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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第九章 拡張版ミズーナ編

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第470話 信じるのよ

「はあはあ、間に合いましたでしょうか」

 アンマリアたちのいる場所に、サキが息を切らせながら現れた。

「サキ様、ちょうどいいところに。今から始まりますよ」

「はあはあ、よかったぁ。ちょっと聖女としての仕事が長引いてしまって、どうしようかと思いましたよ……」

 席に座ったサキは、アンマリアの出した柑橘ジュースを口に含む。

「うっ、酸っぱい……」

「柑橘ですからね」

 眉間にしわを寄せて反応するサキの表情に、思わず笑ってしまうアンマリアとミズーナ王女である。

 ひとまずジュースを飲んで落ち着いたサキが会場に視線を向けると、対戦相手を見て小さく声を漏らした。

「あら、相手を知っているの?」

「はい、テトリバーとも親交のあるカックテール男爵家のご子息ワトル様です」

 なんと、サキとは知り合いに当たり人物だった。

 そんな相手がサキと婚約者になったリブロ王子の初戦の相手とは、なんとも因縁めいたものがあった。

「実力はどのくらいなのかな」

 フィレン王子がサキに問い掛けると、サキは首を横に振っていた。

「分かりません。親交があったというくらいの面識しかありませんので。学園に通ってからは、顔を合わせることがありませんでした」

「そうか……」

 サキの答えを聞いて、フィレン王子はリブロ王子への方へと視線を戻した。

「申し訳ございません、お役に立てなくて……」

「仕方ないわ、サキ様。私たちに付き合わせていたので、しょうがないですよ」

 アンマリアもそう声を掛けて、サキを責めるような事はしなかった。なにせ、その機会を奪っていたのが自分たちだったのだから。

「始め!」

 話がちょうど落ち着くと、リブロ王子の戦いが始まってしまった。

「始まってしまったようですね。さあ、しっかりと応援しましょう」

「はい、承知しました」

 話を打ち切り、アンマリアたちの視線が試合会場へと向けられたのだった。


 試合会場では、リブロ王子とワトルの戦いが繰り広げられている。

 一時期、魔力循環不全で寝込んでいたとはいえ、リブロの動きはまったく悪いものではなかった。兄のフィレン王子同様に、王国騎士団とけいこを積んでいるのだから当然だろう。

 ただ、その病気があった事が間違いなく原因であろう。その動きは少々精彩を欠いているようだ。

「サキの婚約者のくせに、腕前は大した事がないようだな。失望したぞ、リブロ殿下」

 偉そうな口を叩くワトル。

 だが、そんな口を叩くだけあって、リブロ王子は押され気味に試合が進んでいる。誰の目にもワトル・カックテールの優勢のようにしか映らない。

 フィレン王子は強かったというのに、弟はこの程度なのかと、失望の声すらささやかれ始めている。

 そんな中、ワトルだけは違う印象を受けていた。

(こいつ……。俺の攻撃をことごとく受け止めてやがる。それにこの目……。まったく諦めている様子がない。どうしてそんな目をしていられるんだ)

 リブロ王子の剣は、ワトルの攻撃を確実に捌いていたのだ。ただ、受けに回っているがために、周りには気付かれていないようである。

(このまま押し切って勝ってやる!)

 ワトルはさらに攻撃の手を強めていった。


「うん、ごり押しになったね」

 フィレン王子がぽつりと呟く。

「ええ。リブロ殿下がしっかりと攻撃に対応してくるものですから、相手は相当に焦っているようですね」

 アンマリアも状況をそう分析している。

「どうして二人ともそんなに冷静でいられるのですか」

「リブロ殿下……」

 完全な魔法型であるミズーナ王女とサキが、リブロ王子のことを心配している。特にミズーナ王女はフィレン王子とアンマリアに怒っているようだ。

 だが、二人は剣術大会に参加したことがある身だ。だからこそ、状況というものがよく見えているのである。

「落ち着きなさい、ミズーナ王女殿下。王族たる者、この程度で慌てていてどうするというのですか」

 真顔でミズーナ王女を諭すアンマリア。さすが王太子フィレンの婚約者となっただけのことはあるというものだ。

「そうですよ。ああいう時こそ、相手は最後に大きな隙を見せるのです。リブロはそれを狙っているのですよ」

「えっ?」

 フィレン王子の言葉に、思わず変な声を出してしまうサキ。

「ほら、見て下さい」

 それと同時にアンマリアが声を出す。それにつられるように、ミズーナ王女とサキが試合会場へと視線を向ける。そこには、まさに決着をつけようとして大きく振りかぶったワトルの姿があった。

 思わず顔を覆いたくなるサキだが、アンマリアが手を割り込ませて阻止する。

「しっかり見ておくのです、自分の婚約者の姿を」

 アンマリアの言葉に、しっかりとリブロ王子の姿を見るサキだった。

 その瞬間だった。

 ワトルの動きがぴたりと止まる。よく見ると、リブロ王子が剣を鋭く薙ぎ払っていたのだ。

「か……は……」

 苦悶の声を上げながら、ワトルの手から剣がするりと零れ落ちる。

「勝者、リブロ・サーロイン!」

 地面に落ちた剣の音が響くと同時に、リブロ王子の勝ち名乗りが会場に響き渡ったのだった。

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