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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第七章 3年目前半

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第372話 思わぬ急襲

 ベジタリウス王国の王都イサヤは、思ったよりもサーロイン王国に近い。そのために北部地域まで行こうとすると、馬でも4日間ほどがかかる。馬車なら10日はかかりそうだった。

 一般人と思わせるためか、兵士たちの装備もそこまでガチガチにはなっていない。ただ、念のために柑橘魔石だけは身に付けてある。

 その柑橘魔石だけど、エスカが頑張ってくれたおかげで在庫はたくさんあるのよね。城の方にもアロマキャンドルがたくさんとかいう状態になっているんだもの。

 道中は順調。ただ、少しペースを上げているのか街にはうまく寄れない状態が続く。まあ、野宿の想定はしていたので問題はないけれど、王女であるエスカが居る状況でそれはどうかなと思う。

 ところが、エスカは意外と野宿を楽しんでいた。アウトドアは憧れだったのかしらね。

 そんなこんなで、目的地までもう少しというところまでやって来たのだった。

「作戦を決行する場所までもう少しでございます。みなさん、大丈夫でしょうか」

 精鋭部隊の隊長が声を掛けてくる。私たちは互いに顔を見合わせて、こくりと頷いておく。

 私たちは実際大丈夫なのだけど、メチルの様子だけはどう見てもおかしかった。

「テリアの魔力が、近くにある……」

 身を震わせているようだ。転生者の記憶が蘇ったとはいえ、元々のメチルがどんな扱いを受けてきたのかがよく分かる状態だった。

 半端者のメチルは、魔王四天王の中では最弱。それゆえに酷い扱いをされてきたのだろう。

 でも、それももう終わり。私たちの手でテリアを倒し、魔王の軍勢を弱体化させるのよ。

 本番に向けて会議を始めようとしたその時だった。

 ぞわっとするほどの恐ろしい魔力が感じられた。その正体が何なのか、確認してみるまでもなかった。

「キャハ、そちらから出向いてくれるなんて、超ラッキーじゃん」

 なんとも耳障りな声。メチルの震えが大きくなっている事からも、その声の主が誰かすぐ分かった。

「まったく~、敵に寝返るなんて、いけない子ね。いつもよりきついお仕置きをしてあげるわ」

 急に重苦しい声になると同時に、とんでもない魔力の波動が放たれる。

「くっ、向こうから出向いてきたというの?!」

 防護魔法を展開してどうにか防ぐ私。鍛錬を積んで強力になったはずの私の防護魔法が、一撃でひびを入れられてしまっていた。なんて重い一撃なのよ……。

「あははっ。この一撃を防ぐなんてすごいじゃないの~。厄介な連中ね、ここで死ね!」

 セリフの前半と後半とで温度差が違い過ぎる。

「あ、アルー!」

「任せて!」

 メチルが怯えた状態で必死に叫ぶと、アルーが飛び出てきて私の防護魔法を強化していた。

 バチンという大きな音が響き渡り、テリアの魔法が弾かれた。

「くっ、あたしの魔法を弾いてくれるなんて……。こういう時のために連れてきておいて正解だったわねぇ。しもべの皆さん、出ていらっしゃ~い」

 テリアがウィンクをすると、どこからともなくぞろぞろと人間たちが現れた。頭には麦わら帽子、手には鋤や鍬が持たれているので、近くの村の男の人たちだろう。

 しかし、一瞬驚いたけれど、私だって冷静よ。

「サキ様、あれを!」

「は、はい!」

 サキに持たせておいた柑橘魔石。それにサキの聖女の力を込めたものをあらかじめ用意しておいたのだ。

 私はサキにそれを投げさせる。

「ふふん、そんな石ころで何をしようっていうのかしら~?」

 ただの投石にしか見えなかったテリアは余裕の表情である。

 ところが、サキが放り投げた石ころ。それは地面に落ちると、一気に魔法を展開させていた。

「ぶはっ。な、なによこれ~っ?!」

 思わず上空に逃げるテリアである。

 地面では何かがもうもうと煙を立てている。

「いやぁ。何よ、この不快なにおいは……」

 テリアにとっても柑橘の香りは弱点のようだ。振り払おうとしてもがいている。

「おや、ここはどこなんだ」

「村に居たはずなのに、一体どういうことだ?」

 もうもうとした煙の中から、村人たちの声が聞こえてくる。

「はあ?! なんであたしの洗脳が解けてんのよ。さっきのわけの分かんない石のせいのね?」

 テリアがぎろりとサキを睨みつける。

「きぃ~っ! この役立たずどもと一緒に、お前ら全員消し去ってやるんだから!」

 空中に浮かんだまま、地団駄のような動きをするテリア。

「来るわよ」

 同じ闇属性を持つせいか、エスカがいち早く反応している。

 私が見上げると、両手を掲げて魔力を集中させているテリアの姿があった。

(やばいわね。あの魔力の塊をまともに受けるわけにはいかないわ)

 危険を感じる私だけど、はっきり言ってどうしていいのか分からなかった。

「むぅ、あの高さでは、近接攻撃の私では役に立てそうにないですね」

 サクラもまったくのお手上げのようである。脳筋の近接攻撃では、確かに空中への攻撃は不可能だから仕方のない話ね。

 だけど、こうやっている間も、テリアはどんどんと魔力を高めていっている。

 その時だった。

「サクラ様、この柑橘魔石をその剣でテリアに向けて打ち返して下さい」

「えっ、剣でそんな使い方を?!」

 サクラは驚いているが、悩んでいるような時間はなさそうだった。

「分かりました、アンマリア様。その案、乗りましょう」

 サクラは意を決したのだった。

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