。喜びすぎてしばらくは俺の言葉なんて聞こえなくなると思います……」


 大きな体とは反対にだんだん声の小さくなるロレンツ。ここでも尻に敷かれているのか。でもそっか、それなら安心かぁ。


「じゃあやることは決まったな。アンとサマンサは3月中に引っ越して開店前の試作や事前準備。サマンサは計算の勉強もね。ダニエルは力仕事も多くなるだろうからいっぱい体力をつけて、計算の勉強を必ずやりなさい」



「「「はい!!!」」」



 思わぬダニエルの登場にビックリはしたけど、丸く収まって良かった。あとは料理か。


「ロレンツ、何を出す店にするかは置いといて、街の店を見に行かない?何の調味料があるのかがわからないと私も何も開発できないのよ」


「そうですね。確実にお嬢様の意見は採用するでしょうし」


「あなたもう公爵家辞めたんだからドロレスでいいわよ」


「じゃあドロレス様で」


「よし、では見に行こう」








 街中は小さな店が連なっていて、まるで日本の商店街のようだった。野菜の店や調味料の店、ミルクやチーズを扱う牧場経営の店など、それぞれ専門店のような形で並んでいる。


 道を歩いているだけでも何があるかわかるように、商品は店の手前側に並び、奥に店主が立つという、日本の個人店の肉屋みたいなものだわ。


 前にフレデリックが言っていたけど、貴族はパン、平民はご飯が基本。もちろん平民もパンは食べるけど、ご飯とおかずがメインだ。だから、ご飯に合うおかずを作らなくちゃいけない。




 ふらふらと道を歩いていると、一瞬懐かしい匂いがした。え、まさか?ここで?嘘でしょ?こんな洋風ゲームに存在する?

 頭の中で疑問符ばかりがぐるぐると回っていたが、匂いの元を辿った先にあったのは、紛れもないあれだった。


「醤油……」


「おや、よく知ってるね。遠い国から仕入れているんだよ」


 そう、醤油だ。いや醤油だけじゃなく、みりんもある。鰹節も昆布もある!!!しょうがもあるじゃん!味噌も!!ごま油!なんてこと!!この店最高じゃないの!!

 日本食が!!

 た べ ら れ る!!うぉぉあぉぉああぁぉぉお!!!








 スーハースーハー……

 ゴホン、数年ぶりの日本食に大興奮してしまった。落ち着け私。





「うちはあんまり人気ない店だから、ゆっくり見られるよ」


「ありがとうございます!」


 そう言って店主のおばあさんは奥の席に座った。なんか駄菓子屋にいる気分だ。


「ドロレス、見たことない調味料だけどこれでなにか作れるのか?」


「ええ!お父様、私たち貴族はパンを食べるのであまり使うことはないのですが、ご飯を食べる平民にはとても最高の調味料なのです」


 手に持っていたペンと紙に料理の構想を書く。どんどん出てくる日本で馴染みの料理。楽しみすぎる。ご都合主義って最高じゃん!


「店主さん、これ、大量に仕入れることって可能かしら?」


「大丈夫だよ。1か月前に言ってくれれば注文数を用意できる。だけど、売っといて言う言葉じゃないけど、本当にこれを使うのかい?あまり使われない調味料だから、買ったあとに返品は困るよ?」


「ありがとう、じゃあ詳しく決まったら連絡するわ。とりあえず今日はこれとこれと……あとこれと……これも、こっちも買います。大丈夫よ!絶対に返品しないから」


「まぁ期待しないでおくよ」


 ハハハと笑ったおばあさんはたぶん信じていない。これからそんなにのんびりしていられなくなるわ。私がそうさせる!この店にあるものは、日本食の基本調味料なんだからね!









 街から帰った次の日、お父様とロレンツ、そして孤児院からアンとサマンサを呼んだ。




「うひゃー、貴族様の家ってお城みたいですねー」


「サマンサ静かにして。怒られるじゃん」


「大丈夫大丈夫、聞こえてないよ」


 いや聞こえてるよ。そんなことじゃ怒らないけど。



 応接室へ案内し、早速店の構想を話し合う。


「ロレンツはどういうのを理想としているの?」


「んー、私は昼食も夕食も食べられる店が理想ですが、漠然としています。こんなにトントン拍子で話が進むと思っていなかったので」


「酒を飲む店にするのか?」


「それでもいいんですけど、女の子が客席を回るのに酒飲みの相手はきついかな、と」


「確かに。それに、酒を飲む場所だとチマチマした料理を種類豊富に出さなければいけないわ。店の規模と従業員を考えたら無理だと思う」


「私は孤児院で料理も手伝っていたんですが、多くの人に食べてもらうならば、注文を受けてから焼くだけ、鍋からすくうだけなどの料理がいいかと」


「確かに。昼食の時間は仕事の間だから回転率も高くなるし、そこで焦るのは死活問題だ」


「メニューは多くても5種類までですねー。多すぎると選ぶのに時間がかかって回転率悪くなりますよー。あと、金額は統一するか、キリのいい値段設定で」


「ロレンツはデザートは作らないのか?」


「あ!出来ればデザートも作りたいですね。女性には喜ばれると思います」


 なんだか楽しい。立場を関係なく意見を言い合って、より良い案内が見つかるなら最高だ。





 たくさん意見が出たのをまとめる。


「一度まとめます。現在の案は【1案→昼食、休憩挟んで夕食、酒無しで夜遅くまでやらない】と、【2案→昼食、カフェタイム、夕食、酒は無しで夜遅くまでやらない】の2つが有力ですね」


「2案が理想だけど、そうなると休憩時間がなくなるんだよな」


「1案だと甘いものを出すタイミングがない」


「うーん、それならこれはどうかしら?店が落ち着くまでは【昼食、少し休憩して【カフェタイム】のみ。慣れてきたら【酒無し夕食】をやり始めればいいのよ」


「そうですね。最初は仕事に馴染むまでの時間がかかると思うので、短い時間でも集中的に出来て、早く仕事を覚えられるかもしれないです」


「これなら夕方に売り上げ計算しても遅くならないし、とりあえず最初はその案でいいと思いますよー」


「なんだかこの子達の方が行動力と判断力があるな……」


 お父様がポツリと呟いている。ロレンツが発言する前にどんどんと二人が話をすすめる。彼が奥さんに尻に敷かれているのが何となくわかった気がする。



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