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パソコンヒモ男  作者: ふじふじ
パソコン編
4/47

対応

5「子宮」


「ほう、それじゃあ、自分では更新の手続きをした記憶がないと」

「そうなのよ、いつも通り更新を促すウインドウが開いたので×印を押してメッセージを消しただけなの」


目の前には最新のOSになってしまった英子の端末が、USBのバックアップデータと共に置かれている。


三郎は、あろうことが英子からPCをうけとると、ネットワークに繋ぎ、OS更新の「次へ」を押してしまった。


見たこともない更新画面が30分ほど続くと、新しいOSが起動した。


「不具合が出るから、絶対やらないでってお店の人が言っていたのに」


英子がそう言うと三郎は


「ええ、そう言われると、普通やりませんからね」


さよりは嬉しそうに三郎を見ながら言った。


「普通じゃないのよね!」


三郎もニヤリとした。


「英子さん、マイクロ社のアカウント持ってますか?」

「ええ、入れればいいの?」

「はい、お願いします」


英子がユーザーIDを入れると、画面に真っ青のデスクトップ画面が現れた。


「これがウインドウX…」

「なんか青いのね」

「青は、目にいいんですかね?、とにかくバックアップをとりましょう」


三郎はUSBメモリーを刺すと、文書フォルダーを開けて、英子に確認しながらバックアップを取った。全部で2GBもない。これだったら無料のオンラインストレージでも充分である。月七百円ではなくゼロ円である。


結局対応は1時間もかからなかった。料金ももちろんかからない。


「しかし、そんな簡単にOSが更新されてしまうんじゃ、英子の会社の人も困るんじゃない?」

「そう、そうだわ!私だけこんなことになるわけじゃないもの」

「英子さん、会社の方に連絡取れますか?」


英子はスマホを取り出し、会社の情報部門の担当者に電話した。


「あ、伊澤さん?、みんなと同じ問い合わせかな?、ウインドウXに更新されてしまうっていう。今、それで大騒ぎなんだ。それなら週明けにどうにかするから、PC持って、朝9時に集合して」


一方的にそう言われると電話を切られた。


「みんな同じようなことになってるわ、わたし、こうなっていることも知らずに10万円払うところだったのね」


「自分が悪いと思いますからね。でも機械の操作というのは必ずミスがあるので、誰が悪いとか考えだすとキリがありません」


「…なんで」

「はい?」

「なんであなたはそんなに冷静なの?、サブローさん」

「そうですね…、英子さんの前で慌てると、カッコ悪いと思いましてw」


そう言われると、英子は自分の下腹あたりが疼くような気がした。


それから英子は、さより、三郎とランチに行った。5万円のこともあるので、お礼にと英子が2人に奢った。相変わらずさよりは三郎にベタベタしており、それはさながら囲い込みに成功したPCショップのように、もう逃さないとの意思を示しているようだった。そのあまりの生々しさに、結ばれる2人とは、こんな感じなのだろうか。と英子は思った。


「あーあ、こんなことならPCショップの店員と仲良くなっても良かったかも」


物事は一つの側面からでは、わからないものだな。と英子は思った。


「ま、それにしても、5万円は高いか」


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