第459話 予想外な参加者たち
サーロイン王国へと戻った次の週末、リブロ王子の15歳の誕生日パーティーが開かれる。
本来ならば王子の15歳ともなれば本格的な婚約者が決定をなされる時であり、令嬢たちは目の色を変える時でもある。
ところが、リブロ王子には1歳年上のサキ・テトリバーという婚約者が既にいる。サキの家は男爵家とはいえ、そのサキ自身は聖女である。そのために婚約者になったという経緯があるのだ。
そんなわけで、リブロ王子の誕生日パーティーは、純粋に誕生日を祝うだけの日となっていた。
「はあ、リブロ殿下も15歳ですか。時間の経つのは早いですね」
パーティー用のドレスに着替えながら、大きな声で呟くミズーナ王女である。
「そうですね。魔王様との戦いから、もう一年が経っているだなんて信じられませんよ」
ミズーナ王女の服を着替えさせながら、メチルはミズーナ王女の声に反応している。
「それよりもメチル」
「何でしょうか、王女殿下」
その声に、ミズーナ王女を着替えさせるメチルの手が止まる。
「あなたも準備しなければだめよ。みなさんもそう思いますよね?」
「えっ」
メチルが何かに気が付いて後ろを振り返る。すると、そこにはいつ入ってきたのか分からない侍女たちがたくさん並んでいた。
「ええっ、いつの間に?!」
「さあ、みなさん。私の仕上げと一緒にメチルも着替えさせてしまいましょう」
「畏まりました、王女殿下」
ミズーナ王女がにこりと微笑んで命じると、侍女たちが一斉に動き出したのだった。
「ちょっと待ってぇっ!」
メチルは思わず叫んでしまうが、熟練の侍女相手ではまったく歯が立たず、されるがままに着替えさせられたのだった。
「うう、なんでこんなことに……」
すっかりドレスに化粧とめかし込まれたメチルは、現状に嘆いていた。
「似合っているわよ、メチル」
「ええ、とてもよくお似合いですよ、メチル様」
ミズーナ王女と一緒に、着替えさせた侍女たちも両手を合わせながら褒めてくる。その様子に思わず真っ赤になってしまうメチルである。
「さあ、会場に向かいましょう」
メチルの手を引いて歩き始めるミズーナ王女。その行動に、メチルは思わずミズーナ王女に話し掛けてしまう。
「あ、あの。私は一般の令嬢での入場ではないのですか?」
メチルの質問に、ミズーナ王女はにやにやと笑っている。嫌な予感しかしなメチルである。
結局、ミズーナ王女はそれに答えてくれることなく、王妃やアンマリアたちと合流したのだった。
その頃のパーティー会場。
しれっと紛れ込んだ一人の男性に、会場中の注目が集まっていた。
「まあ、あの方かなり美形ね」
「しかし、なんだあの頭の飾りは」
「本物じゃないかしら。聞いてみてよ」
「近寄りがたいわ」
周りの人間がひそひそと話をしている。
「ふん、これが人間の行う儀式のようなものか。どれ、せっかく来たわけだ、楽しませてもらおうか」
誰かと思えば魔王である。
「なんであんたがこんなところにいるのよ」
そこへ、本来は壇上から登場するはずのエスカがやってきた。魔王の魔力を感じて慌てて顔を出したようである。
「誰かと思えば、我を伴侶にとか寝言を言う女か。着飾った人間どもが集まるものだから、気になってやって来ただけだ」
「よく入れたわね」
「お前の伴侶だといったら、おとなしく入れてくれたぞ。さすがは一国の姫といったところか、くくく」
魔王は適当に料理をつまみながら笑っている。
「はあ、まぁいいわよ。今日はこのサーロインの第二王子の誕生日を祝うパーティーだから、おとなしくしておいてよ?」
「分かっておる。お前がいる時点で我には不利だ。今後はこういう席に慣れておかねばならぬだろうからな、おとなしくはさせてもらおう」
意外と素直に引き下がる魔王だった。
「しかし、その青いドレスは結構似合っているな」
「ふふん、そうでしょう。とはいえ、主役であるリブロ殿下より目立っちゃいけないから、控えめにさせてもらったけれどね」
「お前に自重ということがあるとは意外だったな」
「なーによう」
魔王が笑って言うものだから、エスカは不機嫌そうに視線を向けている。
「それよりも、どうしてサーロインの王都にいるのよ」
当然ながら、そこが気になるというもの。先日のクッケン湖の件は分かるとしても、今回王都に居る理由がまったく分からないのだ。
「なに、この街の中から呪具の波動を感じ取っただけだ。場所は……、今はやめておいた方がよさそうだな。宴が始める」
エスカから視線を外して、壇上を見つめる魔王。その状態まま視線だけエスカへと向ける。
「我とて宴は好きだからな。こういう時ばかりはおとなしくしておこう」
そう言いながら、近くの給仕からワインを受け取って飲む魔王である。
しかし、魔王が言いかけた言葉が気になるエスカは、どうにもこうにも楽しむ気持ちになれなかった。なので、魔王の足を思いっきり踏むエスカである。
「ふん、可愛い行動を取ってくれるな。さっきのことは後でちゃんと話をしてやる。我々が動けないのであれば、話すだけ無駄だからな」
不敵な笑いを浮かべる魔王。その姿を見ながら、エスカはアンマリアのファッティ領で採れたオレンを使ったジュースを飲み干すのだった。




