永遠の約束
「お帰り、リュカ」
「ただいま! バード!」
やっとバードに会えた。会いたかった。
私はバードの胸に飛び込んで、自分が帰って来たことを実感する。
「天界の用事は済んだ?」
「うん。でも、いつでも遊びにいらっしゃいってママが」
「ママ? リュカを産んだ女神?」
「うん。顔がアレと同じでビックリした」
「うわぁ」
バードもドン引きの悪趣味さらしい。
「同じ顔同士で子供を作って産んだのに、私は髪と瞳の色を受け継いだ以外は外見は似ていないんだよね。どうしてだろう?」
「リュカがアレの作品じゃなくて、完全に別物のオリジナルだからじゃない?」
なんだか分かるような分からないような。
「ところで、ハネオたちは天界で仕事?」
「あ! 忘れて来た!」
天界での用事を済ませたら、とっとと帰って来たくて一人で来てしまった。
私はハネオとコイヌの生命石を握り、来いと念じる。
紫の光と水色の光が庭に集まると、ハネオとコイヌが現れた。
ハネオは寝具を一式抱えている。
「ハネオ。それは?」
「ちょうど羽根が生え変わる時期だったから、掛け布団と枕を作ってみた。布の部分は天界の衣を使ったから手触り最高だぞ!」
おお! これはすごい。スベスベでサラサラで軽くてフワフワだ。
「俺の羽根が生え変わる時期には、ベッドマットをプレゼントしますね!」
私はこの先、極上の睡眠を約束されているようだ。
「ハネオ、待っていたよ。僕の姿で王太子の仕事をして来て?」
「へーへー。仕方ねーなぁ」
ハネオがバードの姿に変わる。
え? 天使って変身能力あったっけ?
「ハネオは僕の眷属だから。天使っぽくないことも出来るんだよ」
そう言えば、そんなことも聞いた気がするような。
「俺、中でお茶淹れてますね! あとコレ、部屋に運んでベッドメイキングしておきます」
コイヌがハネオ製羽毛寝具を抱えて、聖女の館の中へ入って行った。
働き者だ。
「リュカ。十年後、僕の後継の第三王子が成人したら、この国を出ない?」
「うん。私たちは齢を取らないから、それ以上は限界だろうな」
バードと二人、庭を歩きながら話す。
「それもあるけど、十年くらい休んだら、多分世界のメンテナンスが必要だよ?」
「だね。私も考えてた。しばらくは創造の方は要らないと思うけど、役目を終えたモノを消滅させて後始末しなくちゃ」
「ん。消滅は任せて」
世界も一つの大きな生命体だ。
役目を終えた古いモノを排除して、新しいモノを生み出す準備が必要だ。
準備が整ったら新しいモノを創り出し、世界は代謝しながら成長して行く。
「私の伴侶は、バードじゃないとダメだな」
「僕の伴侶もリュカじゃなきゃダメだよ?
これからもよろしくね? 二人とも死ぬまで」
「うん。よろしく。死ぬまで」
それは私たちの永遠の約束。
世界の維持も破滅も手の中に。私たちは生き続ける。
たまには世界を最初に創り出した、寂しがり屋の男がいたことを思い出して。
リュカとバードの物語は、これでお終いです。
二人とも不老不死なので、何処かで元気にしていることでしょう。ハネオとコイヌも一緒に。




