終焉と始原1
自殺倶楽部、
その中の一部隊、「5(サンク)」。
通称「五枚葉」。
彼らの内、
三人は今、
六本木ヒルズの最下層にいた。
古い墓石が並べられている。
あかりは薄い黄色の非常灯らしきものだけだ。
「ここって、大昔は墓地だった上にビルを建てたんだって」
と、小柄な少女がいった。
「日本人て凄いな」
と、背が高く肌が黒い少年が辺りを見回した。
「あっちが入り口だ」
三人はあらかじめ記憶した三次元データと照合しながら、
目的地に進んでいた。
「さっきの坂でね」
「けやき坂だっけ」
「そうそう」
「道路の真ん中を幽霊があるいてるのをみた人がいるんだよ」
「お前、よく墓地の中歩いてて平気だな、そんな話」
と、青年が言うのをきいて、
少女は自分の左手前側を指差した。
「うわぁ」
そこにいるもうひとりの少女は、
墓石を突き抜けて一直線に目的に向かっていた。
「いくら非現実化でみえないさわれないからって、
あれはないわ」
少女がふり返られずにいった。
「突入するよ」
わんちゃんたちが騒いでいる内に制圧する。
走り出した彼女を二人も追いかけた。
目的は六本木ヒルズの地下にあった。
車で、
けやき坂からセンターループに入り、
地下へと続く坂を降りると地下5階までいける。
そこから先は徒歩。
最下層まで降りた場所が、
ペイガンの過激派組織「沈黙の友情」の拠点の一つだ。
三人が目指す場所では、
「霊子の効率的保存方法」を目的とした研究が行われているらしい、
という情報だった。
最初に武装した警備兵いる場所で、
人犬型オートマタが襲撃を起こし、
注意をひきつけている。
その間に、
非現実化シールドによって自分たちが「幽霊化」している三人が、
制圧する計画だ。
非常時の対処マニュアル通り、
研究員は全員、
セーフティールームにいた。
大規模空爆や巨大地震でも崩壊しない堅固で厳重な部屋だったけれども、
非現実化シールドで「幽霊化」している三人にとって、
入り込むのには何の障害にもならなかった。
非常食の保存設備と、
空気清浄機のかすかな音、
非常灯の光の中で、
研究員は各自の席に座っていた。
三人は不安感で一杯の研究員の間に立っていたが、
誰も彼らには気づかない。
非現実化シールドの効果で、
人の気配や空気の変化、
微弱な静電気すら遮断されているからだ。
「はじめる」
先頭の少女がいった。
まず、
青年が霊子ネットワークを増幅して、
十人の研究員を「拘束」した。
「いくよ」
少女たちはお互いに合図して、
研究員に精神に潜入する。
彼らは、
かつて自分の中に入り込んで、
自分を殺してきたように、
今、
誰かの自分を殺しにいく。




