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中央広場には、これでもかと言うくらい人が溢れていた、背の小さかった私は、人と人の間を縫うように進み1番前に出た。
「あ、メアちゃん来たんだね」
「マリスくん、お店は大丈夫なの?」
抜け出した所に、丁度よくマリスくんが試合を見ていた。
「お母さんが1人で回してるよ、オートマタは使ってるけどね」
「流石エラッタおばさん、絶対に使うと思った」
マリスくんの所の屋台は、丸いドーナツ焼くもので、子供や女性に人気で行列ができる程なんだけど、オートマタ、自動人形を使ってるからエラッタ1人で何とかなる。
「でも本当にタイミングいいね、今丁度決勝が始まるところだよ」
「ほんと! よかった」
ベストタイミングだったみたいだ、見たかった決勝が今から始まるみたいだ。
「どんな子が残ったの?」
「1人は多分どこかの貴族の子供、如何にも騎士って感じの男の子、もう1人は槍を使う女の子、かなりの使い手だったよ」
騎士ってことは剣かな、それに対して槍か、予想はしてたけど素手はいないみたい、にしても槍か、人によって戦い方が別れる武器だよね、どんな戦い方をするんだろう。
「両者入場です」
審判が入場の合図をして2人の選手が姿を見せる、マリスくんカレー言っていた通り、1人はがっちり鎧で固めた騎士風の男の子、もう1人は露出度の高い服に長めの槍を持っている。
「マリスくんはどっちが勝つと思う?」
「んー、槍を持っている女の子かな、技や動きも軽やか、それなのに強い一撃を持っている、多分教えた人は相当な実力者だよ」
マリスくんがそう言うなら勝つのは女の子の方だろう、戦闘能力分析はピカイチだからね
「互いに礼、それでは初め!」
先に動いたのは騎士風の男の子、素早く地面を蹴り距離を詰める、懐に入れば槍の攻撃など怖くない、そう思った男の子は真っ先に行動に移したのだ。
「懐に入れれば勝てるだなんて、そんなに槍は甘くないよ」
まるで花が咲くかのような、美しい槍さばきで、懐に入ろうとした騎士風の男の子に攻撃する、男の子は右手に槍があたり、手につけていた鎧が砕けた。
「く、なんて威力、だが遅い、見切られる」
男の子が剣を振り、魔法で炎をまとわせた斬撃を放つ、しかしそれは簡単に避けられてしまう。
「これでおしまいよ」
一瞬女の子の体がブレたと思ったら、いつの間にか男の子の後ろに立っていて、男の子が着ていた鎧が木っ端微塵に砕けた、他にも貰っていたのか男の子はその場に倒れた。
「勝負あり、勝者テレナ」
「凄い」
「あぁ、僕もあれほどの人にあったことが無い、後で手合わせしてもらおうかな」
そう呟いていると、女の子が優勝商品を受け取りこちらに来た。
「ねぇねぇそこの君たち、なんで大会に出なかったの? 君たちからなにか感じ取れるんだよ」
「あー、私達は大人の部の方に出るの」
「え! 凄いねこんなに小さいのに、大人の部の方に出るのか、ならボクのお父さんにも会うかもね、あ! ! それじゃあね」
そんなことだけをいい、女の子はどこかに消えてしまった。
「なんだったんだろうね」
「本当になんだろうね」
『これより30分の休憩を挟んだ後、大人の部を開始します』
子供の部が終わって中央広場に集まっていた人がどこかに言ってしまった、残ったのは大人の部に出る選手だけ、選手たちは張り出されたトーナメントを見ている、参加者は20人くらいかな。
「楽しみだよ、でも」
「うん、当たるなら決勝まで行かないとね」
私の名前とは反対側にマリスくんの名前があった、対決するには、決勝まで勝ち進まなければ行けなくなった。
「お互いに頑張ろね、マリスくん」
「あぁよろしく」
握手をして、互いにその場で大人の部の開始を待ったのだった。
「おらー」
「甘い!」
「おおー」
ハンマーを武器にしてる大男が地面を揺らし、弓を使う冒険者が光る矢を空から降らしている、それを見た私は、思わず声を漏らしてしまう。
今は私の番の1つ前の試合の観戦中、流石大人の部と思うほど、レベルが高く派手な戦いが多い、ただ、子供の部とは違って近くで見ると危ない場面も多いのと、出場者がかなり動くのがあって、中央広場丸々試合会場にし、周りに特殊な術式を組んでいる。
観客はお祭り会場の至る所に設置してある、魔道具から出る映像を見る、もちろん術式近くで見る人もいる。
この術式は、かなり前に森で使った結界の逆の感じになっていて、内部の攻撃が外に出ないように組んであるらしい。
「ぐぉっ」
「勝負あり!」
そうこうしてるうちに、決着が着いた。
勝ったのは冒険者の男性、腕を抑えてるので多分一撃貰って勝ったんだろう、それでも一撃しか貰ってないとなると相当な強さだ。
エルフの男性が結界の外に出ると、何事も無かったかのように、怪我してた方の腕を回した。
「え、何あれ」
腕の抑え方から見て確実に折れていたはずなのに、完全に治ってる、どういうこと?
