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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第七章 3年目前半

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第339話 飛んでイサヤ

 決意をするや否や、メチルはイサヤに向けて旅立っていた。死にたくない一心で必死なのである。

「ご主人様、ずいぶんと急ぎますね」

「仕方ないですよ。私はもう、あの人たちとは一緒に居られませんから。……もう魔王様とは関係ありません。私は、私なんです」

 前世の記憶を思い出して自分の運命を知ってしまったせいか、メチルはとても焦っているようだ。

「この後の私はどのみち死んでしまうんです。だったら、少しでも助かる方法を選択したくなるじゃないですか。……私は聖女まがいの事をしているんですからね」

「というと、どうなさるおつもりですか?」

 飛びながら前をしっかり見ているメチルに、アルーが問い掛ける。

「本物の聖女になるんですよ。もうそれしかないんです」

 メチルの発言に、アルーは黙り込んでしまう。

「……ご主人様がそう思われているのでしたら、私はついて行きます。ご主人様が死ねば消える私なんです。ご主人様と一緒に大暴れしてやろうじゃないですか」

 メチルの方でにししと笑うアルー。その顔を見て、メチルもつられて笑ってしまう。

「さあ、この分ならもう少しでイサヤに到着しますね。……私は必ず生き延びてみせますよ」

「ファイトです、ご主人様」

 アルーに励まされながら、メチルはベジタリウス王国の王都イサヤをひたすら目指した。


 魔族の本拠地から1日くらいだろうか。決して近い距離ではないものの、そんな短時間で飛びきってしまった。

 ただ、王都まで飛んで突撃すると確実に怪しまれるので、アルーには隠れてもらった上で、地上に降りて歩いて王都に近付く事にした。

「ご主人様、お気をつけて」

 そう言って姿を消すアルー。そのアルーの居た場所をじっと見ていたメチル。

 改めて王都を視界に入れると気合いを入れ直していた。

 門に近付くと、当然ながら門番に止められてしまう。

「何者だ。怪しい奴め」

 驚く一方、やっぱりかと思うメチルである。正攻法で入ろうとしたが、そうすんなりいくわけがないのである。

「私は旅の治癒師でございます。怪しい者ではございませんので、入れて頂けませんでしょうか」

 メチルはどうにか考えた言葉を喋って中に入ろうとするが、見るからに怪しいので門番たちが顔を歪めて相談し合っている。

 話が終わった門番は、片方がメチルに近付いていく。

「よし、治癒師というのなら、この傷を治してくれないか?」

「……分かりました」

 イサヤの中に入る事が目的なメチルは、門番の要求を呑む。

 門番が手甲を外すと、そこには大きな傷跡が残っていた。

「昔に魔物と戦って負った傷だ。これのせいで門番しか仕事が回ってこなくなってな、治らないし手が動かしにくいでたまったものじゃないんだ」

 傷跡を見て思わず口を押さえてしまうメチル。転生者の意識のせいで耐えられなかったのだろう。しかし、門を突破するためだと必死に我慢する。

「……腕を出して下さい。治してみせます」

「大丈夫か? 顔が青ざめているぞ」

「大丈夫、です。あなたの苦労に比べれば、この程度……」

 歯を食いしばって門番の腕に手をかざすメチル。

「少し動かないで下さいね」

 そういって、力を集中させて魔法を使うメチル。

 とはいえ、ここまで丸1日かけて飛んできた疲労があるので、少し集中が悪い。

(ここでこの怪我を治せなければ、イサヤへ入る事など叶わないわ。私はエセ聖女なんかじゃ、ない!)

 気合いで魔法を発動させると、門番の腕の傷跡がじわじわと消え始めていた。これにはさすがに門番たちもびっくりである。

「おおおっ、動く。腕が動くぞ!?」

 すっかり傷が治り、ぶんぶんと腕を振り回す門番である。

「痛みもない。いやありがたい。おい、城に使いを出すんだ」

「おうともよ!」

 嬉しさのあまり、門番がとんでもない事を言い出した。

(あれ? 今、城とか言いませんでしたかね。私、もしかしてやらかしました?)

 思わず目が点になるメチルである。

(でも、城に入れるのなら逆に好都合。王家に取り入って何としても生き延びてみせるわ)

 待っている間、心の中で押忍と言わんばかりの気迫を見せるメチルだった。

 しばらくすると、なんとも豪奢な馬車がやって来て、目を見開いて口をパクパクとさせるメチル。予想外な待遇になりそうで怖くなった。

「お待たせ致しました。ベジタリウス王国文官が一人セローと申します。そちらの門番の傷を回復させたのは、あなたですね。どうぞ、こちらの馬車にお乗りください」

「は、はい。分かりました」

 メチルは言われるがままに馬車に乗り込む。すると、馬車は城へと向けて進み出した。

 とりあえずベジタリウス王城に入り込むという目的は達成できそうである。これでサンカリーの目もごまかせると、メチルはほっと胸を撫で下ろした。

 ところがだ、ベジタリウス王城に差し掛かったところでの事だった。

「ぐっ……」

 思わず走った痛みに声を出してしまうメチル。

「どうかなさいましたか?」

「いえ、長旅の疲れが出ただけだと思いますので、お気になさらずに」

 セローに気遣われたメチルは、にこやかな顔でごまかしておく。

(今のは結界だわ。おかしいわね、ゲームではこんな事なかったのに……。一体誰がこんなのを仕掛けたのかしら)

 疑問に思うところもあるメチルだったが、ベジタリウス王城に潜入するという第一の目的を達成した事を静かに喜ぶのであった。

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