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パソコンヒモ男  作者: ふじふじ
対決編
39/47

準備

「聞き込み」



「ねーぇ、サブローくーん、構ってよぉ〜構ってよぉ〜」

「さよりん、僕は今大事な仕事中なんだよ」


サブローは娘を抱えながら机上に紙を置き、なにやら書き始めている。


「なによそれ、何か書いてるの?」

「だーめ、だーめ、まだ書いてる途中なんだから」

「なによう、見せなさいよ」


さよりはサブローから紙を取り上げると、読み上げた。


’銀行は何銀行ですか?’

’使ってるパソコンは?’

’昨日の茨城の天気、ご存知ですか?’


「…なにこれ?質問?」


「ああっ、さよりんダメだよ、まだ下書きなんだから」

「なんの下書きなの?」

「聞き込みのだよ、聞いてよ、3年前の爆破事件を調べるために、なんと僕と英子さんで’聞き込み’を始めるんだよ」

「へーえ」


さよりはニヤリとした。


「それで、英子さんから聞き込みでどんなことを相手に聞いておけばいいか、考えておいてと言われたんだよね」

「で、この内容ってわけ?」

「そ、そうなんだけど、やっぱりまずいかな」

「サブローくん」

「はい、さよりさん」


「話にならないわね」


「やっぱそうですか」


そう、これでは中途半端である。さよりはもっと英子ががっかりするような内容を書くべきだと思った。なんだか頑張っている気配がするようなピュアさ。それが我慢ならない。最近また英子がサブローと独自の世界観を築きあげているような気がして、さよりはそれが許せないのであった。


「そうだわ」

「はい、さよりさん」

「絵美も呼んで一緒に考えましょう」

「え?絵美さんも?」

「ええ、こういう時はクリエイターが集まった方がいいわ。みんなで考えましょう、で、いつまでに考えればいいの?」

「明日、計画提出して受託するみたいだから、今日中には案を作らないと」

「わかったわ、今LIMEで連絡を取っている」


さよ「ね、あたしんちで面白いことやらない?」

えみえみ「なによ、忙しいのよ」

さよ「英子に関することなの」

えみえみ「なんと、それは最優先ねw」

さよ「1時間後、うちでどう?」

えみえみ「わかった、今すぐそちらに向かうわ」


絵美は1時間後きっかりに現れた


「なるほど、’聞き込み’ね。それは大事だわ」

「でしょう、私の夫の評価もかかっているかもしれないわ」

「そうね、英子さんの立ち上がるきっかけ、これを我々で応援しないわけにはいかないわね」

「さ、どこから始めましょうかしら」

「まず、最初のジャンルは’食べ物ね’」

「ヤッホー!、そうこなくっちゃ」


「お好み焼きに青海苔は?、からスタートよ!」

「回転寿司でガリはどのタイミングで食む?」

「いいわねぇ、シュウマイにからしはたくさん?」

「あたしは、辛いのダメ〜w、ハンバーガーのバンズを剥がしてケチャップを舐める癖は?」

「あっはっは、そんな人居ないわよぉ」

「いたのよぉ、前の会社の同僚にねぇ…」


「さ、さよりさん?」

「なに、サブローくん」

「ほんとにこんな調子で質問事項が?」

「なによ、疑うわけ?、私たちは聞き込みのプロなのよ」

「えっ、そうなの?絵美さんも?」

「そうよ、そう。サブローさん、安心して。明日には素晴らしいリストを作ってあげるわ」


「わ、わかった」


「さて、次はサンドイッチよ。BLTでレタス取る?」

「あっはっは、レタス取るぐらいならBLT頼まないでしょう」

「だってレタス、青臭いんだものwww」

「ローストビーフはワサビ派?それともニンニク?」

「ニンニクで食べるとラーメンのチャーシューみたいになっちゃうわよね〜」


〜中略〜


「文学歴史100よ」


「ええ〜今から100個もぉ?」

「甘くないわよ、聞き込みは。太宰治はダサイおっさんっていう意味って知ってた?」

「なによそれ親父ギャグ、あっはっはっは、うけるぅ」

「織田信長は、面長?」

「ひーっ、なにそれ、あっはっは」

「もう何言っても馬鹿ウケね」


〜中略〜


「芸能音楽ね、もう疲れてきたわね」

「さすがに項目が2000も超えてくると、こんなに聞けるのか不安になってくるわね」

「そうね、どんだけ早口でやるのよって感じだわね」

「サブローくん、録音しておいて、当日は早回しでやる方がいいかもしれないわよ」


サブローはもはやオロオロして、さよりと絵美のやり取りを傍観するだけであった。それほどまでにクリエイターのアイディア出しというのは強烈だったのだ。これだ。この強烈な雰囲気に押し切られて、この二人とは一緒に暮らす羽目になってしまったのだ。かつては絵美、そして今はさより。そしてこの二人相手ではろくにパソコンができないのだ。


「はぁ…英子さんが恋しい…」


「なんですって!サブローさん!私たちを前にして!」

「この男!、これだけやってるのにまだあの女のことを!」


「い、いや、なんでもないです、続けてください」


二人のアイディア出しは深夜まで及び、項目は5000あまりになった。


「さて、ここの中から使えるものをっと」

「そうね、ざっと見た感じどれもこれも使えないわねwww」

「あたしたち、なにやってたのよ一体www」

「とりあえず、適当にウケそうなヤツを選んで明日出しましょう」

「そうね、あの女にはそれぐらいがちょうどいいわ」


翌朝


「さすがサブローさん、普通だけど、まぁいいわ、こんな感じで聞き込みをすることにしましょう」

「はい、ありがとうございます」

「それにしてもあの二人のものはひどいわね」

「はぁ、どの辺りがでしょうか?」

「’カトちゃんの首チョンパ?’ってなんなのよ、なにが聞きたいのよ」

「はぁ、僕も途中で指摘したのですが、止めることができず」

「全く役に立たないわね、今回の件からはあの二人は外した方がいいかしら」

「英子さん、それはまずいです」

「そうね、あなたの立場もあるからね。まぁいいわ。来週から聞き込みを始めましょう」

「はいっ!」

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