って感じで聞いてみる、仕組みも知ってるし誰がこれ作ったかも知ってる、え? 誰に聞くのだって? それはもちろん、私に抱きついて離さない後ろの変態だよ
「あれはね、術式にここから出ると完全回復する効果を加えてるのよ、でね、この術式を組んだのがメアちゃんのお母さん、サリーよ」
「暑いー、離してー」
「アハハ……」
術式の説明をしながらほっぺをすりすりしてくるアミリー、その変態から必死に逃れようとする私、その横で苦笑いを浮かべるマリスくん、というなんとも言えない感じになっていた。
「んんー、メアちゃんの汗いい匂い、味も美味しそう、ペロ」
「ひぃぃ!」
突然舐められて悪寒が走った、ダメだこいつ、ガチのやばい人になってる!!!!
昔は大人しくていい人だったのに、と、とにかく逃げないと、無理、力が強すぎて逃げられない。
クソ、引退したとはいえあくまでも熟練冒険者、子供の力では無理!!!!
「こっちの味はどうかなー」
「ちょ、ちょっと、そっちはだめー」
ド変態の手が、するりと私のズボンの中に入っていく、このままだと下半身を触られると思い全力で抵抗する。
どんだけ拗らせれば他人の子供にそんなことができるの?!
「アミリー、私の娘に何をしてるのかな?」
アミリーの腕の中で暴れていると、後ろから母の声が聞こえた、アミリーは恐る恐る後ろを向く抱きつかれてる私も、一緒に後ろを見るはめになる、そこには口だけが笑ってる母がいた。
「えっと、これはちょっとしたスキンシップというか、仲良くなるための触れ……」
「ママァ、助けてぇ」
「ちょ、メアちゃん!」
アミリーがセリフを全て言い終わる前に、私が涙を流して訴えた、それを聞いた母は顔から笑顔が消失し、明らかな怒気を放っていた。
「へー、スキンシップねぇ」
「アハ、アハハ……」
私を拘束していた腕が解け、抜け出す、周りを見るとさっきまで近くにいたはずの観客やマリスくんがいなくなっており、私達だけになっていた。
「アミリー、少しお話あるから裏行かない? もちろん来てくれるよね」
「HAHAHA、イヤダナー、イカナイワケナイジャナイデスカ、イキマスヨ」
アミリーは母に連れられ路地裏へと消えていった。直ぐに絶叫のような声が響いたが聞こえなかった事にしよう。
「次の試合に出場する、メアさん、至急試合会場入口に来てください」
「あ、はーい!」
審判に呼ばれてしまった、そういえば次私だったね、忘れてた。
「あ、だからママ来てたのか」
お店の方まだ完売してないはずなのに、どうして来てるんだろうとか思ってたけど、私の試合見に来たのか、嬉しいな
「お待たせ致しました」
「危なかったですね、ギリギリです、相手待ってますので早く入ってください」
「分かりました!」
申し訳ないと思い、急いで術式内に入った。
「なんだぁ、小さい女の子が入ってきたぞ、案内係間違えてんじゃねぇのか」
「いや、でも審判が何も言わないから合ってんじゃねぇの?」
はっはぁ、何気聞こえてるぞ、そこの観客のおじさん達、合ってるわよ、私が参加者、それにしてもこの身体だからかな無駄に広く感じる、こんなに動き回らないよ多分。
「んだ? 小せぇガキじゃねぇか、俺様の相手じゃねぇな、おい審判、俺様の不戦勝でいいだろう、ガキのお遊びに付き合う俺様じゃねぇぞ」
あん?なんか言われた気がしたけど、すっごい自分に自信持ってる人だろう。
見てみるとさっき戦ってたハンマー使いよりでかい大男が審判の目の前に立っていた。
あー、いるいる、相手を見た目で判断するの、ああいう大男タイプに多いんだよね、それでもって本人めちゃくちゃ弱いって言うね
「すいません、大会ルールなんでそんなこと出来ないのです、ご理解頂けると嬉しいです」
