淋しさの情
「主さま?」
優しい声だ。
ぬし、さま?
僕はゆっくりと瞼をあける。
青空?
そこに舞っているのは、桜?の花びら。
「主さま、代理人のレムと申します」
うわぁ、美少年? いや、美少女かな?
「うん、おはよう」
子供のような声が出た。
それでも、百年ぶりでもすぐにちゃんと声も出て、目も見えるんだ、と驚いた。
上半身をレムに抱えられて起きたベッドの周りは、一面の菜の花畑。そして、周囲を満開の桜並木が多い、遠くには新緑の山並みが囲っている。
「僭越かと存じましたが、主さまの一番お好きだった景色を用意いたしました」
「とても素敵だ」
レムは笑いながら、
「お食事もご用意がございます」
銀色のワゴンの上には、お粥、ローストビーフ、キュウリとトマトのサンイッチなどが並んでいた。
「お体はお目覚めに合わせて調整してありますので、お食べになるのにご心配はありません」
至れり尽くせりだな、と思いながら、
「一つ、きいていいかな、レム」
「ハイ」
「僕は何歳なのだろうか?」
視線を胸から下へと向けた。
薄い胸板、細い腕。下半身は隠れているけれども、どう考えても、少年の体だった。
三十歳直前の、ほぼ中年、おじさんといっていい年齢で冷凍保存に入ったはずだった僕としては、一応、確認しておいた方がいいかな、と思ったのだ。
「それについては、私から説明しよう」
目の前に、初老の紳士が出現した。
僕には彼が誰だか、すぐにわかった。
「はじめまして、と一応、言っておいた方がいいかな?」
彼、BGさんは僕の体についての経緯と、この百年の経過を簡潔に話してくれた。僕はお粥をすすり、サンドイッチを口に運びながら、本当にここは百年後の世界なのだ、と実感した。
「色々、あったんですね」
「レムが最終的には解決してくれたよ」
「ありがとう、レム」
「全て主さまのおかげ様です」
夢でみていたように、ここには子供の僕がいる。。だから、この後、あの夢へと続いていくわけだ。
あまりにも美しい景色と、20世紀末の日本のレストランと寸分、変わりのない食事の味に、逆に淋しさを感じた時、僕は光りだした。肌の下、肉と皮膚の境界線あたりからキラキラと光りだしている。
そういえば、淋しさこそ、霊性発現の条件といったのは誰だったかな?
確か、大学で習ったはずだ。




