終焉と始原3
僕たちがたい焼きを食べ、
追加でシャパンいちご大福を注文している間に、
世界では将来失われるかもしれない、
胎児と赤ん坊の命を救う作戦が行わていた。
人皮本、
ペイガンが僕たち人間に対抗するために考え出した霊子兵器。
その材料として必要不可欠な胎児と赤ん坊の皮膚。
座視していたら、
世界中で赤ん坊が殺されるようになる。
危惧ではなく、
19世紀から20世紀に経験していたからこそ、
僕とBGさんは実力行使を決めた。
今、
僕たちがお茶をしている日本も、
21世紀に入ってこそ、
乳児死亡率は、
世界トップクラスの低さになったけれど、
僕たちが参考にした資料では、
10人に1人の赤ん坊が死んでいた時代があった。
20世紀最悪の内戦地域と比べても、
最悪の数字だ。
その上、
推定では、
死亡の1/3から1/2は自然死じゃない。
同じようなことが、
このままだとペイガンの社会で再演される。
20世紀前半のように、
乳幼児を買いとる仕事が出現したり、
育てられない、
または事情のある子供たちを引き取る善人を騙って、
親から養育費を預かりながら、
数日で殺害して、
遺体を大学病院などに売る人たち。
人皮本の材料にする赤ん坊を確保するため、
ありとあらゆる行為が組織的に行われるのを、
防ぐ必要があった。
僕たちがいるカフェは、
麻布十番から少し元麻布にのぼる暗闇坂の登り口にある。
この近くにある六本木ヒルズでも、
作戦が行われている。
レムから流れてくるイメージを、
僕は焼きそばを少しずつ食べながら覗いていたけれど、
対象になった研究施設のテーマの一つは、
死亡した時に着ていた服に発生する「霊子の定着と保存効果」というのがあった。
簡単に言えば、
赤ん坊を産着の上から刺し殺した時、
血を吸った産着に霊的変化が起こり、
その生地に霊子を保護する効果がみられる、
ということだ。
「聖骸布」や「聖遺物」と似たような考えだ。
似たような例では、
南北戦争の頃までは、
戦死した兵士の服を剥ぎ取り、
あつめて新聞の材料にしていた。
計画が進めば、
赤ん坊の皮膚でページを作り、
その血の染み込んだ産着で作った紙で装丁するつもりだったようだ。
僕にしてみれば、
狂気だ、
と、思ってしまうけれども、
彼らは完全に正気なのが、
一番の問題だった。
もし、
彼らを病気だと言えたら、
どんなにか世界は平和だろう。
僕はシャンパンも追加して、
楽しそうに話す四人の魅力的な女性をみながら、
おもう。
狂っているのは僕たちだった、と。
人間は狂気を知ることで
はじめて正気を知るけれど、
心のないペイガンにとっては、
どんな非人間的な行為も、
与えられた正当な「労働」に過ぎない。
だからこそ、
僕らは正気に戻らなくちゃいけないんだ。




