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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第六章 2年目後半

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324/394

第324話 柑橘満喫

 ちゃちゃっと説明を済ませて、搾油のための道具の製作依頼を終わらせた私たち。ミズーナ王女とは別れて、私たちは家に戻ってきた。

「さて、道具ができるまでは自力でなんとかするしかないわね」

 家に戻ったエスカは、私たちも巻き込んで自室へと戻る。

 というのも、道具ができ上がるまでは時間がかかるので、仕方なくエスカは自分の魔法を使ってオランやレモネから油を搾る作業を行う運びとなったからだ。ちなみに当然のように私も付き合わされている。モモは火の魔法しか使えないので、テールたちの様子を見てくるようにお願いしておいた。

 おかげさまで、夕食の席では私とエスカは全身から柑橘の香りを漂わせてしまっていた。どれだけの量の皮を搾ったのか思い出せないくらいだから、当然のようににおいが染みついてしまっているのだった。

 両親は困惑した顔をしているけれど、モモとエスカは特に気にした様子はない。テールは首を傾げていたけれど、タミールはにこにことした顔をしていた。それぞれで反応が違っていた。

 おそらくタミールは実家がファッティ伯爵領なので、柑橘に包まれてきたからこその反応なのだろう。私はちょっとクスッと笑ってしまった。


 食事を終えて部屋に戻ると、エスカに再び呼ばれる。まったくなんだというのかしらね。

「アンマリア、この搾った油の事でちょっと頼んでいいかしら」

「どうするっていうのよ」

 エスカの頼みに、素直な質問をぶつける私。エスカと違ってアロマには詳しくないからね。

「闇魔法で圧縮しただけ搾っただけだから、皮の破片とか汚れといったごみが混ざっているでしょ。それを取り除いてほしいのよ」

「まあ、それくらいなら」

 油を入れた小瓶の蓋を開けて、水魔法で油から汚れだけを取り除いていく。油なので水とは混ざりにくいし、魔法だから特殊な事もできるものね。油の中を撫でまわすようにして、私は魔法でごみを取り除いた。

「サンキュー。これで固めてやればアロマキャンドルができるわ。このまま香水にしてもいいんだけどね」

 私が蓋を閉めてから返すと、エスカはとても喜んでいた。

 それにしても、かなりの量を搾ったというのに採れた油はかなり少なかった。なにせ小瓶を満たすにも足りなかったんだものね。

 でも、エスカがものすごく喜んでいるので、それはそれでよかったかなと思う。すぐに不機嫌になっちゃうからね、あの王女様は。

 私がそんな事を思っていると、急にエスカが振り返る。

「今、すごく失礼なこと思ったでしょう?」

「な、何も思ってないわよ」

「ほんとに?」

 エスカがずずいっと顔を近付けてくる。あまりに顔が近いものだから、私は勢いに押されてちょっと後退ってしまった。

 あまりに驚く私に、少し経ってからようやく身を引くエスカ。

「しょうがないわね。そういう事にしておいてあげる」

 そして、オラン油とレモネ油の入った小瓶を収納魔法にしまう。

「ろうそく自体はあるからキャンドルを作るのは楽なんだけど、アロマ香水は難しいかなぁ……」

 しまい終わると腕を組んでうんうんと唸り始めた。

「香水の方は難しいのかしら」

「作り方は簡単なんだけど、材料がねぇ……。無水エタノールと混ぜ合わせるんだけど、この世界じゃ作るのは困難でしょうからね」

 困った顔をするエスカ。

「エタノールって、つまりはアルコールだからお酒よね?」

「そうだけどね。無水っていう名前の通りに水を含まないエタノールなのよ。エタノールってすぐ気化……蒸発しちゃうから、保存も難しいのよね」

「なるほどね」

 エスカの話を聞いて、納得してしまう私だった。私たちはまだ14歳だし、お酒には早いから手に入れるのも難しい。それこそ商会でも通さないといけないというわけだった。

「私たちでも手に入れやすい、アロマキャンドルからにしましょうか。火の扱いさえ気を付ければ、問題はないものね」

「だったら、また明日商会へ?」

 私が確認すると、エスカは首を横に振った。

「この屋敷にろうそくがあればそれを使いましょう。明かりだったら魔石でも十分間に合うわけだし」

 なるほど、確かに魔物の魔石ならたくさん収納魔法の中に入っている。それを明かり代わりにするのなら、明かり取りのろうそくは要らなくなるものね。考えたものだわ。

 そう思った私は、エスカの意見に賛成しておいた。

「よし、とりあえずキリもいいし、今日はここまでっと」

 エスカはそう叫びながら、私の方を見る。

「ありがとうね、アンマリア。私だけじゃ作れなかったわよ」

 エスカはお礼を言いながら、今日一番の笑顔を見せていた。

 なんだかんだいっても、こういう笑顔を向けられると気分がいいものだわね。

「まぁ友人だしね、これくらいはいいわよ」

 私がこう返すと、エスカは終始ニコニコとしていた。

 もう時間的に遅くなったので、私たちはこのまま部屋に戻って休む事にした。自分たちが柑橘系のにおいを強く漂わせていた事を忘れていたのだけど、不思議とこの日はすんなり眠れた気がしたのだった。

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