第367話 のんびりお茶会
ある日のこと、私はライバル令嬢たちと勢ぞろいでお茶会を楽しんでいた。そこにはテールとエスカも参加しているので、少し賑やかだ。ミズーナ王女は今回は不参加である。王族ゆえに気軽に誘えないからしょうがない。
ならば、なぜエスカが居るのか。それは私と同居しているからなのよ。だから、私が誘われれば、ほぼ自動的について来ることになるっていうわけよ。
「はあ、手加減がありませんね……」
そんなお茶会だというのに、私はつい愚痴を漏らしてしまう。
「申し訳ございませんね。おば様ってば、強い方を見ると燃えてしまいますのでね……」
サクラが謝っている。脳筋なサクラでも、さすがにミスミ教官の特訓はやりすぎかなと思っているようだ。
まだ15歳の未熟な少女を相手に、真剣を用いて訓練するような人はまずいないからね……。
そんなわけで、せっかくのお茶会だというのに、私は少々機嫌が悪かった。
そんな私の事を、サキやテールがじっと見つめている。一体どうしたというのだろうか。
「二人とも、どうしたのかしら」
私は思わず口に出してしまう。すると、二人はすごく言いにくそうにしながら私の方を見ている。一体どうしたというのかしら。
「サキ様もテール様も、はっきり言われた方がいいですよ。アンマリア様ってば、先程からかなり食べられてますからね」
「えっ」
ラムに突っ込まれて、改めて私は自分の手元を見てみる。
するとそこには、お菓子が山のように積まれた皿があった。どうやら私は無意識にたくさんお菓子を食べていたようだった。
「ふふっ。アンマリアってば、そんなに食べるとまた太りますよ。あなた、確か太りやすい体質だったでしょう?」
「うぐっ!」
エスカがにやにやと笑みを浮かべながら指摘してくる。その言葉に思わずお菓子を詰まらせそうになってしまった。隣に座っていたモモが慌てて紅茶を差し出してくれたので、私はそれを飲んで事なきを得た。
「エスカ王女殿下~?」
落ち着いた私は、エスカにジト目を向ける。するとエスカはにこやかに笑ってごまかしていた。
「あのですね、ごまかすくらいなら不用意な一言はやめて頂けませんかね」
私は諫めずにはいられなかった。
エスカも私と同じ異世界からの転生者とあって、ツッコミを入れやすいものね。
「お姉様、エスカ王女殿下の仰る通りですよ。苛立っているとしても、あまり暴食をされるのはよろしくないと思います」
ところがだ、モモにまで叱られてしまう状況だった。まあモモは、私の太っていた時期もじっくり見てきていたものね。あの頃の痩せるための努力を見てきたからこそ、ここまで言葉が強くなってしまうのよ。
「うう、モモがそこまで言うのでしたら、やめておきましょうかね……」
私はどうにかお菓子を食べる手を止める。
「ふふっ、アンマリア様ったら。多少食べても構いませんのですよ。今日のお菓子はわたくしの普段食べているお菓子ですし、ほら、わたくしも太りやすい体質ですから……ね?」
そこにすかさず救いの手を差し伸べるラムである。
そういえばそうだった。本来のラムは90kg前後の体重をキープしている立派な体型の令嬢だったのだ。
しかし、この世界ではすっかり痩せてしまっていて、ほっそりとした見事な体型を維持し続けている。バッサーシ流の筋トレを今も欠かしていないとからしいので、実に涙ぐましい努力があるのだろう。
「ま、まあ、主催であるラム様がそこまで仰られるのでしたら……」
主催に言われてしまえば、食べないわけにはいかない。主催と来賓という関係ではある上に、公爵令嬢と伯爵令嬢という立場の差もある。
そんなわけで、私は遠慮なくお菓子を頬張る事にしたのだった。
「ただ食べたいだけでしょうに……」
エスカがぼそりと文句を言っても聞き流す。主催の許可もあるし、今日の私はストレスで食べなきゃ気がすまないのよ。
私のあまりの食いっぷりに、みんなドン引きしていた模様。
そんな私たちのお茶会に、途中で一人参加していなかったミズーナ王女がやって来た。
「話に聞いていた通りですね。みなさん、こちらにいらしたのですか」
突然聞こえてきた声に、私たちが反応して目を向ける。すると、ミズーナ王女の手には手紙のようなものが見える。
「これはミズーナ王女殿下。ようこそおいで下さいました」
慌てて立ち上がって挨拶をするラム。それと同時に、使用人に椅子を持ってくるように指示している。
しばらくして椅子を持って使用人が戻ってくる。ところが、ミズーナ王女は既に椅子に座っており、代わりにアンマリアが立って待っていた。その様子に思わず首を傾げる使用人である。
椅子を運び終えた使用人は、不思議そうな顔をしながらお茶会の場から去っていった。
「さてと、ミズーナ王女殿下。今回はどのようなご用件でしょうか。お茶会に乱入されるのですから、それなりの用事かと存じます」
意外と厳しめの事を言うラムである。さすがは礼節を重んじる公爵令嬢といったところだろう。
その厳しい表情のラムに対して、ミズーナ王女は平然とした顔で対応している。こっちもさすが王女といった感じだ。
「はい、実はお母様からお手紙が届きましてね。ちょうどみなさんがお集まりになっているようですから、お邪魔させて頂いたというわけです」
人差し指と中指で手紙を挟みながら、ミズーナ王女はにこやかに笑っている。
はたして、ベジタリウス王妃から届いたという手紙には、何が書かれていたというのだろうか。




