第343話 ひとまず相談を
私としては防護魔法を新たに張り直したので帰ればいいだけな話なんだけど、ここに来てとんでもない話に巻き込まれてしまった。なので、エスカに渡されていた道具を使ってエスカに連絡を取る。
「もしもし、エスカ。聞こえる?」
しばらく返答がない。距離が遠すぎたのか、それとも防護魔法によって障害が出ているのか。いずれにしても返答がしばらくなかった。
改めて連絡し直すかなと思ったその時、魔道具から声が聞こえてきた。
『ごめんごめん、なんだった?』
エスカの声が聞こえてきた。
「よかった。何かしら障害が出てるのかと思って心配になっちゃったじゃないのよ」
『お花摘みよ、お花摘み。で、一体何なのよ、アンマリア』
返ってきた言葉を聞いて、なるほどなと思った私。それはすぐには出られないはずだわ。
納得しつつも気を取り直して話を始める。
「防護魔法を掛け直したのはいいんだけど、ちょっと予想外な事が起きちゃったから、帰るのが1日遅くなるわ。お父様やモモたちに伝えてもらっていいかしら」
『……オーケーオーケー。アンマリアってトラブル体質なのね』
「褒めてないわよ、それ」
エスカの言葉に、露骨に嫌な声色で返す私。するとエスカは慌てたのようにわざとらしく咳き込んでいた。
『それで、遅くなる理由って何?』
「それはね……」
本題に切り込んできたエスカに、私はとりあえずベジタリウス王城であった事を伝える。すると、エスカはしばらく言葉を失っていたようだった。
その気持ちは分からなくはない。私だってよく分からない事で頭が痛いんだから。
『……RPG仕様の拡張版って何なのよ。そもそも拡張版の事すら知らないのに、頭が痛くなってくるわ』
私と同じ反応をしている。私たちって同程度っていう事なのかしら……。なんか嫌だわね。
『分かったわ。とりあえずミズーナに確認を取ってみるわ。あの子なら拡張版の事を知っていたわけだし、そのジャンル替えってやつも知ってるかもしれないわ。モモたちの方にはうまく伝えておくから、帰る時になったらまた連絡ちょうだい』
「了解、そうさせてもらうわね」
そう言って私は通話を切る。
初めはとんでもない事をしてくれたとは思ったものの、このスマートフォンもどきが役に立つとは思ってもみなかった。まったく、何がどう転がるのか分からないというものだった。
ひとまず、家の方への連絡はエスカがしてくれると信じて、私は王妃の元へと向かう。
「失礼致します、アンマリアです」
「アンマリアですか、お入りなさい」
許可が下りたので王妃の部屋に入る。すると、そこには意外な人物立っていた。
「うわっ。……って、確かメチルでしたわね。どうしてここに?」
そう、さっき魔族だと正体を打ち明けたメチルが王妃の部屋に居たのである。これにはさすがに驚かざるを得なかった。
「うふふふ。素直ないい子に感じましたのでね、私の専属侍女にしてみましたのよ。もちろん、まずは見習いですけれどもね」
「王妃殿下、さすがにそれはどうかと存じ上げます」
渾身のツッコミを入れる私。しかし、王妃はまったく動じずに笑っていた。
「十分に信用ができないから、私の手元に置くのではないのですか。何かおかしいかしらね」
「十分おかしいと存じます」
王妃の言葉に即ツッコミである。胃が痛いわ。
「まぁまぁ、それよりもアンマリアは今日は泊っていくのでしょう?」
「はい、テレポートに防護魔法の張り直しで消耗しましたので、ひと晩だけお世話になるつもりでございます」
私の返答を聞いた王妃が、にこにこと笑っている。
「それでしたら、今日はアンマリアと一緒の部屋で休みなさい。なんだか同じような雰囲気を感じますからね」
「えっ?!」
王妃の言葉に、思わずどきーんと心臓の止まる勢いの私とメチル。まさか、同じ転生者だと気付かれたのだろうか。
だが、おそるおそる見てみると、王妃はただただ笑っているだけだった。この分では、どこか似たような雰囲気を感じただけだったのだろう。ほっと胸を撫で下ろす私とメチルだった。
「それにしても、思った以上に侍女服が似合っていますね。ふふっ、どのような侍女になるの楽しみですよ」
王妃が笑うものだから、メチルはなんとなく恥ずかしくなって顔を赤らめてしまう。
どうにも見ていられなくなった私は、メチルと王妃の間に入り込む。
「今日は疲れているので、私も彼女も休ませて頂きます。仕事を覚えてもらうのは明日からにした方がよろしいと存じます」
私がそう言い放つと、王妃はちょっと驚いて固まっていたものの、すぐに笑みを浮かべて私の意見を受け入れてくれた。
「そうですね。今日のところはアンマリアにお任せします。では、下がりなさい」
「はい、失礼致します」
私はそう言って、メチルの手を引いて王妃の部屋から出て行った。
以前に女神から聞かされていた魔王の存在。その配下である四天王を名乗る魔族が登場した事で、いよいよその存在が確実なものとなってきてしまった。
はたしてこの世界と私たちはどうなってしまうというのだろうか。




