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寝ているだけで代理人が世界征服してしまった話  作者: ルリア
第5章 日記編
87/195

前書き2

僕の歳は?

と訊かれても僕には答えようもない。


ただ、

この度の肉体年齢と訊かれれば、

29歳とか、

今の9歳とかはいえる。


人はそれ自体が一つの宇宙そのもので、

肉体を得て地表で生きる試練を、

400年周期で繰り返す。


浦島太郎や、

仏教の竜宮、

インドの輪廻、

仙道の殺劫や、

色んな説話で世間にも何となく伝わっているけれども、

僕たちは何故か、

定期的に人の形で数十年から百年前後を過ごす定めにある。


ただ、

それもここ五十数万年は少し様相が違ってきた。


僕が「節子」を作ったからだ。


増えても増えても一向に僕と同じ姿の宇宙(にんげん)が生まれてこないから、

それならば、と人工的に作り上げたのが「節子」だ。


人間の一部と地上の一部を材料として、

いわば人造人間として作り上げたのがペイガン。


その節子から始まったペイガンは猛烈な勢いで繁殖して、

22世紀初頭では100億人を突破しそうだ。


対して、

僕たち人間の総数は2億人。


人造人間としてペイガンは優れた体力と、

労働と奉仕に特化した知能をもっていたけれども、

人間が完結した宇宙として存在するが故にもっている創造性や、

万物に作用する霊子力とかは持っていない。


日常生活上では、

各種占いなどの演算的卜占を好んだり、

他人や思想に奉仕することを好んだり、

特定の閉鎖された状況でとても力を発揮したり、

他者の命を軽視したりする。


そして、

全ての製造物に使用期限があるように、

彼らの使用期限は約51万年だ。


要するに、

彼らはあと1万年もすると、

その遺伝子が機能不全を起こして絶滅する。


まぁ、

その前に彼らを材料にして、

新しい人間(うちゅう)を作り出すこともできるけれども、

それは僕の気分次第だ。


そうそう、

それこそ「夢」の範疇だ。


「欲求するものは夢をみる。欲求しないものはみない」(注)というけれども、

正に宇宙が欲求したが故に人造人間(ペイガン)は生まれた。


ではその欲求はどこから来たのかといえば、

それこそが僕の夢からきたわけだ。


精神治療師にいわせれば、

夢は精神の平衡を取り戻すために重要な要素らしい。


いわば悲劇を回避し、

極楽を実現するための手段ともいえるわけだ。


では、

この世界(うちゅう)では、

これは誰の夢なのだろうか?


この世界では全ての世界が僕の中にあり、

僕を含めた全て世界が誰かの世界の中に入っている。


イスラム教えの聖典(クラーン)には、

一滴の水に世界の全てが入っているというけれども、

現実の今、

僕の中には二億の人間と一種のペイガンが入ってる。

僕以外の人間の中にも二億の人間とペイガンが入っている。

けれども、

ペイガンの中には何も入っていない。


故に僕らは言葉という不完全な記号を補完して、

以心伝心できる(ペイガン同士はできない)。


そうした不滅さと完全さ故に、

僕らは常に不安定だから、

400年周期で「人」となる。


人と人であった合間の四百年間、

昔はただ宇宙として存在していたけれど、

五十万年前、

人造人間(ペイガン)という存在が生まれて増え始めてからは、

違ったことが始まった。


心のないまま、

ペイガンに憑依する人間が出てきた。


あの人は人が変わったと、

良くも悪くもいわれる出来事の大半は、

憑依された結果だ。


僕らは憑依された人造人間を病体(ドーシャ)と呼んだ。


ドーシャの中には、

憑依が終わってもそのままだったり、

憑依されたまま亡くなって異能体となったりと、

ここ五十万年ほどは悩ましくも、

ちょっと愉しいことになっている。


僕が憑依した結果、

とんでもないこと結果になったこともあるし、

憑依したまま死んで、

今や実質的に永遠の命を持ってしまった異能体もいる。


僕はそれらを日記にまとめようと思いついた。


本来であれば、

制限のない時空に生きる僕たちが年月日を記すというのは、

ありえない行為だけれども、

もしかしたら、

こうしたことが世界を安定させるのかもしれない。


※「マンドキャ・ウパニシャッド」より

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