第393話 貴族にとっては大問題
最後の学園祭だから精一杯楽しみたいものだけれど、やっぱりイベントはちゃんとこなしたいわよね。
3年目の学園祭は、対象ごとにイベントがそれぞれ用意されている。
剣術大会に出る場合は、フィレン王子、リブロ王子、タンの三人が対象となる。残念だけど、カービルとタカーはお呼びでないわ。あなたたち二人はお互いの婚約者と学園祭を楽しんでちょうだい。
ちなみにだけど、カービルはラムと、タカーはモモと婚約関係になることになっている。この辺りあまりやって来なかったけど、ラムとカービルは一応ちゃんと婚約者関係にある。……そうなるとモモとタカーか。
父親が城で大臣を務めているから、タカーとモモも一応接点は作れるのよね。
本来のゲームであればモモはハーツ子爵家の令嬢として私の前に立ちふさがるはずだった。
しかし、ハーツ子爵家は昔やらかしをしてしまって今は取り潰されてしまい、モモは私の妹としてファッティ家に引き取られている。
つまり、モモとタカーとの間で関係を取りもてなさなかった場合、私にも責任が出てくるというわけだものね……。
剣術大会への参加を決めた3日後のこと、私は父親のところへ話をつけに行くことにした。
「お父様、失礼致します」
部屋の扉をノックして、父親に声を掛ける。
「どうしたんだい、マリー。入ってきなさい」
あっさり入室の許可が出たので、私は部屋の中へと入っていく。
私が部屋の中に入ると、父親は仕事をしているようだった。王国の大臣であり、ファッティ伯爵領の領主でもある父親は、やる仕事が多いのよ。
でも、忙しいのは分かっていてもこれは姉として動かなければならなかった。
「お父様、お忙しいところを失礼致します」
「構わないよ。マリーのためなら時間を作るのは惜しくもない」
私が頭を下げると、父親はあっさりそう言ってのけていた。相変わらずの親ばかなんだから困ったものね。
まあ、先日のベジタリウス王国での一件では、卒倒しかけてただけにあまり強く言えないわね。
「それで、何の話なのかな」
惜しくないというだけで、ちゃっちゃと済ませたい気持ちがにじみ出ている。なので、私もあまり時間を掛けないように単刀直入に言うことにした。
「お父様、モモに婚約者をつけようと思います。もう15歳なんですから、居ないというのはさすがによろしくはないのではありませんか?」
私が言うと、父親は唸っていた。
「確かにそうだな。しかしだ、マリーがそう言うという事は、誰かいい相手でも居るというのかな?」
鋭い父親である。さすがは国政にも関わるだけあるわね。
私は咳払いをひとつして父親に進言する。
「はい、宰相の息子であられるタカー・ブロック様を推薦致しますわ」
「ふむ、タカーか。確かに彼もまだ相手がいなかったな……」
父親は顎に手を当てていた。ただ、様子を見る限り、即断というわけにはいかないようだった。
「それは宰相に打診しておこうではないか。そこでだ、マリー」
「なんでしょうか、お父様」
この場で決めずにおく父親は、私にも何か言いたげなようである。
「マリーがそう思うのであるなら、そちらでもそのように仕向けておいてくれないか? モモはまだ少し頼りないし、こればかりは本人たちの意思があった方が話が進みやすいからね」
なるほどと思った私だ。
小さい頃ならば家の方で勝手に決めてしまえるが、さすがに15歳という年齢になってしまえば、本人たちの気持ちの問題というのが生じてきてしまうわけだものね。
「でしたら、すぐにでもモモと話をします。お時間を取っていただいてありがとうございました」
「家族のためだから、このくらいは別に構わないよ。まったく、そんなよそよそしい言葉を使わないでくれよ、マリー」
父親にこう言われて、むずがゆくてつい視線を泳がせてしまう私。そんな私の姿に、父親は苦笑いをしていた。
とりあえず父親と話を済ませて部屋を出る私。こうなると次に向かう場所はモモの部屋だった。
モモの部屋の前に立って、扉を叩く私。
「誰ですか?」
中からモモの声が返ってくる。
「私よ、入って大丈夫かしら」
「お姉様でしたら問題ありませんよ」
モモが言葉を返してくるので、私は中へと入る。するとモモは勉強の真っ最中のようだった。さすがに3年生になって少し焦りを覚えているのだろう。座学の成績は赤点こそ回避しているものの、目も当てられたものではなかったからね。
「少しだけ話はいいかしら」
「はい、何でしょうか、お姉様」
椅子ごと振り返って私の方を見るモモ。その表情は真剣だった。そのくらいに勉強に集中してたんでしょうね。
その表情を見て、まったく別の話題をぶつけるのが少しはばかられた。とはいえ、これもモモの将来のためには必要な話。私は思い切って話題を切り出した。
「ねえ、モモ。いきなりの話で悪いんだけど、婚約者はどうするの?」
「えっ?」
モモは思いっきり面食らっていた。まぁ急にやって来てそんな話題をぶつけられるとは思わないものね。
「そうですね。もう卒業も近いですから、決めておきたいですね」
どうにか我に返ったモモが、私の話に乗ってくれた。
そんなわけで、後日改めて勉強の面倒を見ることを約束して、私はモモと婚約者について真剣に話をしたのだった。




