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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第九章 拡張版ミズーナ編

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第468話 商才持ちのエスカ

 さて、ボンジール商会の出店はというと、ずいぶんとにぎわっているようだった。

 柑橘やハーブやらを混ぜ込んだせっけんというのは、それはもう貴族受けがよかったというもの。特に御婦人方がこぞって買いまくっていたようだ。

「やっぱり、実物を見せてあげると食いつきがすごいわね」

「エスカ、言い方……」

 アロマオイルを搾るのにエスカの闇魔法が大活躍だったせいで、ものすごく調子に乗っているエスカ。それを困った顔で注意するミズーナ王女である。

「ミズーナ、こういうのは売ったもの勝ちよ。そのためには実物を見せ、使い方を実演するの一番なの」

「は、はあ……」

 なんとも商魂たくましいものである。

 エスカは前世は営業経験があるので、売り方というものが分かっているようなのだ。

「これでも、ブラック企業の営業で鍛えられてきたのよ。私が関わったというのなら、それこそ王国一の商会に押し上げてやろうじゃないの」

「ブラック企業……。それで闇魔法を持っているのですね」

 妙に納得がいってしまうミズーナ王女である。そんな風に言われれば、エスカはジト目をミズーナ王女に向ける。

「失礼ね。確かにブラックでノルマはきつかったけれど、成績は常にトップクラス。その私にかかれば、売れないものなどないわ」

 腰に手を当てながら近くにあった台に足をかけて、大声で威張るエスカ。その姿に、同じ転生者であるミズーナ王女やメチルはもちろん、商人であるギーモですらも言葉を失うほどだった。

 とまぁ、エスカがやや暴走気味ではあるものの、ハーブ入りせっけんは面白いほどに売れていく。

 本来なら作るのに時間がかかるものだが、魔法を使えばかなり時間を短縮できてしまう。

 圧搾作業もエスカの闇魔法で重力を発生させて押し潰すので、あっという間に終わってしまうのだ。魔法様々である。

「せっけんってこういう風に作るのね。なかなか楽しいわ」

 アルーも裏で作業しながらそんな風に呟いている。

 アルーは魔法こそ多彩だが、魔力はメチルがいないとからっきしである。つまり、メチルのいる間は、魔法は使いたい放題ともいえる。なにせ魔族となったメチルは、ただの聖女時代よりも魔力の容量が増えているのだから。

 炭を作ったり、作ったせっけんを乾燥させたりという作業も、アルーが裏で行っているのである。おかげで売れても売れてもすぐに補充ができるのだ。

 こうして、大盛況のうちに昼を迎える。

「やあ、ミズーナ。店はどうだい?」

「お兄様、どうなさったのですか? 試合は?」

 突然現れたレッタス王子に過剰に反応するミズーナ王女。

「試合はまだだよ。私とリブロ殿下は昼からだ。なので、昼食を食べに来たというわけだね」

「ああ、そうなのですね。ということは、タミール様の試合は終わっているのですね」

「うんまあ、そうだね。ちなみに勝ったよ」

 レッタス王子の報告にほっと安心するミズーナ王女である。

「でも、お二人とも姿が見えませんね。どうなさったのでしょうか」

 エスカが王女モードで話をしている。

「あの二人なら身内と一緒にいるよ。フィレン殿下とアンマリア嬢が見物に来られていたからね」

「あら、そうでしたのね」

 エスカはそう言うと、商会の出店の裏手にテーブルと椅子を引っ張り出していた。収納魔法を使ったようである。

「時間的にはお昼ですからね。ここは腕によりをかけさせてもらいますよ」

「料理できたの?!」

「ミズーナ、何を驚いているのよ。これでも自炊はしていたクチよ」

 そういいながら、エスカはボンジール商会で扱っている魔道具まで引っ張り出して料理を作り始めてしまった。まったく何を作るのやらと、ミズーナ王女たちは呆れてその様子を見守っている。

 ジュージューといい音と香りを漂わせながら、エスカは料理をあっという間に作り上げてしまう。ちなみに周りを闇魔法で囲っておいたので、これらはこの出店以外へは広がらないようになっていた。対策もばっちりなのである。

「野菜炒めかぁ。これなら簡単だし、時間はあまりかからないわね」

「でっしょー? さぁ、今から盛り付けるからレッタス殿下も座って座って」

「あ、ああ。じゃあ、ご相伴にあずかろうかな」

 レッタス王子が戸惑いながらテーブルを囲む。ただ、それ以上にギーモたちが戸惑っていた。なにせ王子一人に王女二人という王族まみれの食卓に同席するのだから。こんな状態、晩餐間でもそうそう体験できるものではないのだ。

「ほらほら、冷めないうちに食べなきゃ。メチルもアルーおいでおいで」

「いえ、私たちは店番をしておりますので、先にお召し上がり下さい」

 メチルはそう言って加わろうとはしなかった。確かに、出店を見る人物が一人もいなくなるのは問題だからである。

 熱心なメチルの態度を微笑ましく思いながらも、エスカたちは先に食事を済ませる。そして、交代してメチルにも食事を取らせると、レッタス王子は試合に向けて闘技場へと向かっていった。

「さて、お兄様の試合があるみたいですし、私も一時的に店を離れさせて頂きますね」

「ええ、しっかり応援してくるのよ」

 ミズーナ王女はエスカとグータッチをすると、ギーモに頭を下げて闘技場へと向かっていったのだった。

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