そうだ、京都へいこう
そらした顔を戻しながら、
「やっと、私が奥さんですよ」
と抱きしめてきた。
ちょうど身長差で、
胸の膨らみが顔が押し付けられるけど、
ニットのワンピースだから、
よけいにふわふわと柔らかさがまして、
つい、
昔の癖で両掌で揉みそうになってしまうのを押しとどめて、
両手を背中に逃がす。
生成り色でニットのワンピース、
これも絶対、
レムの差し金だ。
節子は僕の頭に顎をのせて、
「小さい」
と不満げにいう。
顔を少し胸からはなして、
9歳の僕は上目遣いをする。
笑窪がある。
目は少しタレ目。
鼻は少し高め。
額は広い。
髪型はとても女子っぽい。
声はよくとおって、
何をしゃべっても笑い声のよう。
「節子....さん?」
「はい」
「うそ?」
「はい」
「えっ、どっち、というか、えっ、なんで?」
「ふふふふふふ....。なんででしょう?」
「教えてくれないの?」
「そうですね、デートに連れていってくれたら、教えてもいいかも」
節子は僕の頬を両手で抱きしめながら、
「京都にいきましょう」
といった。
僕はなぜだが、
節子のいうとおりにしなければならない、
と思った。
僕はレムに心の中で語りかけた。
これから京都にいってくるね。
いいですね。丁度、粉雪です。金閣寺あたりが見頃かと。
ありがとう。
明日の御朝食後にお迎えに参りますので、婚前旅行をお楽しみください。
ふー、代理人ソフトって、
本当はとんでもなく面倒くさい代物じゃないのかな、
と僕は思ったが、
とりあえず、
僕らは正月の京都へ転送してもらうことになった。




