脳によって隠された不思議な物質の一種
「これが霊子?」
体から発した光は、初めこそ、僕から外へと向かっていたようだが、次第に僕から五センチ程度の範囲で行き来しているようして、明滅している。まるで、何かの情報をやりとりしているかのようで、実際、レムの説明では、世界は霊子によって情報を伝え合い、その伝えあった霊子によって全ての形は、形としてあり続けられているのだそうだ。
霊子が光ってみえるのは、霊子の動きを他の物質が邪魔しているからで、ぶつかっている刹那の輝きらしい。
「主さまの霊子をもってすれば、レムリアの全てをご自由にできます」
レムリア、というのはレムの管理する場所、という意味で、要するに全世界のことだ。
どうも、目覚めた僕は全世界を好きにできるらしい。
当初の目的とは随分と違っているが、いいんだろうか?
僕の不安を察してか、BGさんはいう。
「全ては、君をエミュレートする過程で生じた副産物なのだよ」
全世界の人や物を総動員して未来の夢を視る脳ど同じネットワークを構築する、という計画が進んでいく内に、ネットワーク化が進めば進むほど、無視できない誤差が生じてきた。その原因を追究していた過程で発見されたのが「霊子」だった。
最初は量子で説明がつくのか、と考えられたが、その量子や素粒子といった物が存在している時空そのものをに充ちていたそのが「霊子」だった。その伝達速度と形成速度と質量は、いずれも計測できなかった。故に「霊子」と名付けられた。
霊子は密度を変化させることで、物質を形成させる。たとえるなら、バケツの水にものを入れたような感じらしい。周囲を霊子に囲まれることで、形ができる。
「主さまのお身体が退行しているのも、霊子のせいなんです」
「これ、か」
退行、か。まさか、本当に子供の体に戻ってしまうとは...。
「無量に近い霊子をお持ちの主さまが、一世紀もの間、それを放散せずにいたため、霊子圧が高まりすぎて、主さまの時間はマイナスへと進んでしまいました。何分、冷凍保存中でしたので、処置することもできず、申し訳ありません」
「わかったけど、これ、目覚めなかったら、どうなってたのかな?」
「消滅するか、私たちの知らないなにかが生まれていたのか、わからないのだよ」
BGさんが深刻な顔でいった。
「ちなみに、僕の霊子が全部開放されたら、どうなるの?」
「計算上では、地球がなくなります」
「消滅?」
「いえ、地球ができる前まで時間が遡上します」
へーーー、この優しそうな光、
そんなやばい代物なんだ。
「だとすると、僕の夢もこいつが原因かな?」
二人は顔を見合わせて、
首を横に振った。
「私たちもそう考えだが、まだ、解明できていない」
結局、
僕の代理人を作ったけれども、
僕のことはよくかわらなかったわけだ。
「それで...」
二人が言いにくそうにしているので、
なにって顔をしたら、
「あの、お目覚め早々、申し訳ないのですが...」
僕は二人のお願いをきいて、人生で初めてくらいに驚いた。
まさか、
そんなことになっているとは。




