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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第九章 拡張版ミズーナ編

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第431話 おいしいところはさらわれる

 魔力だまりがミズーナ王女たちに襲い掛かる。まったく、この手の厄介なものというのは一筋縄ではいかないものだ。

「甘いですね!」

 アルーの声もあってか、ミズーナ王女たちは全員が対処できていた。

 しかも避けるどころか防護魔法でしっかり防いでいる。サキですらもできているのは驚きである。

「ギャギャギャッ!」

 魔力だまりが飛び出させた瘴気を引っ込ませると、不気味な笑い声を上げながら見る見るうちに変化させていく。

 その動きはぐにょぐにょとなかなかに気持ち悪いものだった。

「な、なんなのですか、あれは……」

 サキが怯えた表情で声を震わせる。

 その目の前では、瘴気を膨らませながら形を変えていく。まるで意思を持った何かのように、その形がじわじわとはっきりしていく。

 瘴気はローブを着た老婆のような姿になると、再びミズーナ王女たちに襲い掛かってきた。

「ギャギャッ!」

 奇声を上げて襲い来る瘴気。ミズーナ王女は身構えて正面から立ち向かおうとする。

「ダメです。触れてはいけません!」

 そこへメチルが割って入る。

 護身用に持っていた短剣で瘴気の攻撃を受け止めている。

「メチル、あなたは大丈夫なのですか?」

「私は大丈夫です。なんといっても魔族ですからね」

 力を込めて抵抗しながら、ミズーナ王女へと笑顔を向けるメチル。

「あまりこいつに近付きすぎると、徐々に精神を侵されていきます。距離を保ちながら、光魔法でじわじわ削っていくしかありません」

 そう言い切ると、短剣を強く振って瘴気の塊を突き飛ばすメチル。

 メチルの話を聞いていたアンマリアとサキは、光魔法で壁を作りながらどうにか瘴気の塊から逃げていた。

 ミズーナ王女たちと合流したアンマリアは、こそこそと話しかける。

「あの瘴気の塊ですけど、まとっている魔力は覚えがありますね」

「本当ですか、アンマリア」

 驚くミズーナ王女。

「ええ、おそらくは2年前の話ですけれど、平民街で起きた激やせ事件を覚えてらっしゃいますか?」

「ああ、ありましたね、食べても食べてもやせるっていう事件が……」

 そう、これはアンマリア編の2年目の頭に起きるはずだった怪しい薬イベントの時の話である。

 あの頃はアンマリアは一応回避条件を満たして、イベントは発生しないはずだった。

 その代わりに起きたのが、食堂激やせ事件だった。

 平民街にあるとある食堂で食事をした客が、揃いも揃ってやせ細るという奇妙な事件だった。店の主人が無事だった事も奇妙さに拍車をかけていた。

 あの事件は結局のところ犯人が分からずじまいだったのだが、どうやら思わぬところでその犯人に出くわしてしまったようだった。

「なるほど、あの食堂を包んでいた呪いの実行者の魔力と、この瘴気の塊が放つ魔力が似ているというわけなのですね」

「そういうことです」

 アンマリアの話に納得のいくミズーナ王女だった。

「オォォ、ギャギャッ!」

 話をしている間も、瘴気の塊は攻撃を仕掛けてくる。そこはサキとメチルの聖女コンビがどうにか凌いでくれていた。

 それにしても、この瘴気の塊はなんとも動きが速い。その上細かく攻撃を仕掛けてくるので、浄化のために大掛かりな魔法を使うには少し手が足りないという状況だった。

「姿は老婆なのに動きがすばしっこいですね」

「これじゃ大規模浄化をしようとしても、まともに詠唱できませんね」

 メチルとサキもかなり困っているようだった。

 だが、そこに突然聞き慣れた声が響いた。

「グラヴィティプレス!」

 ズンという音とともに、瘴気の塊が地面へと押し付けられている。

 何事かと思って振り向くと、そこには忘れてきたはずのエスカが立っていたのである。

「エスカ?!」

「どうやってここに来たのですか」

 アンマリアとミズーナ王女が目を白黒させている。

 あの距離をやってくるなど瞬間移動魔法でもないと無理ではあるが、行った事のない場所へは瞬間移動魔法で到達するのは無理なはずである。一体どうやってここへやって来たのか。

「ふふん、そんなの簡単よ。アンマリアの魔力を追跡したのですよ!」

 ドヤ顔を決めながら言い放ったのは、なんともとんでもない話だった。

 エスカが言うには対象の魔力を残滓を追いかけて、その場所を特定して跳んできたということらしいのだ。怖い話である。

「あっ!」

 サキが叫ぶものだから何事かと見てみると、瘴気の塊が重力から逃れようとしていた。

「甘いわね」

 エスカが再度魔法を放つと、瘴気の塊は地面に激しく押し付けられていた。

「言っておくけど、地面に逃げようとか考えないことね。地面に入ったら、その瞬間にぺっちゃんこだから」

 エスカがぎろりと瘴気の塊を睨むと、瘴気の塊はビクッと震えて動きを止めていた。どうやら地面に逃げるつもりだったらしい。

 だが、エスカの言った通り、地面にめり込んだ部分は地面に縫い付けられたかのように動けなくなっていた。

「あったり前でしょうに。重力で押し付けられて固まった地面よ? 隙間なんてあると思ってるわけ?」

 冷たい視線を瘴気の塊に向けるエスカ。そして、続けざまに叫ぶのだった。

「さあ、ゆっくりと浄化しておしまいなさい!」

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