第310話 2年生はどうなのか
私と同級生である2年生たちが入ってきた。みんな気合い十分な様子だ。
「前期末と同じ装置ですか。今度こそ全部撃ち落して差し上げますよ」
入ってくるなり強気なラムである。前期末でミズーナ王女と同じ19個の的を撃ち落しているのだから、これは当然の目標でしょうね。
「さすがラム様。これが公爵令嬢なのですね」
「お、俺たちだって負けてられないぞ」
ラムの気合いの入り方に、同級生たちの反応は様々だった。
そんな同級生たちの様子を見ながら、私は実技試験の装置の調整をしていく。とはいってもちゃんと動くかのチェックだけなので、難易度の調整なんかは行わない。それは不公平になるからね。
「ふふん、来たわね。今回も私が調整したこの試験装置が、魔法試験の相手を務めさせてもらうわ」
私は両手を腰に当てて偉そうに構えている。
「お姉様、きっと私は超えてみせますからね!」
モモはびしっと私を指差して宣言してくる。いやまあ、この装置を相手にして超えるっていう表現が分からないわね。多分20個全部撃ち落すって事でいいのかしら。私はついつい苦笑いをしてしまう。
「意気込むのもいいですけれど、今回は私が先陣を切らせて頂きます」
モモを押さえて出てきたのは、なんと聖女という立場にあるサキだった。
「私は聖女です。みんなを導く立場なのですから、規範を示させて頂きたく思いますのでね!」
(あっ、なるほどそういうわけなのね。でも、気合い入りすぎてるわね……)
サキの姿と宣言に、私はとても納得がいく。とはいっても、私は遠慮するつもりはないんだけどね。
ミズーナ王女やエスカたちを苦しめた実技試験の装置、しっかりと味わってもらうわよ。
そんなわけで、サキが実技試験の装置に向かい合う。私の魔力を使っている舞台装置は、的が止まっていない。常に動き続けているので、ただ的に当てるよりも難易度が高いのよ。
サキの結果は20個中15個。前期末よりは成長しているわね。
「むぅ、やっぱり攻撃系は難しいですね……」
試験を終えたサキはこう感想を漏らしていた。サキは補助系の魔法が得意だから仕方ないけれど、それでも4分の3を落とすのはさすがだと思うわ。
「よーし、次は私よ!」
意気揚々と出てくるモモ。サキに負けていられないとばかりに気合い十分である。
モモは試験装置に向かって杖を構えている。私がプレゼントで贈ったやつだわ。
「お姉様、勝負です!」
いや、だから何の勝負なのかしら。
突っ込みたい気持ちは山々だけど、私は無言で実技試験を始める。
突如として始められた試験に慌てるかと思ったけど、モモは実に冷静に対処していた。
次々と撃ち抜かれていく的。さすが勝負とか意気込んでいただけの事はあると思うわ。
結果として17個だった。やっぱり後半にガス欠を起こして魔法の威力が落ちていた。当たったところで魔法がかき消されていたからね。それでも、ガス欠になるまでの時間が延びていたので、間違いなく成長はしているようだった。義理の姉妹とはいえ、妹の成長は嬉しい限りだわ。
終わった後に悔しい表情をしながらも私に近付いてきたので、しょうがないなという感じでモモの頭を撫でておいた。嬉しそうに微笑んでいたので、よしとしましょうか。
この後も、他の学生たちの実技試験が続けられていった。さすがに前期末よりはみんな腕が上がっているようで、みんな1~2個は多く的を落とせるようになっていた。テールはそれを一生懸命記録につけていた。
「さて、最後はわたくしですね」
満を持して出てきた公爵令嬢ラム・マートン。もうその姿からは自信が満ちあふれているというくらい堂々としている。
どんと構えるラム。本来ならばとんでもなく太っているはずのラムだけど、すっかり細くなってしまったラムでもかなり大きく見える。それが公爵令嬢というものなのだろうか。
そして始まった魔法実技試験。ラムは冷静に的を撃ち抜いていく。
さすがは前期末で19個の的を撃ち落している実力者である。今回も順調だった。
「こんなものですわね」
試験が終わった時、あまりのすごさに場が静まり返ってしまった。
そう、ラムはついに初めてのパーフェクトを叩き出したのである。
「ふふっ、前回の反省もありまして、的を追いかける魔法弾を開発しましたのよ」
なるほど。的の直前で軽く曲がっていたのはそういうわけなのね。さすがは風の魔法を得意とするラムだわ。
そんなこんなで2年生も無事に実技試験を完了する。〆にまさかのパーフェクトとは、私も驚いたわよ。さすがはライバル令嬢たちは一筋縄でいかないわね。
その後行われた3年生の魔法実技試験が物足りなく感じられたのは、間違いなくラムのせいだろう。
それでも3年生も前期末に比べれば全体的に成績が上がっていたのだけれどもね。
何にしても2年生の授業も無事に終われてよかったわね。残るは成績発表だけだけど、モモやエスカは大丈夫なのかしら。
私は戦々恐々と翌日の成績発表を待つ事にしたのだった。