「ち、使えねぇ、まぁいいだろう、俺様の実力をこんなガキ相手に見せられるからな、たっぷり痛がらせてやるよ」
ほう?言ってくれるね、ガキだからって舐めてると痛い目見るよ、なんせ中身は大人なんだからね、こんなの余裕よ。
「それでは時間になりましたので開始致します。9番対10番の選手はそれぞれ位置についてください」
あ、もう時間か、って私が待たせたのだから、逆に来てすぐでも良かったと思うよ、申し訳ない。
審判の指示に従って指定の場所につく、うぅ~、ワクワクするね、こういうのは初めてだからね、存分に楽しむぞー。
「おいガキ」
む、何なの、試合前はちょっかい出しちゃダメって教わらなかったの。
「なに?おじさん」
「棄権するなら今のうちだぜ、後悔するぞ」
あら、心配してくれてるのかな、案外優しい人だったりして。
「帰ってママのおっぱいでも吸ってな、ガハハハハ」
前言撤回、ゴミだわこいつ、もう吸うような歳じゃないよ!
「ごめんなさい、私、おじさんに勝つつもりでいるから」
「あ? 勝つだ? この俺様に? ガハハなんの冗談だ、笑わせんじゃねぇ、飛んだ無能なガキだな、さぞかし親も無能なんだろう」
は?
「どーせこんなガキを、大人の部に出すようなゴミクズだからな、もしかしてあれか? お前の母ちゃんは猿かなにかか? それなら納得だわなガハハハハ」
……。
「ねぇおじさん」
「あ?」
「謝るなら今のうちだよ」
「おうおう、ママンを馬鹿にされて怒っちゃったの? 悔しいなら今すぐママンの元に戻っておっぱいでも吸ってるんだな、あー猿だから吸うもんもないか、こんな糞ガキ出す親だからな、ガハハハハ」
よし、わかった、死にたいようだね、いくら私でもキレるよ。
「わかった、おじさん、これから何が起こっても後悔しないでね」
「あ?」
「審判のお兄さん、早く始めてください、一方的なおしゃべりに飽きました。」
「プフ、はい、両者準備はいいですか、それでは、始め!」
審判が合図をしたと同時に、大男が腕を振りかぶって、殴りかかろうとする。
遅い、ほんとに口だけみたいだ、これなら遠慮なく行ける。
「な、消えやがった、どこいった!」
一瞬で視界から消えた私を探しているみたいだ、だけどもう遅い、懐に入った私は腕に光をまとわせる。
そしてこぶしを二回、男の脇腹に叩きつけると、小さな爆発が起きた。
「グハッ」
大男が勢いよく吹き飛び、場外へと放り出された。
傷は術式外に出て癒えてると思うが、初撃で内部破壊、2撃目で一瞬だけ死んだ方がマシな痛みを味わったことだろう。
使用した魔法属性が三つ、火属性と光属性で爆発を起こし、治癒属性を身体に無理矢理流すことでこの世のものとは思えない痛みが走る。
勿論死なないように手加減はしてる。
「勝負あり!」
ふぅ終わった、外から凄い歓声が聞こえる、何だかすっごくスッキリしたよ。
「やべぇ舐めてたわ、あの子めちゃくちゃ強いね」
「初動なんだ、消えたと思ったらいつの間にか一撃与えてたぞ」
うん、なんとも言えない、照れるなー、あんまり褒め慣れてたいからかなうーん、でもこれでよく分かった。
私の周り化け物すぎる! あの人も弱いわけじゃないみたいだけど、それでも動きが遅く見えるのは、多分周りが異常に強いのがある。
そんな私も例外ではなく、転生してからこれまで魔力操作を重点的にトレーニングしてたけど、針の穴に糸を通すのを目隠ししながらできるくらいは、今までにないくらい自由に動かせる。
怖いのが精密すぎる魔力操作のおかげで適正属性が全属性と化してしまった上に複合すら簡単に出来てしまう。前世で適正増やすのに3年ほど苦労したの何だったのだろうか……。
まぁとりあえず、1回戦突破です!




