12
それから私達は、1回戦の勢いのまま、2回戦、3回戦と勝ち上がり、ついに準決勝まで来てしまった。
ここまで勝てたのは嬉しいけど、この歳でここまで来ちゃうと、すっごく目立つ気がする。
「準決勝第1試合を始めます、選手の方は準備をお願いします」
「あ、もう開始するの、休憩させてよ」
「メアちゃんごめんね、今年人数多いから、少し急ぎ目なの、決勝まで行けば少し休憩出来るから、頑張って」
身体中包帯巻きの変態が横から謝罪する、うん、なんだろう、ごめん、ここまでボコボコにするとは思わなかった。
「メアちゃん、変態アミリーなんて気にしてないで行きなさい、また遅刻で言われるかもよ」
「はーい、いってきます」
アミリーを抑えてる母に手を振って入口に向かう、途中で、試合から戻ってきたマリスくんにあって、ハイタッチした。
「お待たせ致しました」
案内係の人に声をかけ、準備完了を伝える。
「お、早いね、今回も素手かい?」
「いえ、今回からはこれを」
そう言って私はある物を見せる
「へぇ、短剣……にしては小さいな、それに2本も、これで戦うのかい」
「はい、楽しみにしててくださいね」
ニッコリと笑い返して、術式内に入った。
「んー可愛いね、大きくなったらモテるだろうな」
そう言って見送る、案内係の人でした。
さて、術式内にはもう相手の人が待っていて、試合が直ぐに始まる……ってパターンじゃなく、今回は私が先に来て相手を待ってるパターンだ。
「む、さすがに早かったかな?」
「そうでも無いよ、それに相手の人も来たみたいだし」
「おう、待たせたな」
「あ、おねがいしま……す」
動きやすい服に長い髪、程よくついた筋肉、そして手に大きな傷がある男性、一見隙だらけに見える立ち振る舞いだが隙がない。
「ほうほうほう、やっぱり似てるな、ということは、お前がティモンの娘かー、この歳であそこまで動けるとは流石だな、あいつのことだ、溺愛してるんだろうなぁー」
「お、おじさん、パパの事知ってるけど誰?」
「おお、そうだった、俺はゼルト、お前のお父さんに剣術を教えた師だ、本来ならこんなの参加しないんだが、娘がなどうしても出たいと言うのでついでに出たわけだ」
「え? 娘?」
「娘が見に来てるんだが、えーと、あ、いたいた、あそこ」
「あ、あの子って」
ゼルトが指さす方を見ると、子供の部で優勝した女の子が居た。
あの子がゼルトの娘さんだったの、似てないわ! いや、髪色は同じだし全く似てない訳ではないけど、それでもちょっとな、うーん。
「いやぁな、娘を祭りに連れて来らな、なんか強敵がいる予感がする、って言い出して仕方なく子供の部で参加させて、俺は大人の部にでたんだが、娘の言ってた、強敵がお前さんと、あのちっこい剣士らしいんだ、だから少し悔しがってたぞ」
「そうなんだ、それは申し訳ないです」
うん、ほんとに申し訳ない、期待を壊しちゃったし、あとで謝っておこうかな。
「と、少し長話になっちゃったな、そんじゃよろしくな、いくらティモンの娘だからといって、手加減する気はないからな」
「いえ、望むところです」
パパの師匠と戦えるなんて、面白いことじゃん、手加減される方が勿体ない。
「これより、準決勝第1試合を開始します、両者準備はいいですね、それでは、始め!」
審判の大きな声と同時に2人は動いた。
拳と剣がが交わる、互いが互いに攻撃を防ぎ、防御を縫って攻撃をするを数回繰り返す。
経験と力の差を活かしたゼルトの方が、有利になってきたので、私は距離をとる。
やはり予想した通りこっちの強化魔法がゼルトの剣にあたる度に消えていく。
「へぇ、さすがに知ってるのか、バフ剥がしの存在を」
「えぇ、まぁ」
知ってるも何も、パパの得意技だからね。強化魔法に便りすぎるなってよく言われてるし。
「うん、実に面白そうだね」
「そんな余裕直ぐに無くなりますよ」
魔力を乗せた攻撃がぶつかり合う、物凄い衝撃に審判の人が吹き飛ぶのが見える。
「くぅ」
ゼルトは私の攻撃に合わせるように動き、攻撃を全て防いだ。
心を読まれてるような気持ち悪さ、とてもやりずらい。
「それなら」
手に光の魔法を纏わせ、突っ込むとゼルトもまたカウンターをする構えを取る。
「はああ!」
「甘い」
「しまった」
動きにして最小の手順で足払いをされた。予備動作が全くなかったので引っかかってしまった。
「とどめだ」
「くぅ」
本当は決勝まで取っておきたかったけど奥の手を使うしかない。
ゼルト剣が届く瞬間、私の身体は影の中に沈む。
複合魔法で影に自分を隠す魔法、影の中では呼吸ができず、魔力の消耗が激しいから余り実戦向けじゃない初見殺し魔法。
私はゼルト後ろの影に回り込み、拳を当てる、身体に触れた瞬間、爆発が起きゼルトは吹き飛ぶ……はずだった。
「え、きゃ!」
「へーなるほどね、これは強い流石だね、やはり戦いはほんと飽きない」
「ケホッケホッ」
な、あの体制から流したというの、絶対に防げないと思って打ったのに、化け物かこの人は!
