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Alter World Online ~26歳出会いたい系女子はVRMMOで女子力を磨きます~  作者: 半開き
3人目 考察班所属後輩系インテリ眼鏡君
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39. 芸能人がハワイに行く理由

 水曜日。

 今日も今日とてAWOにログイン。

 ただ、復帰するのはイプシリムのアヤナの孤児院だ。


 私は二つの理由により、王都にいることが気まずくなっていた。

 一つはクレスの喫茶店があっという間に大人気店になってしまったのだ。特に女性プレイヤーが多く来店し、行列をなしている時もある。そんな状況で、店主と知り合いだからといって、長々と居座るのも気が引ける。私の憩いの場所はあっけなく、なくなってしまった。


 そしてもう一つ。それは私自身が有名になりすぎたようだった。そりゃエルフでツナギで隻腕だ。一目見たらおそらく忘れないだろう。どうやら掲示板とかでも有名らしく、王都を歩いてるだけで話しかけられることが増えた。変な輩に絡まれることもあったので、私としては好ましい状況ではない。


 なので、私を知る人がいないイプシリムに拠点を移したのだ。

 まぁ、こちらの探索もまだ全然できてないし、アヤナの孤児院、『ドールハウス』とアヤナが名付けた、も改修したいところだ。

 という訳でイプシリムでやることはまだ沢山あるのだ。


 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△


操者(マスター)、あちらの大きな施設はなんでしょうか」

 それは私も気になっていた。

 ドールハウスから、駅を挟んで反対側のさらに先。そこに大きな構造物があるのだ。遠くて詳細は分からないが、ぱっと見は白い四角い立方体。ただ大きさはうちの会社の工場ラインより大きい気がする。


「じゃあ今日はそっち行ってみようか」

 私はアヤナを連れ立って、そちらへ歩き出す。詳しい道は分からないけど、あれだけ大きい施設だし、大通り歩いていけば着くよね。


 途中で見つけた家具屋さんで、アヤナが買い物をしたいというので寄り道をする。

 リビングに置くようのソファーと、ダイニング用の円卓と椅子。ダイニング用の円卓はちょうどいいサイズのものがなかったので、特注になったが今の私たちにお金の心配はない。


 さらにその後、調理器具を取り扱っている雑貨店があったのでアヤナに一式揃えてあげる。

 クレスのお店で料理を勉強させてもらってたけど、結局中途半端になってしまって申し訳ないが、今度からは家で練習してもらおう。

 あとついでに自分用に気に入ったコーヒーカップを買っておく。


 などと色々寄り道をしていると、あっという間に時が過ぎていく。

「しまったなぁ、明日も仕事なのになぁ」

 女の買い物は長い。それは女子力の低い私でも例外ではなく、21時にはログインしたのにもう日付が変わっていた。

 本当はもう寝たいが、目的の施設は目の前だ。せっかくだからちょこっと見てから今日は寝よう。



 そしてしばらく歩くと、目的地についた。

 着いたが、

「うーん、工場?」

 そこは近くで見ても、立方体の四角い施設だった。外壁は白くて窓はほとんどない。周囲は高い壁で囲われてる。印象的にはうちの会社の工場そのままだ。


 ただ、人の気配がない。

 現実世界では深夜だが、こっちではまだお昼過ぎだ。出入りする人や作業する人がいてもおかしくない時間帯なのだが。

「今は使われていないのでしょうか」

「どうなんだろうね?近くの人に聞いてみようか」



「あぁ、あそこはもう使ってないよ」

 近くで食料品を売っていた女性に聞いてみると、そういう答えだった。

 なんでも100年単位で使っていない施設らしい。昔はあの建物の中で、いろいろな研究や開発がされ、イプシリムの維持に大きく貢献したところだったという。

 なのに今は使っていないんだ?

