12.神々は俯瞰する
本日2話目です。
「主任、お疲れ様です」
モニター担当の松本が、そう言ってコーヒーを注いでくれた。
大量のモニターが並ぶオフィス。そのほとんどがゲームのモニタリングをしている。ちかちかと明滅するモニター画面が騒がしいが、モニターの数に対して圧倒的に足りないスタッフが、オフィスをがらんとした印象にしている。
「ありがとう。それで?」
「さっき確認してきました。確かにエクストラがクリアされてますね」
「ほう」
平静を装ったが、多分口はにやけていたと思う。
ゲームが正式サービスを開始して半年以上。初めて攻略されたのだから。
正直なところ、それまで3つしか見つけられてなかったことに関しては不満すら持っていた。しかも全てが攻略できておらず、内2つに関しては情報を秘匿している始末だ。
確かに発見するだけでも、厳しい条件があったり、運の要素が強かったこともあるが、製作者としてはプレイヤーにはもう少し頑張って欲しいところだった。
それがここに来てクリアだ。
「どのダンジョンだ?」
「傀儡使いです」
「傀儡使いか。設定した中では、一番難易度が低いな。装備とメンツが揃ってればクリアもできるだろ」
エクストラダンジョンの作成については、ダンジョンの構造からモンスター、ストーリーまで人間が作っているが、いつどこに出現するからAIが設定している。
AIには、エクストラダンジョンの配置に関して出現率を極低にするように指示してあるが、個人的にはもう少しあってもいいとは思っている。
「それがですね」
「なんだ」
「ソロクリアなんですよ」
「なんだと」
「しかも今日始めたばっかりの初心者です」
「チートか?」
ありえないと思いながらも聞いてしまう。
「もちろん違います。正確にいえば途中までは二人でしたが、最後まで生き残っていたのはその初心者だけです」
「なるほどな。そういうことか」
それでも二人でクリアとは快挙といえる。
「もう1人は誰だ?」
「エルフのハルキです」
「あぁ、あの。ならありえるな」
エルフのハルキは僕ら運営としても注目しているプレイヤーだの1人だ。以前エクストラダンジョンに挑戦したが、失敗したパーティーメンバーの1人でもある。
「しかし、この仕様は変更したほうがよくないですか?」
「確かにな」
「死んだら報酬なしじゃ、タンクやる奴いなくなりますよ」
今回のエクストラ報酬も、結局初心者が独占だ。
確かにこれは要調整かもしれない。
「ま、他のエクストラはまだ見つけられそうにないですし、しばらくはなにもなさそうですね」
「そうだな」
エクストラ報酬の件はそこまで大きな変更じゃない。明日には修正されるだろう。今日クリアされた傀儡使いの工房については、そのままにするしかないが。
「いや」
僕はふと、その存在を思い出す。
「今、ワールドクエストは鉄道だったな」
「えぇ、そうですね。この調子なら今週か来週にはクリアすると思いますよ。日本の鉄オタの執念はすごいですね」
「あぁ、そうだな。それで、鉄道の次はあれだな?」
「あれ?あっ…あれですよ!あれ!うわーっ、ちょっとまずいっすね」
「最悪かもしれんな」
今後起こるであろう問題に頭が痛くなる。
「ちょっと忙しくなるかも知れませんね。また残業増えますよ。奥さん、大丈夫っすか?」
「うちのチームは優秀だからな。僕の仕事は最小限で済む」
「わかりましたよ。ご期待に応えられるようにがんばります」
そう言って松本は仕事へと戻っていった。
コーヒーに口をつける。
冷めてしまったな。自分で入れ直すか。
その前に、遅くなると妻に連絡しておこう。
明日より2章になります。
引き続きよろしくお願いします。