まずい、ダメージ与えてかつ距離を取るつもりだったから、防御が出来なかった。どこか折れたりすることはなかったけど、そう何度も受けれないよ、ヤバすぎだよほんと。
「さて、次の攻撃しておいで」
ゼルトは指を曲げ、明らか挑発するように言った、来いと言われてもまだ痛みとか残ってて無理なんですけど。
「今行きますから待って下さいよ」
身体の回復を待ちながら次の手を考える、多分今の身体じゃ色々足りなくてこの人に勝てない。
「お待たせ致しました、こっからがほんばんですよ」
そういい、腰につけた鞘から2本の短剣を取り出した。
この2つの剣は前世の私、そう、母が使ってた愛用の短剣を素材に使って作ったのもで、私の誕生日の時に貰った剣である。
そして前世とは違い、娘に厳しい教育をした、2人の親のおかげで、剣術と魔法どっちも使えるようになった。
「ここからが本番だよ」
「雰囲気が変わったね、どんな技かな」
剣に魔力がまとったことにより空気が変わったのが分かったのか、ゼルトは防御体制を取った。
カウンターをいつでも使える状態にしていた、ここまでゼルトは自分から仕掛けることは少ない、基本様子見でしか攻めず、相手の攻撃を利用するカウンターが得意な人だと思う。
だからこそ、越えたい。勝ちたい。
「な!」
動き出すと同時に後ろに回り込む。
「はああ!」
「くぅっ」
ゼルトは避ける余裕もなく攻撃をくらうが、何とかその状態から剣を叩き込む、しかしその時にはもう私の姿はない。
「はあああ!!!」
「うりゃあああああ」
互いに魔力を剣にまとわせる。
ゼルトは赤い雷、私は青の炎、二つの剣がぶつかり合った瞬間大爆発が起こる、爆風で2人は吹き飛び、転がる。
「はぁはぁ、割と本気で打ったのに、砕けるどころかひび1つないなんてね、どんだけ硬いんだよその剣」
立ち上がった師匠は、私を少し見てから剣の方をじっと見る。
それを私の攻撃を防ぐのに使ったとはいえ、ヒビ1つ入るどころか汚れすらついていない私の剣、そして師匠が驚いてたのは私自身にもある。
「はぁはぁ……痛っ、よし治った」
「はは、ルール違反じゃないからいいけどさ、こりゃ参ったね、一撃で気絶まで持っていかないと行けないのか、でも下手したら死んじゃうし、んー」
いや私もそう何度もくらうの嫌なんだけど、治るとはいえめちゃくちゃ痛いんだよ、下手したら死ぬし当たらなければいいけど、ゼルトレベルになるとそういう訳にも行かないからね。
「うん、無理、審判の人降参します」
「え、なんで」
なんで降参しちゃうの、ゼルトまだ動けるでしょ、ほら、会場からめっちゃブーイング来てるよ、観客からしたら、めちゃくちゃいい試合なのに降参で終わるなんて冷めるだろうが、みたいな感じだと思うよ。
「だって君が死んだら僕の命ないからね、だから降参、参った」
うっ、何とも言えない理由で降参したな、でも私もこれ使わなかったら勝てないし、とりあえずラッキーなのか? なんか納得いかないな。
「えーと、勝者10番メア」
わ、ワーイ勝ったよー(棒)、でも嬉しくないなー、ちゃんと勝ちたかった。
「ごめんね、不満があるのはわかるけど、君のためなんだよ、またいつか戦う時があったら戦おうね、それじゃ」
それだけ言って師匠は外へと出ていった、それを見ていると、師匠の娘さんが師匠に怒ってるのが見えた、そう言えば、師匠のお嫁さんってどんな人なんだろう、気になる……
そう思いながら、強化を全て解き、術式の外に出たのだった。




