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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第七章 3年目前半

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353/389

第353話 聞き流された発言

 メチルの話はまだ続いている。

「私以外で活発に動いているのは、サーロイン王国の中に入り込んだテトロですね。呪具の扱いに長けている魔族です」

「そっか、テールとその家族に呪具を仕掛けたのはそいつってわけね……。許せないわね」

 メチルの証言に、エスカが苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「ゲームの中での彼の動きは、王子の誕生日パーティーに乗じて反乱を起こす事です。サーロインの三人の辺境伯の誰かを呪具で操って仕掛ける事になります。もうそろそろフィレン王子の誕生日ですので、起きるとすればそこかと」

「なんて事なの」

 説明を聞いたサキが声を上げている。

「ただ、この辺りはなぜか覚えていないんですよね。特定だったかもしれないし、ランダムだったかもしれない。とにかく、辺境伯の誰かが騒ぎを起こす事になると思われます」

 これにはさすがに場が静まり返ってしまう。私は先に聞いていたとはいえ、伝手がない。伝えたとしても信じてもらえるか分からなかったので、手の打ちようがなかった。

「テッテイの様子は見てきましたけれど、特に変わった様子はなかったのでこちらは問題なさそうですね」

 メチルの証言に、私やサキはほっとひと安心だった。なにせ友人の家なのだから、気になってしょうがないというものだ。

 しかし、サーロイン王国には辺境伯は三家存在する。北西のバッサーシ家、南のサングリエ家、そして北東である。

 北東の国はゲーム中にまったく出てこないとはいっても、ここは現実世界。警戒をしておくに越した事はない。

「私が柑橘の香りで気分が悪くなったように、おそらくは柑橘の香りがあればテトロや呪具の力を軽減や無効化ができるかと思います。実際、バッサーシ辺境伯邸の柑橘の香りの漂う魔石はかなり強力でしたからね」

 思い出したメチルの顔が青ざめていた。

 その顔を見て私は思った。どんだけ魔族にとって柑橘が毒なのよ、と。

 しかし、そのメチルの顔のおかげで、魔族に対する対抗手段が見つかったのだ。これは吉報と受け取るべきかしらね。

 だけど、私以上に嬉しそうな顔をしているのがエスカだった。

 それもそうでしょうね。なんといってもエスカはアロマを売り込もうとしていたのだから。そのアロマのために目をつけたのが、ファッティ領の柑橘類。その柑橘類が魔族特効を持っているとなると、そりゃそうなるわよねといった感じである。とにかく笑顔が怖い。

「うふふふ、ここは私の出番のようですね。前世の趣味たるアロマを徹底的に広めてあげるわよ」

「あら、エスカ王女もアロマをたしなんでいましたのね」

 不気味な笑みで呟くエスカの言葉に反応するメチルである。

「社畜には癒しが必要なのよ」

「分かります」

 拳を握りしめながら訴えるエスカに、即同意するメチルである。どうやら気が合ってしまったようである。

「前世とか、社畜とか、一体どういう事なのですか?」

 エスカが思わず漏らしてしまった言葉に、ベジタリウス王妃とサキが反応してしまっていた。そういえば、この世界の人物もいたのである。エスカってば、ついそれを忘れてしまっていたようだった。

「エスカ、本当に不用心ですね」

 しまったという顔をしているエスカに対して、ミズーナ王女が両手を腰に当てながら呆れていた。

「この際だから言ってしまいます。私とアンマリア、それとエスカも、メチルと同じように前世持ちなのですよ」

「えっ、ええ?!」

 ミズーナ王女が爆弾発言をすると、サキが目を丸くして顎が外れんばかりに叫んでいた。

「やっぱり、熱を出した時に娘は死んだのですね」

「お母様、私は死んでいませんよ。死にかけはしましたけれど」

 ベジタリウス王妃の言葉を即否定するミズーナ王女である。

「あらそうでしたのね。ごめんなさい」

「さっきのメチルの話からすればそう思うでしょうけれど、本当に死んでませんから」

 ミズーナ王女の手がツッコミの形で虚しく宙を叩いている。間にメチルが居るので、王妃にはどうしても届かないからだ。

「とりあえずその話はいいとしましょう。問題は魔王とその配下の魔族をどうにかする事なんですから」

 話が逸れそうになるので、私は必死に話を戻す。

「そうね。とりあえずは私の魔法を使ってアロマを大量に作っておきましょうか」

「それがいいと思いますね。搾る時に大量の香りが浮かぶので、魔石に吸着させておけばそれも魔族除けにできそうですし」

「あっ、もしかしてバッサーシ辺境伯邸の食堂の香りの原因って……」

「ええ、あそこにその香りの魔石を置いたんですよ。みんな集まる場所だからそこがいいだろうということでね」

 思い出したように話すメチルに、私は事情を説明しておいた。

「確かに、食堂はたくさんの人が集まりますし、ほぼ確実に1日1回は立ち入りますものね」

 ベジタリウス王妃も納得している様子だった。

 流れのせいではあったものの、この世界の人間に転生者だという事をばらしてしまった。とはいえ、話の内容のせいでかなりさらっと流されてしまったようだった。

 とにかく私たちは、これから起こるだろう魔族たちの襲撃に備えての対策をしっかりと話し合ったのだった。

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