ナチュラルウーマン
目覚めたら、
思いもよらず唇が近かったので、
当然のように僕は接吻した。
しながら、
学生の頃に読んだ小説に、
こんな場面があった気がする。
夢の中で、
僕は追いかけられていた。
子供の僕、
今のこの姿の僕は、
百年前にみた夢のように逃げ回り、
そして、
御影づくりの蹲にぶつかる。
全く光をかえさない黒い水面には、
天から水滴が落ちくる。
着水に音は伴わず、
何故か、
水紋は外周から中心へと沈んでいく。
その行き先へ魅了され、
脚がとまってしまったところを、
男たちに捕まってしまう。
その男たちは、
今朝、
僕たちを迎えにきた男たちの姿をしていた。
今ならば理解できる。
夢の中の蹲に溜まった水滴は、
霊子だ。
どこからか僕の中にやってくる。
まるでワームホールと有限なプラックホールが僕の中にあるような感じだ。
この世界に真の調和がとしても、
僕は節子との間で、
優しい調和を保ちたいと思っている。
でなければ、
今日以降の残酷な日々を、
どうして人らしく過ごして行けるだろうか、
わからなかった。
節子は唇を押し返しながら、
紅の落ちかけた唇を柔らかくひらきつつ、
寝起きはきついから、
と昔と同じようにいうので、
つい、
「どうして、わかくなっているの?」
と訊いてしまった。
彼女は目をまるくすると、
「だって」
僕のあそこをつかみながら、
「あなただけ若くなるなんて、だめよ」
と膨れながらいう。
「だから、お願いしたの。せめて、20代にしてって」
その様子をみながら、
あう前の晩は、おふろでコロコロをするの、と肌の手入れを僕のためにかかさない、といっていたのを思い出した。
「だって、私の若い頃って、写真でしかしらなかったでしょ」
「うん、実物もかわいいよ」
僕らはアカーシャの屋上にいる。
昨日、目覚めた時は菜の花と桜だったが、
今日は砂浜だ。
波の音が心地よい。
その心地よさに二人して眠りこけていた。
その間にみた夢も、
また、
いつか、
本当になるはずだ。
そして、
レムがきた。
時刻がやってきた。




