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パソコンヒモ男  作者: ふじふじ
対決編
43/47

変人

「変な奴」



「そう、あれは忘れもしない入社したばかりの日でした」

「はぁ」


サブローが前説まえせつで「事件当日のこと」をと言っておいたのに、全然聞いていないこの男の話は長くなるだろうと思った。


「そう、英子さん、あなたとの出会いは最悪でした」

「あたしは、あなたに出会った以降も最悪だったわ」


「入社日に職場に挨拶に行くと、英子さんはコーヒーを飲んでいました」

「だからなんだってのよ」


「英子さん」

「なによサブローさん」

「いちいち反抗していたらこのひとの思う壺です」

「そう、そうだったわね」


そう、加藤は典型的なかまってちゃんであり、相槌を打ったり反抗されたりするのが大好きなのだ。確かにいちいち相の手を入れるように話をしたら、有る事無い事喋りかねない。


「こ、コーヒーね、そう、飲んでいたかもしれないわね」

「そう、私はそのコーヒーを持った英子さんに当たってしまい」


加藤「あぢぢぢぢぢぢぢぢ」

英子「あっ、ごめんなさい、火傷してない?」

加藤「してますよ、だから私にコップ傾けないでください、あぢぢぢ」

英子「あーあーあー」


とさらにコップを傾け、コーヒーを加藤に。


「英子さん」

「なにサブローさん」

「酷いですね」

「なに思う壺にハマってるのよ、そんなことあるわけないじゃない」

「・・・・・・」


「そんな最悪の二人でしたが、いつの間にかチームを組むことになったのでしたね」

「ええ、そうですね、さ、本題を」

「そう、プロジェクトの最初の日、私はある種の感動を覚えていました。先輩とプロジェクトができる。できるぞ」


加藤「ようやくプロジェクトですね」

英子「そうね、夢じゃないかしら」

加藤「ひててててて、つねんないでください、ひててててて」

英子「夢じゃないわ、最悪だわ」


「英子さん」

「なにサブローさん」

「これも嘘ですかね」

「ああ、これは本当よ」

「・・・・・」


「プロジェクトは当時のSAE社での主力商品、会計パッケージの導入企業を新たに10社以上増やし、製品力を高めるというものでした。そのプロジェクトに私、加藤が抜擢されたのです」

「すごいですね、その若さで」

「若い?いえ、私、もう35歳ですが」

「は?」

「私、新人だったのですが、もうその時すでに30を超えていました。卒業がままならない状況が長く続いたので」

「はぁ」

「とにかく、わたしは起死回生を狙うべくプロジェクトには並々ならぬ力を入れる所存でした」

「はいはい、もう芝居はいいから、当日のことを話してくれるかしら」

「芝居とはなんですか」

「だってあんた、すぐ一流会社風吹かせて、適当に終わらせましょうって言ってたじゃない」

「そうでしたか、当時のわたしはそんなことを・・・・」


「英子さん」

「なに?サブローさん」

「本当にこんな人とお仕事を?」

「ええ、最悪でしょう」

「言っていることが支離滅裂すぎて、ノートが走りません、うーむ、ここはひとつ」


サブローはペンを止めると加藤に向かって話し始めた。


「加藤さん」

「なんでしょう、中野さん」

「あなた、犯人ですか?」

「えっ?」

「だから犯人なんでしょう?」

「な、なにをいうんです!!、依頼主はわたしなんですよ」

「それはカモフラージュに違いありません。犯人はあなたなんですよ、さっきから関係ない話ばかりして」

「ちがいます!ちがいます!私は!私は!誰かの指示であの日、会社に行っただけなのです」

「ほう、ホントですかね」

「これ、これです」


加藤は携帯の画面ショットを見せてきた。なんだろう、覗き込むと送り主が不明のメールである。榊原の送ったメッセージだと、たかをくくっていた英子とサブローは見たことのないメールに驚いた。内容は脅しである。


「このメールを見たら、30分以内に会社に行かないと、不幸が起こる」


「・・・・・・」


「だ、誰かからメッセンジャーでこなかったかしら」

「ああ、榊原さんのね、あんなのすぐウソだってわかりました、ウッソピョーンって最後についていたし」

「なっ」

「でも私も疑いましたよ?最初は。同じように私が会社に行く内容でしたから」

「そうね、メッセージした後メールしたのかもしれないしね」

「でも、それはよく考えたらありえないのです」

「なんでよ」

「それは」



「榊原が、加藤の父だからだ!」

「ええっ〜!!」


「一人で変なこと言わないで、サブローさん」

「ここはそういうシーンかと思ったんですが・・・」


「このメッセンジャー、その後なんども謝りのが来るんですけどね、位置情報がついていましててね、自宅付近だし、その後の取り調べでアドレス解析すると両者は同じ場所で出されたものではないとわかったのです」

「なるほど、たまたま同じタイミングぐらいに、別人があなたにイタズラを」

「ええ、その通り。考えにくいのですが、実際のデータを見るとそうなっているのです」


英子とサブローは、横浜を後にした。加藤の顛末はその後会社に行ったのだが、なにも起こらず悶々としていたところに警察が踏み込んで来て逮捕されたというものであった。イタズラ。いったい誰があの不幸のメールを・・・。


「英子さん、私、娘のお守りお当番なので、先に帰りますね」

「さよりとサラちゃんによろしく」

「ええ、娘も英子さんに会いたがってますよ」

「そんなことあるわけないじゃない、さよりが遠ざけてるんだから」

「さよりん、最近英子さんのことばかり話してますからね」

「ええ?そうなの。最近会ってないけど」

「まぁ、今度一緒に食事でも」

「そうね、そうしましょう」


そう、さよりはここ最近英子のことばかり考えていた。それには理由があったのだった。

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