「あんた上から来たのかい?」

「あ、はい。そうです」

「そうかい。じゃあ知らなくても仕方ないか。まぁ今は使われてないし、今後も使われることはないだろうよ」

 女性は、話はそれで終わりと手を振った。

 ありがとうございます、とお礼を言って立ち去る。


「なんか拍子抜けだったね」

「無駄足でしたか」

 まぁ何もないってことが分かったし、今日のところはこれでログアウトにしよう。


「おい、アンタ」

 と思って帰り道に向かおうと思っていると、背後から声を掛けられた。

 振り返って見ると、そこには一人の男性。


「え?」

 男性が来ているのはツナギだ。

 しかもかなり油で汚れている。服だけじゃない。顔や手袋も油で汚れているし、かなり使い込まれているのがわかる。

 顔は浅黒く、眼力が強い。30代くらいの顔立ちかな。髪の毛は黒髪に青を混ぜたような藍色。短く切りそろえられているのは作業の邪魔にならないようにか。


 急に声を掛けられて、思わずじろじろ見てしまった。

「アンタの連れてるそれ、もしかして自動人形(オートマタ)か?」

 男性が手に持っていたスパナで、アヤナを指す。

 私たちは顔を見合わせる。今までこちらから自動人形(オートマタ)と言わなければ、その名称を呼ばれたことはなかった。

 もしかして自動人形(オートマタ)について何か知ってるの?


「そう、ですけど…えっと、何か?」

 そういうとずんずんとアヤナに向かって歩いてくる。アヤナが身構える。住人だから襲っちゃダメだよ!

「オマエ、本当に?」

 不躾にアヤナを観察する。流石にアヤナも気分を害したようで。

「アヤナはアヤナと申します。アヤナは自動人形(オートマタ)ですが、何か問題でも?」

 流石に剣呑な雰囲気を察したのか、男性は少し距離を取った。


「いや、悪かった。あんまり珍しいものでさ」

 男性から緊張感が解かれる。素直に謝ってもらえたので私的には別に構わない。アヤナも警戒を解いたので同じだろう。


「俺はそこで機械工房をやってる、スプロケットってもんだ。もしよかったらうちで話を聞かせてもらえないか?」

「機械工房?」

 私はその単語に興味を引かれる。機械工房ってことは、機工のプロってことじゃん?

 この人のことはちょっと分からないけど、機械工房については詳しく知りたい。

「アヤナ、どうする?」

 私はついて行ってもいいかなと思ってるけど、この人の目的はアヤナだし、アヤナの意見も聞いておく。

「アヤナは操者(マスター)に従います」

 まぁ嫌なら途中で帰ればいいか。

「じゃあいいですよ。あ、私はプラムって言います。よろしくお願いします」

「あぁ、よろしく。工房はこっちだ」

 そういってスプロケットさんが案内してくれた。



 工房はこの巨大な施設の裏手にあった。

 サイズは一軒家と変わらないが、一階は作業場になってるようでそれなりに広さがある。

 中は町の工務店って感じで、雑然と色々なものが置いてあるが、レンチやスパナ、ワイヤーやギヤみたいのも見えた。今まで見たことがない近代っぽさだ。

「じゃあ、こっちに座ってくれ」

 工房の隅に置いてあったくたびれたソファーに私たちを案内するが、ちょっと汚いのが気になったので、

「アヤナ、さっき買ったの出して」

 そういって、先ほど家具店で買ったソファーを出して、そちらに座る。

 スプロケットさんは、呆れたような顔をしながら、まぁいいと呟いて作業用の椅子に座った。

 そしてアヤナに向かって質問を投げかける。

「さっそくで悪いが、アンタ…アヤナは本当に自動人形(オートマタ)か?」

「アヤナは自動人形(オートマタ)で間違いありません」

「どこで手に入れた?」

 今度は私へ。

「地上のダンジョンをクリアして…ってことじゃないか。ええっと、私も詳しくは分からないんですけど、イプシリムにいた人物が地上に工房を構えてまして、そこで手に入れたんです」

「なんだと!?じゃあ、その工房主は自動人形を量産できるのか!?」

 がたんと、椅子を倒して立ち上がる。

「あ、いえ…その…工房主は私が見た時には、モンスター化してたといいますか、もう人ではなくてですね」

「あぁ、そういうことか。大体察したよ。じゃあアヤナだけが?」

「そうですね。私が見つけた時も未完成状態だったのを、なんとか完成させたって感じだったので」

 スプロケットさんは椅子を直して座りなおす。

 一つ深くため息をした。

「いや、すまない。アンタたちが悪いわけじゃないんだ。ここじゃ失われた技術だから、ついな」

「失われた技術?」

 私が首を傾げていると、

「そうか、地上から来たって言ってたが、最近来たばっかりか?」

「そうですね。なのでこちらのことはほとんど知らなくて」

「だからか。あの工房のことも知らないようだし、おかしいと思ったんだ」

 そういって、この工房から見えるあの巨大な建物に視線を送る。どうやらあそこも工房だったようだ。


「説明してやるよ。イプシリムの衰退について」

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